第125話 恨みの矛先
≪ミカゲ(仮)SIDE≫
イベントが終わり順位を確認すると、そこには【418位】の文字があった。
「あ~クソッ! イベントの中盤で魔物が全滅したせいで、あれから順位を伸ばせなかったじゃないか!」
分かってはいたが納得はできなかった。
大人しく人間達が殺されていれば、確実に50位以内には入れたはずなのに、銃を使われたせいで計画が完全に狂ってしまった。
せめて銃さえ使えなければ魔物達を殲滅されることはなく、向かって来る自衛隊の連中に特攻させて道連れにするということも出来たというのに。
「せめて自衛隊の連中が剣や棒で戦っていれば、複数でかかれば殺せていたのは間違いなかったんだがな」
それさえできれば、向こうも多少怯む上に殲滅スピードも間違いなく落ちていた。
銃という文明の利器の使用は反則だろ。
「チッ、過ぎたことを言ってても仕方がないか。
それよりもこのイベントのお陰で負の感情エネルギーを大量に回収できたし、それでダンジョンをより大きくしよう。
そして今度こそはダンジョンバトルみたいなイベントがあっても、他のダンジョンマスターに負けないようなダンジョンにしなければな」
60万4991ポイント。
今回のイベントで入手したポイントは、これまでチマチマ貯めていたのが馬鹿らしくなるほどだった。
「だが、これだけポイントがあるのだから、少しくらい自分の生活を整えるのに使ってもいいだろう」
今はずっといたら頭がおかしくなりそうな真っ白な空間に、ポツンとプレハブ小屋があるだけだからな。中はかなり質素で、必要最低限しか物が無い状態だ。
不思議と真っ白な空間に居続けても精神的に嫌気がさしたりしないのは、ダンジョンが自分の身体と同義になってるせいか、それともダンジョンマスターにされた際に精神をいじられて気にしなくされたせいか。
どちらでも構わんが、嫌気がさしたりしないとはいえ、ダンジョンマスターになる前の人間だったころの生活を知っていると、この白い空間にベッドを置くだけというのは耐えられなかった。
だからプレハブ小屋の中は質素なもので我慢していたわけだが、60万もポイントを得たなら3万、いや5万くらいは自分のことに使ってもバチは当たらんだろ。
そう思った結果、少し予算をオーバー、……8万は少しと言えないかもしれないが十分満足のいく生活空間に生まれ変わった。
残りのポイントはダンジョンの強化に使っていくわけだが、さて、どう強化していこうか?
◆
≪とある男SIDE≫
頭の中が真っ白になり、そしてそれがすぐに真っ黒に染まった時の私の心象を端的に表すなら――絶望。この一言だった。
目の前で妻と幼い息子がゴブリン達によって殺された。
「うわああああああっ!!?」
気が付けば自分の手から血が出るほど力強く殴った棍棒で殺し、死んだゴブリン達はそのまま消えていった。
残ったのは私と息をしない妻と息子。
怒りが過ぎ去り、悲しみが溢れ、そしてまた怒りが湧いてきた。
「何故、妻と息子は死んだんだ……」
その零れた言葉は誰かに問いかけるものではなく、ただただ何故なんだという頭を駆け巡る疑問が口から漏れたものだった。
いつもの日常のはずだった。
休日は、家で妻と分担している家事をこなしたら、5歳の息子と遊んだりしてのんびりと過ごす。そんな日常。
今日は私が風呂の掃除をして、妻が外で洗濯物を干していて、息子はそのそばで洗濯バサミを渡したりといったお手伝いをしていた。
「きゃああああ!?」
「ひっ……! や、やだぁぁぁっ!!」
その最中、妻と息子の悲鳴が聞こえたのだ。
明らかに普通じゃないその声に、私は手が泡まみれでも構わず妻達の元へと駆けつけると、そこにはゴブリン達がいて、妻と息子を棍棒のようなもので殴り倒していたのだ。
そんな有り得ない光景に一瞬頭が真っ白になったが、すぐさま私はそのゴブリン達に対して殴りかかった。
幸いにもゴブリン達は子供程度の大きさで、殴っただけで簡単に倒れてしまう。
その際ゴブリンが手放した棍棒をすぐに拾って、そいつらを全て駆逐し、慌てて妻達に駆け寄るも殴られた箇所が悪かったのか、すでに息絶えていた。
その現実が受け止められず、すぐに救急車を呼ぼうにも、外ではあちこち騒ぎになっているせいか繋がらなかった。
そして茫然としていた私は、いつの間にか大量のゴブリンに囲まれて殺された。
殺されたはずだった。
しかし何故か生き返っていた私はすぐさま周囲を見渡すと、あの時とほとんど変わらぬ光景がそこにあるだけだった。
むっとする臭気がその場に漂い、妻と息子が倒れたときの姿勢のまま、そこには数匹のハエがその周りを飛んでいた。
臭いとハエの存在が、あの時から時間だけが過ぎてしまったことを私に強制的に知らしめているようだった。
「ふざけるな……。ふざけるな!! うわああああああ!!」
喉が裂けるほど叫んでも、何一つ救われないのは分かっていた。
それでも叫ばずにはいられない。
許せない。許せない許せない許せない!
私達が何をした?
どうして妻と息子は殺され、こんな無残な姿を晒しているんだ?
胸が締め付けられ、呼吸すら苦しい。
視界が揺れ、涙なのか汗なのか分からないものが頬を伝う。
ダンジョンだ。
ダンジョンのせいで妻と息子は殺されたんだ!
あの異常な存在が現れなければ、こんなことにはならなかった。
あのゴブリン達が現れなければ、2人は今も笑っていたはずなのに!
「許さない……! ダンジョンマスター! 必ずお前を殺してやるからなーー!!」




