第101話 イベント開始直前
ある程度準備はできた。
あの神託から3日経っており、今日がイベント当日だ。
まだイベントが始まる告知は来ていないが、おそらく神託のあった時からきっかり72時間後に始まるのだろう。
「前のダンジョンバトルはまだ分かるが、さすがに今回はどうなるかほぼ読めないのが不安だ」
「Fランクの魔物限定で強制的にスタンピードを起こさせる、ってどういうイベントなんでしょう?
いえ、意味は分かるんですけど、イベントとしては意味が分からないというか」
「何をどう競うのかがいまいち想像つかないってこと?」
「そういう事ですね」
マルティアが首を傾げているが、そう難しくはないと思うのだけどな。
「予想できることだと、人間を殺した数を競う系のやつとか」
「私達のダンジョンがそんな催しを強制されたら、今後のダンジョン運営の方針が180度変えないといけませんね」
「他には人間を攫った数で競うとか」
「それも同じですね」
「あとは人間の作った建造物をいかに破壊したかを競うとか」
「どれも運営が180度変わるレベルで人類と敵対行動を起こしてますよ!?」
スタンピードだからそんなもんだろ。
ただ、いきなりダンジョンマスターの数を半分にしたダンジョンバトルを行った神のことだから、それを危惧して人間側に被害が及ばないように動いたら酷い目に遭いそうだから、全力で人類と敵対するつもりで動くぐらいが丁度いいだろうが。
もっとも、それに対してなんの考えもなしで敵対するつもりはないが。
「分かってるよ。そうなると予想できるから、前もって政府と交渉していたんだろうが」
「あれ、交渉ですか? イベントについて言及できないせいで、こちらが一方的に損しただけですよね」
「イベントの事が話せない以上仕方ないだろ。後はもうなるようになれだ」
――ゴォォン、ゴォォン
来たか。
3日ぶりの重厚な鐘の音。
つまり神託だ。
神からのメッセージが宙に浮かぶ。
〖ダンジョンマスターよ。只人は不要である。戦う意志の持たぬ人間をことごとく蹂躙するがいい〗
なんとも不穏なメッセージだ。
そのメッセージを認識したと同時に、以前と同じようにスマホが目の前に現れた。
急いで俺は今回のイベントの詳細を確認していくと、ダンジョンバトルの時とは違い、中々厄介なイベントであることが分かった。
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※Fランク大暴走について
あなたのダンジョンに生息する全てのFランクの魔物が、ダンジョンの外へと解き放たれ、魔物達が行動した結果により得点が付きます。
他のダンジョンマスターよりも得点を稼いで、上位の順位を目指しましょう。
イベント中はダンジョンの外でもダンジョン内に類似した環境になり、ダンジョン外でもある程度魔物達に命令することが可能なので、ダンジョン外で思う存分暴れさせてください。
ただし、ダンジョン外は全ダンジョンマスターの共通のダンジョンになるため、宝箱の設置、魔物の召喚、設備の設置などを行う事はできないので注意してください。
Fランク大暴走の開催時刻は本日の午前10時から168時間となります。
得点の内訳は以下になります。
・魔物が倒されるごとに1点
・ジョブを持たない人間に魔物が倒されるごとに50点
・人に危害を加えるごとに1点
・人を殺すごとに得点(殺した人物の年齢分の得点が加算)
・人工物を壊すごとに得点(破壊度合いにより得点が加算)
・判定外行動ボーナス(上記以外の行動でも得点が加算される場合あり)
※ヒント(判定外行動ボーナス)
本イベントは冒険者の数を増やし、人間側に率先してダンジョンに挑ませるために行われます。
また、ほとんど冒険者の来なかったダンジョンに対する救済措置でもあります。
外へと解き放たれた魔物はイベント中はダンジョン内に戻れませんが、イベント終了後にダンジョン内に強制帰還され、倒された魔物は復活するので安心してください。
その代わりイベント中は〝魔物発生陣〟などで魔物が再召喚されなくなります。
イベント順位が最下位から50番目までのダンジョンマスターは、上位50位までのダンジョンマスターに隷属することになるので頑張ってポイントを稼ぎましょう。
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イベントの内容については分かったが、とんでもない内容だな。
「人を殺すことによるポイントの恩恵が大きすぎるだろ……!」
ある程度予想していたとはいえ、その予想通りだったことに思わず顔をしかめてしまう。
このルールを額面通りに受け取ったら、マジで人間との敵対ルート一直線だぞ。
「そちらも厄介な話ですけど、不幸中の幸いなのがFランクの魔物を0にしなくて正解でしたね。
もしそんな事をしていたら、何もできずに他のダンジョンマスターに隷属させられてましたよ」
「そこだけは本当に良かった」
ダンジョンバトルの事を考えたら、有り得そうだと思ったからな。
「ちっ、なんとか得点は稼ぎつつ、できるだけ人間と敵対行動を取らないように心掛けたいが……」
「このルールだと無理難題だと思うのですが……」
「分かってる。だが他のダンジョンマスターに隷属するわけにはいかないし、なんとかしないとな」
せめて中間程度の得点を稼ぎたい。やるだけやるしかないな。




