コホーネ村に行こう。前編
「速ぇええ!!!速いって!タンマ!タンマぁ!」
「ほれぇ!勇者様!だらしないぞぉ~」
「お、おっさん~ヘルプ~ヘルプぅ~!」
「しょうがないのぉ~”充填”!」
宿泊二日目。早朝から漁村に向かって疾走中。参加者はおいら。トワ君、カイエンどん、ビルック、ニッキ殿の5人だ。
皆、自力で”魔纏”ができる。彼の名誉のために言っておこう。彼はまぁ修めているが、まだまだ鍛錬不足。遅いし、すぐ切れる…おいらといつも一緒なのが悪かったのか。
魔力量、制御はそこそこなんだがなぁ。なぜか戦いの時にしか発揮しない。戦闘狂故か?アレだけ超絶技を放つくせに。まぁ、周りの連中がアホすぎるのだがね。
カイエンどんもだんだんと己のモノにしてきている。以前は持続力も短かかったが…最近は戦闘時にも使うので死体は”ひでぶ~”だ。わざとやってるだろ!と邪推するほどに…。回収する立場になってみろぉ!まぁ、半分以上は木っ端みじん。回収不可能だがな!
ニッキ殿もコツをつかんだのだろう。魔力量は少ないのだが、制御が繊細でまったく無駄がない。細く長く…キャパは小さいが回復が速い…という感じだな。流石、高位格闘家。昔から魔力制御の鍛錬もしていたようだから、ビルックとの鍛錬により更に上達するのではなかろうか。
ビルック?こやつは制御と魔力量ともいうことなし。このままの状態でも攻撃魔法を遺憾なく放つことが出来よう…スーパー豚耳人だな。食に対するこだわりがもたらす技なのか…が、豚耳族は耕作地を耕すパワーは獣人族内でもトップクラス。身体強化魔法の恩恵、効果が大きいのかもしれない。ある意味種族特性か?もうアルスどんにも勝てるんじゃね?
「ふぅ~。気持ちが良いわねぇ。」
途中で休憩。小川でぬれタオルで汗をぬぐうニッキ殿………なぜか妙な色気があるな…恐ろしやぁ~
「大分ものにされましたね。まさか自力でついて来るとは思いませんでしたよ。」
「ビルック君との訓練が良いのよぉ。最近少しずつだけど、魔力量も増えてきているわぁ。実感できるほどに」
…瞑想が良いのか?ある意味煩悩の塊のような…いや!乙女か!一途な乙女の為せる技か!おふぅ。
「…ミッツさん、なんかへんなこと考がえてなぁ~い?」
「いえ…カイエンはどうだ?」
話題チェンジ!あぶねぇ!
「はい。休憩を取りながらであれば。筋繊維でしたか?修復されているのがわかりますぞ。」
ムキムキ、パンパンだもんなぁ…ん?なんでおいらはムキムキにならんのだ?よもや、自動で”回復”が掛かっているのか?帰り、回復しないように念じながら…。いや、重度の筋肉痛も、動けなくなるのも、”嫌”だな!今のままで良いか!おっさんだし!
「で、勇者様はどうかいな?」
土手に毛皮を敷いてお寛ぎ中の勇者様にも聞いてみる。
「う~ん…ちょい悔しいな!」
「お主は戦うときには恐ろしく制御やら魔力量もあるのに…なんでだ?」
「…なんでだ?」
知らんわ。
「まぁ、鍛錬していくさ。せめてビルックに負けねぇ位にな!勇者補正の力を見よぉ!」
「実力じゃないのかい!…ま、がんばれ…」
「ふふん!勇者補正も俺の実力だ!」
屁理屈を…。
…。
漁村であるコホーネ村に到着。なんでも正式?には”蝶村”だそうな…初代村長の奥方が大の蝶好きが由来らしい…ま、おいら達の懇意にしてる”魚村”も似たようなものか…。
コホーネ村ってのは国やら領主が付けたものらしい。編入?開拓に金出してりゃいいけど…ま、今は当時の様子はわからないね。
しかし…サンゴやら真珠が産業だけあって…金持ってるなぁ。門新調したのか?おニューだな。
「よぉ!ビルックぅ!今日も仕入れかぁ!」
「ええ!ショウさん、お願いします」
「ニッキの姉御と、お?そちらは…ヴァートリーの旦那だねぇ?バッチリお金落して言ってくんな!お大尽さん!」
ははは…もちろんだ!
真っすぐ市場に。最初は野菜のエリアだな。
「やぁ!ビルック!今日あたり来るかと思って良いとこ持ってきたぞぉ!」
「おう!ビルック!ニッキのねぇさん!見て行ってくんなぁ!」
「ビルック君、見て行って。」
…ビルック…この短期間で皆に名を覚えてもらって…父ちゃんは…父ちゃんは…ぅくく…
「ったく、しょうがねぇな…」
うるさいわ!
「だが、すっかり馴染んでるみたいだな。安心したか、おっさん。」…。
町を歩いていると…うん?少々年配のガラの悪い男が近寄って来た…おいらに何か用か?
「よう。ビルック」
ビルックの知り合い?…。
「ブラッドさん。」
「例の物…どうする?」
「…貰っていきます。いつもの値段…で?」
「ああ。」
…なぁ!?び、ビルック君!例の…ブツぅ?い、何時もの値段でぇ!?…も、もしや…もしや!薬か!薬物(麻薬?)か!なんてこった…
「ちょっと待っててね…ははは。」
行ってしまった…
「…と、トワ君…どう思う?」
「ダチ…って感じゃなさそうだが…ま。ビルックにも付き合いってのがあるさ。」
「やばい薬に…手を出してたら…」
「はぁ?大丈夫だろう?信用しちゃれ。」
「そうよぉ。ミッツさん。ビルック君だって大人なんだからぁ。」
…箱入り息子の子豚ちゃんだぞ!そんな無責任なことをぉ!(この時はショックで彼が元孤児で荒波に揉まれていたことを完全に失念中のミッツさん。)
そうこうしていると、リュックを背負ってビルック君が帰還。
「お待たせ。ん?どうしたの?」
「何でもないって。んじゃ、魚の方に行こうぜ。おっさん。エビ仕入れるぞ!」
「あ、ああ。」
やきもきしながらビルックの後に続く。色とりどりの魚も今はモノトーンに…あああ…。
「ったく…しょうがねぇなぁ。ビルック。お前の父ちゃん心配し過ぎて使いものにならん。さっき何してたんだ?」
「…後で…じゃダメ?」
「俺はかまわねぇけど、おっさん、ずっとこんな感じだぞ?」
「分かった…後で驚かそうと思ったんだけど…これ…」
バッグから…白い結晶…やっぱり…あああ。
「味、見て見てよ。父さん。彼…ブラッドさんが独自の製法で作ってる塩。」
「薬の味なんぞ…へ?塩?」
「ヤク?なにそれ?」
「おっさん…」
「こ、こほん…し、塩?おしお?」
「そうだよ?極上の海洋塩。甘くて美味しいんだよ。で、こっちが、キリリと引き締まる感じ。で、海藻塩。焼塩って言うんだ。」
「藻塩?うん。美味いな…で、こっちのが…ほぅ…たしかに甘みがあるな…苦みも無い。」
「そうそう。で、これが苦汁。豆腐作るんだよ。」
豆腐?あれ?つくったっけか?そんなことより、塩かぁ。ほっ。
「ほれ見ろ。料理以外に興味なんてないぞ。こいつは。」
「なんでコソコソやってんだ…?」
「生産量がまだまだ少ないからね。値段も高いから最初、全然売れなかったんだって。で僕が見つけて全量買ってるんだ。ブラッドさんも義理堅くて僕以外に売らないって。で、うちの店に来るスパイ?の連中に知られないためにね。脅されたりしてもね…量が増えても買い取るつもり。お師匠様も了承済み。」
「そうなんだ…ニッキ殿…知ってたでしょ…」
黙っていたなぁ…
「そりゃねぇ。でもビルック君と、ミッツさんの問題でしょう?甘々のミッツさんの方が全然子離れできていないのねぇ。」
「あぐぅ!」
おぐぅ!痛いところを…
「信じてあげなさいな。もう、あなたの手を離れているのよぉ。ビルック君は。これから一人で生きていくのよぉ?解る?」
「言葉も無い…すまん。ビルック。」
「まぁ、心配性の父さんだし」おぶぅ…
「これでいいだろ。おっさん。で、ビルックその箱は何だ?」
「これ?貝?岩に張り付いてる奴。ブラッドさんがお土産にって。茹でて食べると美味しいんですよ。2日くらい平気で生きてるし。この大きさのは珍しいんだよ。ブラッドさんだけが知ってる場所なんだって。」
…めっちゃ心配したが…ああ…ニッキ殿の言う通りだ…な。反省。箱の貝?フジツボか?




