第127話 意外とおしゃべり
「お前ら、自分のダンジョンコア内で生活する気はないのか?」
俺を警戒する事なく普通に共同空間に居座ってるカグラとリオンにそう尋ねると、カグラから思いもよらぬ返答が来た。
「この空間並とまで言わなくても居住空間を充実させようと思うと、最低20万ポイントくらいかかるんじゃないかしら?
さすがにそれだけのポイントは使えないわよ」
「マジか」
[ガチャ]で手に入れた使わないアイテムを適当に並べただけなのだが、まさかそこまでポイントのかかるものだと思わなかった。
どうせポイントは[ガチャ]に使うし、交換に使うと[称号]のせいで通常の30倍の値段になってしまうから、リストとか見る意味ないと思って確認した事なかったんだよな。
「………」
それにしてもリオンはさっきからさっぱり喋らないな。
だが、その割には昨日会ったばかりのはずのカグラとリオンの仲が、妙にいいのは何故なんだろうか?
「20万もあったらダンジョン内を相当強化できるし、またダンジョンバトルみたいなイベントがあるかもしれないから、どうしても欲しいものだけになるわよね」
「………(コクコク)」
「リオンちゃんだと強いスライムと交換するのかしら? スライムが好きすぎて〈スライムを愛す者〉なんて変わった[称号]を持ってるくらいだし」
「………(コクコク)」
[称号]とか自分のダンジョンの情報を話すくらい仲良くなってるんだよなぁ……。
ただ、リオンがカグラの言うことに対して頷いているだけで、これではまともにコミュニケーションが取れないだろうに、どうやって仲良くなったんだ?
「なあ、カグラ」
「どうしたの?」
「なんでリオンとそんなに仲がいいんだ? 昨日会ったばかりだろうに」
俺がそう尋ねると、カグラはきょとんとした表情でこちらを見る。
「昨日あなたが自分のダンジョンコアに戻った後、おしゃべりして仲良くなっただけよ」
「いや、リオン喋らないだろ。カルヴァが間に入って仲を取り持ったのか?」
「ああ、そういうこと。違うわよ。これよこれ」
そう言ってカグラがこちらに見せてきたのは、俺も数日前まで使用していたスマホだった。
「リオンちゃんって対面だと無口になっちゃうけど、スマホ経由だと結構おしゃべりよ」
「はっ?」
リオンの様子を見ていると、とてもじゃないが意思疎通ができそうにない感じなんだが……。
――ピロン
カグラの言葉を疑っていると、突然デバイスから通知音が鳴った。
一体何なんだとホログラムのディスプレイを展開すると、それはリオンからだった。
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ナオトの兄ちゃん、よろしくや!
ワイは喋るの苦手やから、悪いけどスマホ越しの会話になるけど勘弁してな
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「はっ?」
え、誰?
目の前の少女から来たとは思えない似非関西弁交じりの妙な文章が届いたんだが、嘘だろおい。
「ほら、おしゃべりでしょ」
「これ、おしゃべりって言っていいのか?」
リオンの口からは吐息しか出てないんだが?
文字の羅列が来ただけなんだが?
高校生と25、いや26歳じゃ感性がまるで違うとでもいうのか。
……もう26じゃオッサンとか言われてもおかしくない年だしなぁ。
さすがに26でオッサンと言われるのは抵抗があるが。せめて30代になってからにしてほしい。
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どうしたんや?
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「いや、気にするな」
一回りも違うリオンから再び連絡が届いたので、俺は力なくそう言った。
「そうやって2人は昨日、俺が自分の空間に戻ってから仲良くなったってわけか」
「ええ、そうよ。お互いのダンジョンの事とか、ナオトさんの話とかして盛り上がったわ」
「その内容で話は盛り上がるのか?」
お互いのダンジョンについてならともかく、俺を話題にしたところで対して話すことないだろうに。
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ナオトの兄ちゃんが優しくて頼りになる人だって教えてもらったで!
昨日はどうなるんだろうってビクビクしててまともに話しかけられなかったけど、ワイを隷属することになった相手がいい人そうでホンマよかったわ!
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まぁ、イベント後にいきなり見ず知らずの人間に隷属することになったのだから、昨日話しかけられなかったのも分からなくもない。
これを話しかけるとは言わないだろうがな。
「……本人が喋るの苦手だって言うなら、意思疎通ができるならどんな方法でもいいか」
そこでふと、あのアイテムの機能を思い出した。
仮に裏切られて他のダンジョンマスターに情報を流されたとしても、これくらいなら知られても問題ないな。
「カグラ、リオン。この場限定だが、お前達にも〝SFデバイスセット〟の一部機能を使えるようにしてやる」
「なにそれ?」
「………?」
2人揃って何のことだと言いたげな表情を浮かべて首を傾げているが、口で説明しても分からないだろうし、百聞は一見に如かずだ。
俺はすぐにデバイスを操作して2人にも共有できるようにした。
「サポート妖精達が使っていたデバイスと似たようなのが使えるようになったぞ」
俺はそう言いながらホログラムのウィンドウを展開してみせると、カグラとリオンも理解したのかしばらくして同じようにウィンドウを空中に出現させていた。
「え、すごっ!? 私達もこれを使えるようにしてくれたの!?」
「この場所限定だがな」
「利便性が良くなりすぎて、もう自分のダンジョンコア内に戻れないわね」
「………(コクコク)」
「居着くなよ」
ずっとここにいる気かお前ら。
「あとリオン」
「………?」
「〝SFデバイスセット〟の機能にはこういうのがあってな」
俺はそう言いながらリオンの後ろから、リオンが空中に出現させているウィンドウに触れてある機能をONにする。
〖一体何を……――えっ!?〗
「自分の思考を空中に出す機能だな」
本来は失語症などで話すことが難しい人や、身体的な理由で声を出せない人のための機能なんだろう。
なんでこんな機能がダンジョンマスターの使うデバイスに組み込んであるのか謎だ。
〖思っただけでワイの言いたいことが伝わるんか!?〗
「表層意識の自分が伝えたいことだけを投影する機能みたいだから、伝えたくないことまでは伝わらないから安心するといい」
〝SFデバイスセット〟がURだけあって、こんな変な機能まであるんだよな。
使う機会ないだろって思ってたから覚えてたが、他にも色々機能がありすぎて〝SFデバイスセット〟を使いこなせる自信はないな。




