第104話 ダンジョンVS人類
≪ナオト(仮)SIDE≫
ダンジョンの外では、イベントが始まる前から魔物を倒した事がある者達が中心となってFランクの魔物を次々と倒していた。
このまま何もせずに傍観していれば人間側の被害は最小限で済むだろう。が――
「それだと俺が他のダンジョンマスターに隷属させられることになるから、悪いがそろそろこっちもきちんとやらせてもらうか」
そうは問屋が卸さない。
幸いにも茉奈達の発言で人間側にも何かしらの通知があったようなので、少なくともダンジョンマスターよりも上位存在から強制されていたという言い訳ができるようになった。
むろん信じないヤツも大勢いるだろうし、今後人類全体から敵視されるようになる場合もあるが、その時は諦めよう。
それよりも今は目の前の事を乗り越えねば。
「それじゃあ魔物達に指示を出すか」
「あ、真剣にやるんですか。そうなると人間とまともに敵対するのはこれが初めてですね」
「言われてみればそうだな」
マルティアの言う通り、俺は人間達に配慮する方針を取っていたため、今までのダンジョン運営は人間に接待していると言っても過言ではなかった。
人間が楽しめるように、役に立つように、死なないようにとアレコレ神経をとがらせて慎重に接していた。
迷惑系の配信者チョウカンですら、生身では殺さなかったし。
だが、今回のイベントでは神のせいにできるお陰でようやくまともに対決できるわけだ。
しかもこっちの駒はFランクの魔物という、素手の人間に群れで戦えば勝てるレベルの魔物しか使えないという状況。
「はっ、久しぶりにひりついてきたな」
[ガチャ]以外で久々に【挑戦・賭博願望】が表に出てきた気分だ。
こちらが使える手駒はFランクの魔物しかおらず、そいつらを狩らせないようにしながら、出来る限り人工物を破壊していかないといけない。
もちろんジョブを持たない人間にやられるのであれば、50Pももらえるのだから構わないが。
「Fランクの魔物だとあまり強くないから、こっちが人間に挑む気分だぜ」
だが、さすがに人間を死なせてしまうのは極力回避しないといけないな。
下手に殺したらさすがにいくら神からの強制イベントだったとは言え、ダンジョンに悪感情を持たれてしまう。
……だが老人ホームとか襲撃するのはダメか?
年齢分のポイントが得られるなら老人の方がお得だし、老い先短いならここで一花咲いてもらって、パッと散ってもら――ん゛ん゛っ!
ま、まあ魔物達が動いた先にたまたまいたら仕方ないよねってことで、積極的に狙わなければいいだろう。
「じゃあまずはほぼ一方的にやられてる魔物達に指示を出していくか。マルティアも半分くらい魔物を率いてみるか?」
「えっ、いいんですか!?」
「やりたいなら――」
「やりたいです!」
「お、おう……。思いのほか食いついてきたから驚いたな」
あまりの勢いに若干引いていると、マルティアがこちらに鼻息を荒くして迫ってきた。
「だって、私のサポート妖精としての仕事がマスターのせいでほとんどないんですよ! こういう活躍できる機会は逃せませんよ!」
「そ、そうか」
思った以上にフラストレーションを抱えていたか。
仕事なんてせずにゴロゴロできることを苦痛に思う者もいるってことだな。
「では、私はスライム以外を操りますから、マスターはスライムの操作をお願いします」
「ん? スライムだけに指示するだけでいいのか?」
「何言ってるんですか。マスターの頑張りのお陰でスライムがもっとも他の魔物よりも多いんですよ。それだけで半分近くはいるはずですし」
ほぼ無心で増やし続けていたから知らなかったが、まさかそんなに増えているとは思いもしなかった。
「同じ種族だけを操る方が色々やりやすいと思うのでそちらは任せます。私としましても色々な種族に指示する方が面白そうですし、腕が鳴るというものです。
あ、でもスライムだと人工物の破壊はそこまで期待できないと思うので、私の方は人工物の破壊をメインにしようと思いますがよろしいですか?」
「あいよ。じゃあインプとかマミー、それに今まで[ガチャ]で出てきた魔物の操作はそっちに任せるな」
種族によって得手不得手があるから、それを一々考えなくて済むというのはありがたいな。
マルティア自身が率先してやりたがってるし、面倒な方は任せてよさそうだ。
そんなわけで俺は早速、スマホに映っているボコボコにされているスライムへと指示を出す事にした。
「よし、じゃあスライム共、ひとまず人間から逃げろ。そのままだと一方的にやられるばかりで、何もできないぞ」
ダンジョン内の時のように完全に言う事を聞くわけではないが、それでもこのまま人間にやられてしまうのは本望ではないのだろう。
スライム達はあっさりと俺の言う事を聞いて動き出す。
「逃げる場所はここだ。ここならお前らにとって脅威となる人間は少ないはず」
俺がそう言って示した場所は――
『な、なんじゃこやつら!?』
老人ホームだった、
いや、違うんだ。
あくまでも逃げ込みやすくて、反撃してくる人間が少ないであろう場所がここなだけで。
不慮の事故が起きてついでに得点が得られればいいとは思ってはいるが。
あ、スライムが老人の顔に覆いかぶさったな。ヨシッ――ん゛ん゛っ、ではなく、ああ、なんて不幸な事故なんだ……。
ある程度言い訳が利くと判断できたから、ちょっと大胆な事をしている自覚はあるが、もうなるようになれだ。
俺は起きてしまった事は仕方がないと、スライム達に次の指示を出していった。
ついでに、人間側がどんな情報を得ているかをあいつにも連絡を入れながら。




