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我が、愛しき娘よ…

いらっしゃいませ~

 朝食後、親分の部下に子供たちを託す。いよいよ、本番だ。雹も留守に残すから問題なかろう。親分も重々申し付けている。頭が下がる。

 

 送還の儀には親分も出席するそうだ。

 昨日うちに狩った猪の半身を出して”お供え”用の料理をお願いしたところ、親分もお供えをすることに賛成!ということでまかせた。親分の方でも、領主様の注文とは別に色々と準備してるらしい。商業ギルドの伝手を最大限利用して。

 料理、酒樽を収納に入れ、果実、ジュース樽など、ありったけを持って領主城に向かう。

 

 「親分、今回の件、何処まで話が行くと思います?」

 「さあなぁ~姫様の胸三寸てとこだろう。ここの御領主は若いけど優秀なんだなぁ。失脚は避けたいだろうさぁ。」

 「ふ~ん。民レベルは?」

 「実際、そういった噂は前からあったんだわ。今回の真相が漏れなくても、大量処罰、突然の領主交代などなど、決定打はショックで老けた領主様だぁ…勘のいい奴は気付くかもなぁ。」

 「ああ。よほどの惨状のようだな…覚悟を決めないとな。トワ君平気?」

 「…俺は全力で送る助けをするだけさ。俺より激情家のおっさんのほうが心配だよ。」

 「言えるねぇ。ミッツさん短慮はせんでよぉ。」

 「解ってるよ!いつも。解っちゃいるが…って奴さ。」

 「それはそれわぁ」


 以前は最前線の城であったのだろうか。背は低いものの堅牢な城がある。王都防衛、南方の最後の砦ともいわれてる要の城塞である。

 代々領主の居城となっており、今回の”送還の儀”が必要となった場所だ。


 「ふぅ…トワ君…」

 「ああ…よくこんなとこに住めるなぁ…」

 魔力視でなくともわかる…張り付くような…粘りつくような…呼ばれるような…そう、初めてリッチさんに出会った時の感覚に似ている。

 「だ、旦那、何が?」

 「親分でも分かんないかぁ。全体が恨みで…そだ。魔力譲渡する?自分の目で見れるよ?多分?まぁ、無理は言わんよ」

 「”ゴクリ”…や、やってくんな!」

 「親分?」

 「俺もここの行政に関わってた男だ。表も裏も…」

 「了解。プチチャージ!」

 「…う、ううぁあああ…な、なんだぁこれは…ミッツど、殿!旦那!旦那ぁ!」

 「落ち着いて、親分。彼らの方がびっくりしてるよ。お子ちゃまだよ。彼らは。無垢な魂達さ。」

 そう。書状の通りの幼い命たちだ。”拷問”なんて言葉があったからな。何も悪くない…豚貴族の快楽のためだけに…そりゃ、恨むさ!が、本当に幼い思い…欠片…その恨みすら、何処に向けていいかわからないのだろう…。

 「う、ああ、そ、そうだな…その通りだな…くそ!くそぉ!ミッツ殿、この魔眼の効果…今日中もつんかい?」

 「ん?辛い?」

 「いんや、最後までこの目に焼き付けてぇ。最後までなぁ。」

 「…そう。見えづらくなったら言ってくれ。そうすりゃ再度力を分けるよ。」

 「すまねぇ…よく見ると…本当に…かわいいなぁ」

 ぼろぼろと男泣きの親分…。ここでこの有様だ。気を引き締めて行こうか。


 門を抜け、現場と言われる”離れ”を目指す。濃密な怨念…無垢な魂といえど…拷問を受け…無意味に…その過程で穢れもしよう、恨みもしよう。ん?

 「トワ君?」

 「どうした?おっさん?」

 「あれ」

 と指をさす。そこにはファムによく似た狐人族の女の子が手招きしてる…背景が透けてるが…

 「俺にも見えんな…わからない…おっさん手を」

 ぎゅっと握る…”充填”

 「あ、ああ、見える…呼んでんな。行くか…」

 「ああ。親分、今、女の子、ファムに似た獣人の女の子の…たぶん幽霊が呼んでいる。行ってみるよ。」

 「…ああ、そっくりだなぁ。姉妹かもしれないなぁ…俺は領主に報告してくる…気をつけぇね。」

 

 にこにこ笑う女の子を追う。おいらにしゃべりかけているようだけど…聞こえない。いくら集中しても…涙があふれてくる…。

 離れと真逆の城の裏手に来た…違和感がある…なんだろうか…奥の方が高い?盛土?攻城には関係ない。むしろ逆?いやな気分だ…

 「おっさん…草の形…」

 壁際にもっさり生えてる根元をみる。滲んだ人型にみえる?

 「ひ、人型…ま、まさか?」

 ニコリと笑って消える…

 「ファムの姉妹かな…」

 「そんな感じがしたね…親分もそう感じたようだしね。俺たちから匂いでもしたんだろう妹の…」

 …なんてこった…。

 「…」

 「おっさん。気をしっかり…な。」

 

 二人で立ち尽くす…。おいらは泣きながら…。 

 収納からお菓子とジュース、料理をだす。最初はここからだな…。

 そこに、姫様と領主、御付きの数人がやって来た。親分が呼んできたようだ。

 

 「ご苦労…どうした!ここに?」

 と、姫様。どうしたもこうしたも…普通の人は良い。何も視えないのだから。

 「ファムの姉が教えてくれました…よく見てください…草の生え方を…」

 「「…」」

 領主たちが、供を連れて、その不自然な中庭に入る。

 「!」

  「ところどころ、ひと、か、た?まさか!」

 と姫様

  「ここにも沢山の子が…いる?」

 領主殿…罪状追加だな、おい!

 「ひでぇえ」

 

 「♪~~~~~~♪~~~~~~」

 その時、静かにトワ君が歌を口ずさむ…

  「と、トワど、様…?」

 優しく、語り掛けるように流れる…子供向きの前世界の歌…

 聖なる気があたりを包む…ふぅっと人の形の影が立ち上がり一緒に歌うがごとく左右に揺れる。トワ君も笑いながら澄んだ歌声を響かせる…

 「♪~~~~~~~~♪~~~~~~」

 ここにも…ここだけで…なんという数だ…

 「~~~~♪~おっさん一緒に~」

 「あ、ああ。~~~~♪~~~~~♪」

 知ってる歌なので即興で低音パートをモドキでハモる

 「「~~~~~♪~~~~~~~~~♪~~~」」

 ゆらゆらと揺れる子供たち…今では影が取れ生きてる時のようだ…浄化されたのだろうか?

  『ファムのぱぱありがとう~』

 「…おいらは、君のパパでもあるよ。お名前は?」

  『…ここにきてから…忘れちゃったの…』

 「そうかぁ。じゃぁファルだなぁセンス無くてごめんね」 

  『うんパパ』

 ファルを抱きしめる。

  『透けちゃうよ』

 「大丈夫。父ちゃん魔力しこたまあるんだ」

  『ほんとだパパ…暖かい…ありがとう。私の分もファムの事よろしくね。みんなを連れていかないと。また会いたいよ…パパ』

 「父ちゃんもだぞ」

 ファルを抱く手に力がこもる…もちろん、涙腺は決壊…いや、崩壊中だ!

 「おっさん…いくぞ!」

 「ああ…我が愛しい娘ファル、清らかなファル…ここの子たちの面倒まかせたよ。今から送るから…おや、す、み…。」

  『うん。ありがとうぱぱ、トワ兄。またねー』

 トワ君の聖歌においらの魔力が注がれる…聖歌に聖火が纏う…皆踊りながら、歌いながらファルに続き、呪縛を断ち切り還っていく…皆が昇り、天からファルがおりてきて一礼『ありがとう…』…消えた…

 「ファル…我が愛しき娘よ…」

 初めて子供を亡くした…

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
ここの話しダメなんだよなぁ…俺も子供がいるからどうしても感情移入しちゃって… 俺ならどうなんだろ?国は潰しそうだなぁ…
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