File.8 グリフィカ・ヴェホル
File.8 グリフィカ・ヴェホル
※都森のぉ様 作:「毒は私の専門分野ですので、どんな毒も調合してみせます」の主人公。
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モルビット王家に仕える『薬師』の一族・ヴェホル家の女の子。
作中ではお茶を飲むシーンが多く、一つの要にもなっているのでそのイラストを描きました。
西洋ヨーロッパ風世界観なのでツインテールは無いのかもしれないですが、脳内イメージはなぜかツインテールだったんですよね。
派手なリボンとか髪飾りは邪魔になるのでつけない、多分。それにくくっておけば研究の邪魔にもならないですし。
そしてあまり表情が変わらない。頭の中は毒のことでいっぱい。
傍で第二王子が毒に苦しんで悶えてようが、宰相が呆れ顔をしていようが、グリフィカは一切気にすることなくすました顔でお茶を飲んでいます。
* * *
作中世界における『薬師』は、あらゆる毒とあらゆる薬に精通する特別な人間、となっています。
病死と見せかけて殺すことも逆に命を救うこともできるので、どの国も薬師を抱えたがっています。
医師もいますが、医師に調合できるのは薬だけ。毒は薬師にしか作れないし、また解毒剤を作れるのも薬師だけなのです。
ですから薬師の家は貴族ではないですがある意味、貴族よりも優遇されています。行動もあまり制限されておらず、まさに特権階級。
作中では『薬師は時として王族より偉い』と言われていました。
その中でモルビット王国は『薬』のケルシー家と『毒』のヴェホル家を王国薬師として抱えていて、これが他国に一目置かれていたり警戒されたりしている理由となっています。
さて、グリフィカはそんなヴェホル家の長女で、毒のスペシャリストです。
そしてヴェホル家の中でも際立って優れた薬師ですね。毒の天才と言われています。
『毒の魔術師』と言われるお兄さんもいるのですが、毒の研究と知識に関してはグリフィカが遥かに上なのではないか、と思います。グリフィカが調合した毒はグリフィカでなければ解毒できないと言われていますし。(グリフィカ自身も「お兄様に毒草の世話を任せたら全部枯らせてしまう」みたいなことを言っていた気がする)
まさに職人です。それに対する自負もありますしね。若い女の子なんですがその道五十年のプロのような凄味があります。
「死なせないわよ。わたくしは毒を専門とする薬師よ。わたくしに解毒できない毒はないわ」
「数か月、数年とかけて毒殺するのも可能なのですよ。わたくしからすれば、毒で即死させるなど三流もいいところです」
「先ほども申しましたけど、即死させるなど三流もいいところですわ。さらに毒で殺すなど二流ですわ。一流の毒というものをご覧にいれて差し上げますわ」
……と、毒が関わったときのグリフィカの台詞はカッコいいものが多いです。
さて、グリフィカはその実力を見込まれて、モルビット王国の第二王子の婚約者になります。第二王子は妾腹の子だったので、王妃に命を狙われる立場にありました。毒を盛られていたんですね。
王妃に頭が上がらず直接「やめろ」とは言えない国王が直々に頼んだのです。王妃にも王子にも誰にも気づかれないように第二王子を守ってくれ、と。
で、グリフィカはというと、情に流されることはなく淡々とお役目をこなしていました。
第二王子に毒を盛り、その効果を見て解毒剤を飲ませる、ということをお茶会のたびにやりました。表向きはグリフィカが王子を実験台にしているようにしか見えませんが、グリフィカはそうやって彼を守っていました。
淡々と……いや、違うな。毒を調合し王子に飲ませ、自分の毒と王妃の毒を解毒する、というちょっと普通ではできない実験をやっていたので、半分は本当に楽しんでいたのだろう。うんうん。
薬師は調合した毒は必ず飲むそうですが耐性ができてますから、普通の人に飲ませた場合の効果を試せる機会は限られているみたいですしね。
で、守られている第二王子はと言うと、そんなことにはとんと気づいていないですし、もともと結構ポンコツなので思慮も浅い。グリフィカを毛嫌いし、ケルシー家のルベンナを恋人にしていました。
このポンコツの第二王子が
「グリフィカとの婚約を破棄してルベンナを正妃にしたい。そのためには……」
と画策するところから、物語は始まります。
グリフィカは、毒のことしか考えていません。気にかけているのは毒の研究や毒草のこと、新しい毒の開発など。ずっと考え続けて徹夜したり、歩き回っているうちに迷子になったりするぐらいです。
一に毒、二に毒、三四がなくて五にも毒。多分、百までずっと毒じゃないかな。
だから第二王子に嫌われてても全く気にしません。薬師としての自分を見込まれ、国王直々に仕事を頼まれたのですから、やりがいのある仕事です。第二王子の機嫌なんかどうでもいいんですね。
そう、どうでもいいんですよ、本当に……。毒のこと以外は……。
第二王子がルベンナを恋人にしていても「側妃にされていいですよ」とあっさり受け入れたり。
皇帝と既成事実を作ってしまえば疑われることはないのではないか、と夜這いしてみたり。
まぁ、色気はないですね。せっかく美人さんなのに……。毒の研究の邪魔さえされなければ何でもいい、という感じ。
もんのすごくマイペースです。全くブレないので、その分周りを振り回します。
グリフィカの心が動くのは、毒に関することだけです。
そのときは目がキラキラとして表情も生き生きとします。普段があまりにも淡々としているだけにそのギャップが可愛いです。
テンションも上がって、普通の女の子みたいになります。
「あなたに手料理をご馳走するわ!」
ぐらいのテンションで
「皇帝陛下にわたくしが毒を盛って差し上げますわ!」
と言います。嬉々として。
グリフィカが喜んだり怒ったりという、感情を露わにする場面はあまり多くはないので、必見です。
この物語は主人公グリフィカが本当に突き抜けていて、相手役というものは存在しない。周りはすべて完全に脇役です。
存在感が無い、という意味じゃないですよ。物語の中心に居続け、話を動かす100%がグリフィカだということです。
自分の意志を曲げることなく思う通りに動きますから、ある意味「主人公最強」的な爽快感があります。
この世界では『薬師』の存在がそもそも超越していますから、特に『毒の天才』であるグリフィカはこの世界における『チート』なのかもしれませんね。