送還の儀
いらっしゃいませ~
「おっさん…」
「ああ…初めて子供を亡くしたよ…ファル…」
だばだばだぁ~涙が止まらない。ここにいるもの皆、涙を流して天を見あげている…お供え物が消え、不自然な小山も消えて更地になっていた、骨や欠片も聖火で燃え尽きたのであろう。
「ゆ、勇者様ありがとうございます…」
姫が頭を下げる。
どうしても、領主殿、テクスを睨んでしまう…わかってるさ。関係ないって…だが…烈火のごとく紅蓮の魔力がほとばしる。
「おっさん。気を強く」
「ああ。」
「式典ありがとうございます。…すまない。」
「おっさん、本命は明日にするか?」
「いや、子供たちが待ってるよ。こんな近くでやったんだ。ほら、待ちきれないってさ」
わさり、わさりと周り黒い靄が立ち上がる。
「ああ、行くか。おっさん!気合い入れてサポート頼むぞ!一人残さず還す!」
歩き出すと同時に…
「♪~~~~~~~~~~~~♪~~~~~~♪」
ゆっくりと、優しく話しかけるように歌いだすトワ君。離れの方に…おいらも。
「♪~~~~~~~~~♪~~~~」
ゆっくり、ゆっくり。道すがら、影が立ち上がる…周りをゆらゆらしながら…おいら達の後に続く子たち。さぁ、皆で還ろう。
…離れに着いた…一瞬歌が止まる…余りの恨み、生なるものへの嫉妬…圧倒される…くぅう。
「下手したら…ここもリッチになってたなぁ~~今ならわかるだろ…この怨嗟の渦が…」
お供えを出していく…
「お!坊主、このジュースが好きかぁ。飲んで良いんだよ。こっちにお菓子出すな。あの、おじさんが買ってくれたんだぞ~」
テクス達もお供えを並べていく。トワ君もいったん歌をやめ、影が落ちた子供たちと話をしながらジュースを飲んでる。
親分も泣きながら一人一人の頭を撫でようと手をのばしている。
再び朗々と歌が流れ始める。大きく…深く…深く…
「「♪~~~~~♪~~~~♪~~~~」」
建屋の屋根が吹き飛び、多くの影が噴き出し、おいら達を囲む…トワ君は恐れずに歌い続ける。おいらの歌は途切れそうになったが、トワ君がギュッと、おいらの手を握る。勇気をありがとう。まだ歌える。
子供達に張り付いた影もだんだん落ちてゆく…さらに深く深く歌が浸透していく。
そりゃ、恨むさ…闇にも堕ちるさ。可哀そうに…
「「♪~~~~♪~~~~~♪」
「こんなところに…縛られなくてもいいんだよ…」
影の噴出も収まり、闇が溶け…生前の幼い子供の姿に戻っていく…トワ君はちびっ子舞台の歌のお兄さんみたいになっている。周りに集まる子供たちに語り掛けるように。
「おっさん魔力!」
「ああ!ゆっくり休むんだよぉ~~~~はいぱわ~~~!」
「♪~~~~♪~~~」
子供たちが昇っていく~歌いながら、踊りながら…手を振る子もいる…ばいばーい。
…あの子たちが何をした!抱き着いてくる子、じゃれついてくる子。獣人、人族、魔族…全員が昇り切ると同時に”怒り”が!怒りの乗った魔力が噴き出る!このやるせない気持ち…
「ミツルさん…ここにはおチビ達がいるよ。親分だって…だから」
「…ああ、きついな、きつい…」
すうっと魔力が戻り、左目から一筋、熱い涙が続いて…右目からも一筋…血?ん?魔力が!
「うぐあああああああ…」
「おっさ、ミツルさん!!!」
「大丈夫!魔力取られてるだけ!ぐぅううううう…キツイけど、不快感はないよぉ、ぐっううう…」
「お、おっさん?手の甲に…十字架?」
赤い、血に濡れた視界に、確かに手の甲に十字架?聖痕というものか?痛みはない…が…
”どずん”と空が落ちてきたような圧迫感、満ちる圧倒的な力!これが神の気配?というものか!自然と膝を地に着く。
その時天空より、労をねぎらうように…語りかけてくる声。脳…いや、体全体、細胞一つ一つに染み入る声。
<良い働きだったよ君たち、前回に続きよくこんなに多くの”魂”を俺の元に還してくれた…。グッジョブ!褒美にペナルティ取ってあげるよ…ミツル。
チョイと浄化に使う魔力もらったよ。あまり、”世界”に干渉できないからね。なので、”魔力”は現地調達ってやつさ。で、なにか望みはある?>
「力を…この世界を浄化する力を…無念を払う力を…理不尽に対する力を…」
<君は直に大きな力を得る…命の危機の後にね。おおっとネタバレだ!あぶね。あぶね…駄神ゼフィラス?が作った世界だ。何しても構わないよ…好きに生きるといいよ。>
「で、でしたら、今、送った者たちに慈悲を。安らぎを…」
<…ああ、了解した。トワも頑張ったな、ご苦労様。なにか褒美を上げよう。何がいい…>
「…差別のない世界…人族なんて…」
<それは無理だよ…やったらほとんどの人族いなくなるよ?…ふむ。それもいいかな?
俺よりミツルに頼んだ方がいいぞ。それにしても欲が無いなぁ君たち。不老不死とか、金銀財宝とか?…そうだね…神金でどう?君に神剣を授けよう。君の友に打ってもらうがいい。では!しーゆー>
「お!お待ちください!私は…」
”ぴし”っと音のするような神気!
<…あまり、彼らを利用するな。人間。特にお前だ。手痛いしっぺ返しにあうぞ。お前たちがどうなろうと知らんし、興味もないわ!>
すうっと、辺りに満ちていた神気が消える…
「あ、あう…あう…あ…」
「姫…」
その時天に再び神気が満ちる…
”かっ!”
辺り一面。爆発したように光に満ちる。
天空の、子供達が消えたあたりと、離れを結ぶ直線状に光の柱ができた。
”ずぅぐおおおおおおおごぉ”
すべてを浄化する神の怒り、神の慈悲、無能な者たちへの罰、子供たちへの祝福…真の神の力!…
光が収まるとそこには何もなかった。なにも。白い砂漠のようになっていた。
「さっきのが…」
「ああ、トワ君に言ってたろ、鑑定に神様?がコメってるって…見ててくれたんだなぁ…」
二人で正座し祈りをささげる
「これからも頑張って生きていきまっする!みててちょんまげ!」
と腕のしょぼい力こぶをつくる。
「…お?おっさん?」
「なんか、こんなノリじゃなかった?」
「サイドチェストのがよかったよ?」
「違いない」”っふふふははは。”
こっちは談笑なのだが…あちらは大変だ。特に神気を…怒りを向けられた姫様は…
「ああ…あう…あ、あああぅ」
上も下も大洪水だ…ありゃりゃ美人が台無しだ。気が飛んじまってるな。
「姫様…ご無礼します。」
「ミッツ様何を…」
”ぱん!”
姫様の頬を張る!
…瞳にゆっくり力が戻り、焦点が合う。
「…み、ミッツ殿?わ、わ、たしは…私は…」
「気が付かれましたか?少々手荒でしたが…大丈夫で?」
「あ、ああ、すまない…と、とり乱した。少々下がる…後程…」
足元も覚束ないので、近習に抱えられるように去っていった…。
「ミッツ殿、先ほどの声の主は…いや、解かっている、解かっているのだが…」
「ええ、神と呼ばれる存在でしょう…ちょいと軽いが。でも、この場所を御覧なさい…我々でもできませんよ…。奇跡でしょう…。」
綺麗な…塩の結晶の様な純白の砂に置き換えられた、離れのあった場所…
「ええ…しかも彼の存在は、私たちの存在を許していない…」
「そのように感じましたね…あなた方の言う神、ゼフィラス神?ゼクス神でしたか?おそらくゼクス神は、もうこの世界には存在または、介在していないのでしょう…彼の神が管理…いや、放置と言ってもいいかもしれません…」
「私たちは…神敵なのでしょうか…」
「解りません…解りませんが、加護はないのは確かでしょうね。前の世界も魂の循環がなされてるという考えがありました。もちろん、私の世界では”みえない””感じない”ので半信半疑でしたが…こちらの世界は確かに存在する。先ほどの子供たちのように…その循環を妨げるもの。理不尽に命を奪いその魂を穢すもの…許されるものでは無いと思いますよ。」
「ああ…あ、」
「たぶん、城外にも目撃されたでしょう…教会の連中、聖国?が”奇跡の場所”とか”聖地”とか騒ぐと思いますが、関わらせない方が良いとおもいます。」
「…心得た…」
「さて、一休みして帰るとするかぁ、トワ君!」
「ああ。」
「姫が会いたいと思 「彼の神の言葉…お忘れなきよう…私たちには”過保護”のようですから…お互いこれ以上関わらない方がよいと思います。前にも同じようなことは言ったんですけどね。」 …。」
「…そうですね。私から説明しておこう。これが報酬…お言葉に甘えて100枚は頂いた。こちらがマジックバッグだ。所有する中では一番なのだが…上の下くらいの容積しかないが…」
「結構ですよそれで。頂きます。どうでした?美味しそうにほおばる子供たち…少しは心の救いになったのでは?」
「…いや…だが、少しでも、少しでもあの子たちの心に安らぎを与えることができたのなら…できたのなら…」
泣き崩れるテクス殿…ホント人変わっちゃったなぁ。まぁ。それだけのことだよなぁ。
バッグと報酬をもらって宿に向かう。道すがら
「おいら達死にかけるそうだぞ!注意しような!」
「ネタバレとか言ってたものな…俺らの世界の神様とか?前任者が不正こいて更迭、着任したがつまらん世界って。」
「ありえるな!しかも、ファンタジー大好き!だが人間が好き勝手やってる…激怒!とか?」
「モフラーだったり?」
「ありえる!」
「…おっさんが神に昇華したんじゃね?で、時空を超えて俯瞰してるとか…」
「かもよ~それだといいなぁ!神だぞ神!」
「やっぱ、違うわ…」
「なぜに?」
「おっさん、煩悩の塊じゃん。」
…おい。
「…さぁ、帰るかぁ。子供たちがまっている!」
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




