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第二十六話 大切にしてくれる彼氏(2)

 正直にいうと、違うと答えが返ってくると思っていた。


 悩みを抱えているような姿を見たことがないから。


 まだ酔っているんだろうか。


 聖さんは畳へ視線を移し、指を組んで肩の力を緩めた。


「俺もこの限界集落からいつ追い出されるか不安なんだ。

 心の中ではいつも怯えている。

 そんなことを気にしなくても住んでいられるけど、俺には背負っているものがあるんだ」


「会社のことでしょうか?」


「今は会社のこともあるけど、他にもうひとつある」


「そういえば、初めて会った時にやりたいことがあるって言っていましたよね?」


「ああ。よく覚えていたな。

 亡くなった祖父母のためにこの家と土地を継ぐ。

 それが俺のやりたいことだ」



 聞いた話によると、この家は聖さんのお父さんの実家らしい。


 聖さんのお父さんは長男で三人の兄弟がいた。


 弟たちはここから遠く離れた県外に引っ越していて、幸せな家庭を築いているようだ。


 この家に住んでいた聖さんの祖父母が亡くなってから弟たちが帰ってきたのは三周忌の時。それ以降、来ていないらしい。


 だから、私は聖さんの親族にまだ会ったことがない。


 不便な場所だから帰って来ないと聖さんは言っていたけど……。



「どうして聖さんが跡を継ぐことになったんですか?」



「祖父が亡くなってから、この家に住むのは祖母だけになった。

 しばらくしたあと祖母が癌になってな。

 その時に父と叔父たちが集まって、この家と土地を売ると話をしていた。

 それを聞いた祖母が俺に言ったんだ。

 “思い出の場所を守って欲しい”っとな。

 子供の頃からよく泊まっていて、孫の中では一番顔を合わせているから言いやすかったんだろう」



「私だったら荷が重くて断ってしまいそうです」


「俺も最初はそう思った。

 そのあと、体調が悪くなって祖母が入院することになった。

 お見舞いに行ったら、アイスを買ってきて欲しいと頼まれたんだ。

 どのアイスを食べたいのか聞くと、じいちゃんとふたりでよく食べていたアレと言われてな。

 泊まっていた時に冷凍庫にあったものは、いちごアイスだった。

 それを買って祖母のところに行ったら、笑って受け取ってくれたんだ」


「喜んでくれたんですね」



「いいや……。

 祖母が亡くなってから、母に聞いたんだけど、本当はチョコミントアイスを食べたかったらしい。

 それを言われて気づいた。俺が泊まりに来る時は、俺の好物のいちごアイスを用意してくれていたんだなって……。

 こんなに優しくされていたのに、俺は祖母の最後の頼みごとを間違えてしまったんだ。

 祖母が亡くなってから、その失敗が頭の中から消えなくてな」


「取り返しのつかないことだから……?」

お読みいただきありがとうございます。

続きが気になると思っていただけましたらブックマーク、下にある「☆☆☆☆☆」、リアクションなどからぜひ応援いただけると幸いです。

今後の執筆のパワーになります。

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