第112話 13万6068
俺が用意した〝ポーション(弱)〟の数は実に13万6068本。
〝ポーション(弱)〟は切り傷などを瞬時に治すので、今回のイベントで怪我をした人間はこれで傷を癒せるので戦うことに前向きになる奴も出るだろう。
「さすがに勿体ないとは思うが、ここで使わなかったらエリクサー症候群になるだけだしな」
そう。[ガチャ]でしかアイテムを手に入れられない俺が〝ポーション(弱)〟をこんなにも提供出来た理由。
それは〝エリクサー〟と〝希釈の錬金窯〟だ。
回復薬として最上位のポーションである〝エリクサー〟を〝希釈の錬金窯〟に放り込むと、〝ポーション(強)〟×3334になった。
そんな感じでどんどん放り込んだ結果――
エリクサー→ポーション(強)×3334
ポーション(強)×1334(2000個は変換せずに残し)→ポーション(中)×8004
ポーション(中)×8004→ポーション(弱)×136068
〝ポーション(弱)〟を13万6068本も用意できたというわけだ。
ちなみにわざわざ〝ポーション(強)〟を2000個残しているのは、これだけの数を手に入れる機会は中々ないので、全てを変換せずに残す事にしたからだ。
この〝ポーション(強)〟で茉奈達のような人間と契約してもいいだろう。
〝拘誓紙〟がないから確実性も持続性もないが、国に頼んで魔石を借金の形で後々払わせるという手もありだ。まあ――
『マ、マスター!? 嘘だと言ってよ!』
と、〝エリクサー〟を変換してしまうことに、フィギュラスが残念そうにしていて、止めるようにすがりつかれるというひと悶着はあったが。
その説得に多少骨が折れたが、どうせ人間が〝オリハルコン〟の類いの鉱物で〝エリクサー〟を交換できるようになるまで、今の様子じゃ10年以上はかかる上に、〝宝箱用アイテム〟だから俺達が使う事はできない以上、飾っておくだけになる――と懇切丁寧に説明することで、ようやく折れてくれた。
「これで判定外行動ボーナスを得られればいいが」
判定外行動ボーナスのヒントから、人間にダンジョンを挑ませるには、ダンジョンにどれだけ価値のあるものがあるかを分からせることが重要になるはず。
ダンジョンから手に入れられる物の価値を実感することで、それを求めてダンジョンに挑むようになる人間が増えると考えた。
「最悪得点にならなくても、イベント後に人間達が俺に対しての悪感情をある程度抑えられる、はず」
さすがに多少なり敵意を向けられることになるのは仕方がないだろう。
特に今回死んでしまった人間の家族に恨まれるのはどうしようもない。
いくら老い先短い老人だけを狙ったとはいえ、慕う人間はいるだろうしな。
「他のダンジョンが、あまり虐殺とかしてなければいいが」
でも絶対してるやついるだろうな。
ダンジョンマスターが願望の解放処理がされている以上、【殺戮願望】のようなドストレートに人間を殺しにいきたがるやつもいれば、このイベントの上位者特典である他のダンジョンマスターを隷属させられる権利を欲する【支配願望】とかが、やらかしそうだし。
「それを考えると他の地域のことが分からないのはもどかしいな。今頃どうなってることやら」
◆
≪ミカゲ(仮)SIDE≫
「クソッ! かなりの数の魔物を狩られてしまったじゃないか!?」
人間どもが銃を使って俺の魔物を次々と殺していくせいで、もうほとんど残っていない。
昨日からずっと自衛隊が組織的に動いて、次々と虱潰しに魔物達を殲滅させられてしまった。
「夜通し魔物を狩り続けるとか、そこまでしなくてもいいだろうが!」
わざわざ強力なライトで周囲を照らし、ドローンまで使って空から魔物の居場所を探ってきたせいで、得点を得るために人工物を破壊することすらまともにできなかった。
「お陰で昨日からほとんど得点を稼げていないぞ!」
今生き残っている魔物には出来る限り建物の中に潜んでいるよう命令したが、人間が近くに来たら我慢できずに飛び出してしまう奴が多く、このままでは得点どころか全滅も時間の問題だ。
「せっかくランキングの上位に入っていたのに、やってくれやがって……! ア゛ア゛ア゛ッ!!」
――ドンッドンッドンッ!!
怒り任せに机を叩くも気は全く晴れなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……、ちっ」
何か、何か手はないのか?
残った魔物で自衛隊に強襲をかけてライフルを奪い、それを使って人間を殺すのはどうだ?
いや、魔物がライフルの使い方を理解できるのかという問題と、そもそもFランクの魔物じゃ自衛隊相手に仮に奇襲できたとしても敵わないんじゃないかという問題があるな。
自衛隊は複数人で行動している以上、十中八九無理だろう。
1人だけなら犠牲覚悟で何体かまとめて特攻させれば、銃を奪うくらいできそうだが、お互いが死角をカバーしながら行動している状態では厳しすぎる。
「……はぁ、終わりだな」
人工物の破壊に方針転換したところで、破壊の物音で自衛隊を引き寄せるだけだろう。
奇襲しようにもドローンのせいですぐに見つかってしまうし、もうどうしようもない。
やぶれかぶれで魔物達を密かに集結させて、自衛隊を襲わせたが、案の定見つかっていたせいで被害も与えられぬまま殲滅された。
「どうしてこうなった……」
幸いなのが、中間発表でランキングの上位ではあったから、さすがにワースト50にはならないであろうということだけだった。




