第109話 下から574番目と上から140番目
「び、微妙……」
「何とも言えない順位だな」
5011位中、4437位って下から574番目とか。
一応ワースト50位ではないが、油断すればワースト50位に入ってしまうかもしれないという微妙な順位。
マルティアがあれだけ頑張ってくれたにもかかわらずこの順位とは、他の連中はどれだけ得点を得ているというのか。
「お、起きなきゃ……。寝ている場合じゃ、ない!」
「落ち着けマルティア」
というか、いい加減寝ろ。
さすがに三徹目は止めるぞ。
「最初の頃ならともかく、人間側の態勢が整った今となっては、がむしゃらに動いたところでどうにもならないだろうが」
もう避難所の周囲は防衛線のようなものが敷かれており、そこを突破するのは至難の業だ。
人間に危害を加えることである程度の得点は貰えるが、人間を極力殺さない方針である以上、無理に挑んだところでメリットは少ない。
それなら人間が少なくなった場所を狙って、人工物を破壊していった方がよっぽど得点になる、はず。
……順位は分かっても得点の内訳が分からないせいで、絶妙に自信がないんだよな。
「ううっ……。分かりましたマスター。しばらくよろしくお願いします」
「あいよ。最悪隷属させられるだけで死にはしない」
「そんなの聞かされて素直に寝られるとでも!?」
「冗談だ。得点をできるだけ稼げるように動くから、お前は寝てろ」
「なんて心臓に悪い冗談……。それではおやすみなさい~」
フラフラと高級ベッドのある寝室へとマルティアが向かって行ったのを見届けると、俺は肩を回してため息をついた。
「今日は徹夜だな」
マルティアにはああ言ったが、隷属させられるのは嫌に決まっている。
なら、マルティアがこの3日間頑張ってくれたように、俺も今日明日くらいは頑張らないとな。
放置して寝ると、ゴブリンとかは人間を襲うために、ジョブ持ちがいようとも構わず特攻するから寝てられないし。
「とりあえず判定外行動ボーナスを狙いつつ、人工物を破壊して得点を稼ぐか」
どうすれば判定外行動ボーナスを得られるかはこの数日考えたが、やはり人間にダンジョンを挑ませるようにするにはあの手が一番のはず。
問題はフィギュラスが納得するか、だな。
◆
≪ミカゲ(仮)SIDE≫
「よしよしよし! 順位が140位なら、まだ50位以内に入るチャンスは十分ある!」
イベントが始まった直後、オレはダンジョンの近くにいる人間達を手当たり次第に殺し始めた。
得点の低そうな子供よりも老人を中心に狙ったが、たとえ子供であっても数点もらえるのであれば殺らない理由はない。
「人工物の破壊は後回しにして正解だったな。どうせすぐに逃げられて守りを固められるだろうと予想して、まずは人間を狙ったお陰でかなり得点が稼げた」
老人でなくても、成人している者なら18点以上は確実に点が入るのだから、やはりこのイベントでは人間を殺しまくるのが最適解。
人間側も殺されるからか必死になって抵抗して、こちらの魔物を殺してくる時もあるが、その時はジョブを持たない人間なら50点入るのでそれはそれで美味しいからな。
だがまだ足りない。
「今度は避難している人間が集まっているであろう場所を襲う事にするか。道中にある人工物を壊しつつ、そうだな……学校のある場所へと向かえ!」
こういう避難場所の鉄板といえば、学校の体育館とかに人が集まってるだろうからな。
オレが魔物達にそう指示すると、魔物達は手にある棍棒やナイフで自販機や車などを傷つけながら、ニタニタと笑って学校のある方へと移動し始めた。
Fランクの魔物の膂力では人工物の破壊は難しく、精々傷つける程度しかできない姿を見て、人間狙いを中心に動いたのは間違いなかったと確信した。
「あれではろくに得点は得られていないな。やはり人間を襲うのが最も得点を得るのに効率がいい」
サポート妖精がボソボソとあまり人間を刺激しない方がいいんじゃないか、とか言ってきたが、お前は黙ってオレの言う通りにしていればいいんだよ。
オレが満足げに魔物達の様子を見ていると、小学校のある場所にすぐにたどり着いた。
「バリケードか」
だが、人間達もそう簡単にやられる気はないようで、守りをガチガチに固めているのが遠くからでも見て取れた。
「だがあの程度なら、何体かの魔物達が土台となって壁を乗り越えれば済むだけだな」
そう考えていたが、オレはこの時、バリケードが問題ではないことに気付かなかった。
『来たぞ! 総員構えろ!』
「なんだ?」
よく見たら人間、というより迷彩服を着た人間達がぞろぞろといたので、自衛隊の連中なんだろう。
オレのダンジョンにも来た事があるので、こいつらはジョブをすでに持っていると思っていいはず。
「ちっ、面倒なのが出て来やがった。
まあいい。数なら明らかにこちらが上だし、多対一に持ち込んで一人一人片付けろ」
オレがそう指示を出すと、魔物達は待っていましたと言わんばかりに自衛隊へと向かって行った。
「ん? あいつら、なんで銃なんて持ってるんだ?」
ライフルを構えているが、ダンジョンでは銃なんか使えないのに何を考えてやがる?
その疑問は、すぐにオレにとって最悪の結果として現れた。
『撃てー!』
――ダダダダダッ
『『『ギャーッ!?』』』
「なんだと!?」
放たれた弾丸がオレの魔物達にことごとく当たって、次々に倒していってしまった。
「馬鹿な!? なんで銃が使えるんだ!?」
イベント中はダンジョンの外はダンジョン内と同じ環境になるはずじゃ……。
オレは急いで魔物達に退避命令をした後、告知されたイベントの詳細を確認すると、そこにはこう書かれていた。
【イベント中はダンジョンの外でもダンジョン内に類似した環境になり――】
「クソッ、やられた!」
あくまで類似であって完全に同じじゃなかったのか!
そのせいで人間側は銃が使えたのかよ!
「マズイマズイマズイ!」
このままじゃ得点を稼ぎたくても、自衛隊の連中に邪魔されてこっちの魔物が殲滅されてしまう。
だがFランクの魔物では銃を相手に抵抗などできるはずもなく、その手段も思いつかなかった。




