第二十三話 あなたの役に立つために(2)
「…………」
聖さんと玲司さんの表情が固まった。
料理名を間違われるほど料理が下手で悲しい気持ちになる。
俯いて落ち込んでいると、聖さんがハンバーグを食べてくれた。
「美味い。焼き加減が最高じゃないか」
穏やかに微笑みながらそう言って次々と口に運ぶ。
玲司さんも大きな肉の塊を頬張っていた。
「肉の味がストレートに伝わってくるね。
たまにはシンプルな味もいいかな」
トマトケチャップをかけたのになぜだろう。
疑問に思いながらハンバーグを一口食べてみる。
すると、想像していたものとは全然違くて、美味しいとは言えなかった。
「挽き肉と玉葱を混ぜて、丸めて焼けばできると思っていました。
でも私が作ったものは、何かが抜けているような気もします」
「片栗粉じゃなくてパン粉を使ったらいいんじゃない?
あと材料に牛乳と塩コショウ、ナツメグも必要かな」
色んな材料を使ってあのジューシーな味が出来上がっているとは知らなかった。
「失敗したものを出してしまってすみません。
今すぐ下げて、違うものを作ってきますね」
ハンバーグの皿に手を伸ばすと、聖さんに先に取られる。
「下げる必要はない。俺は出されたものは残さず食べるタイプだからな」
「でも……」
「細かく刻んだ玉ねぎを見て、頑張って作ったことが伝わってくる。
それだけで大成功じゃないか」
「オレもそう思うよ。疲れているところ作ってくれてありがとね」
聖さんと玲司さんは優しい声で励ましてくれた。
おかげで悲しい気持ちが吹き飛び、自然に笑うことができた。
ちゃぶ台に並べた料理がどんどん減っていく。
味が薄いオニオンスープを飲んでいる時、ふたりに聞きたかったことを思い出した。
「そういえば、帰りが遅かったですよね。
買い物に行っていたんですか?」
「バッグを探しに行ったんだよ。
聖が一緒に探すって言ってくれてさ。
冷たいことを言う時もあるけど根は優しい人だよね」
「褒めても給料は増えないぞ」
「それで、バッグは見つかりました?」
「なかったよ。イノシシがどこかに持っていったのかな……。
もしかしたら、このまま一生見つからないかもしれない」
「きっと、そのうち見つかりますよ。
次に探す時は私も手伝いますので言ってください」
「放浪していた時に田舎の風は冷たいと思っていたけど、温かいところもあるんだね。
……お世話になりっぱなしで悪いけどさ、よかったらしばらくここに住んでもいい?」
「この辺にすぐに住める家はないから仕方ないな。
蒔菜はどう思う?」
「聖さんがいいなら私も賛成です」
「本当にありがとう!
お礼にウクレレを演奏するよ」
「いや、今日は遠慮する。
ところで、うちの会社で働いてみてどうだった?」
「力仕事は大変だったけど、おばちゃんとおじちゃんたちが優しくていい職場だと思ったよ。
これも聖の人柄がいいからだね」
「そうか……。玲司に合っているならよかった」
褒められているというのに、聖さんは嬉しそうな表情を見せなかった。
口調が冷たく感じて、他人事のように言っている。
些細なことだけど気になった。
聖さんが誰にも言えないことを抱えているんじゃないかと思ったから……。




