閑話 かばんやさん 1
いらっしゃいませ~50話です。なんだかんだでお付き合いありがとうございます。閑話2話
「かばんやさん 刹那」5年目。
私はミーティア。もともとは鍛冶ギルドの職員だったのだけど、【かばんやさん 刹那】発足と同時に出向、そのままセツナさんの下について仕事をしてる独身のドワーフの一応、女の子。
セツナさんは見た目、若い…幼いのですが、なんとも言い難い雰囲気をもった人族の女性です。
中身はかなりの年寄り?そうそう、弟?のトワ様が良くロりばばぁと言ってましたが…今、どうしているのでしょうか…
「セツナ様、また”工房ラルフ”から、加入申請がきてますが?」
「放っておきなさいな。あそこは最初、”自分の名を売りたい。俺が代表になら参加する”って諸先輩方を前に啖呵をきったのよ。人族至上主義もあそこまでいけば大したものだわ。今後無視してちょうだいな。」
「…はい。わかりました。」
この物言い。おそれるものは何も無し!
「基本、申請があっても増やす気はありません。そのことをギルドを通じて発表しておいてくださいな。」
即断即決…しびれます!
「はい。解りました本日中に通達しておきます。」
「有名になってから寄ってくようなところは信用できないわ。頼んだわよ~」
”トントン”『総括、商業ギルドの王都ギルド長がお見えです。』
「ふ~ん…入ってもらって。」
「いやぁ~総括、久しぶりだなね~お邪魔するよ」
…ギト脂のデブオヤジ。紳士気取りのおっさんです…同じ空気吸うの嫌だわぁ…
「いらっしゃい。で、王都のギルド長がわざわざ?窓口はマシュー女史と聞いていますが?」
「今までも書面で何度か送ったんだけどね。マシューには任せられんと思ってなぁ。早速だが、もう少し数を増やしてもらおうかとおもってね。」
このオジサマの書簡は全て自動で滅却されます…あしからず。
「そう…で、私どもに対する見返りは?」
「見返り?必要かねぇ。」
要望と見返りはセットでしょうが!
「…直売以外は全てお任せしてますでしょ。相当利益がでてると思いますが?それに一杯一杯なんですよ。生産量が。それに利益より品質勝負ですので。」
「その品質を少々落としたり、人を増やせば良いのではないかね?」
何言ってんだよ!うちは職人集団よ!
「…うちは”職人集団”ですので。お話はそれだけですの?では…」
「いい返事はもらえませんかぁ…では、受注生産製品も一枚かませてもらえないかなぁ。利率はいいでしょう?ねぇ?」
「…オーダーメイド?注文取り?とても複雑な注文よ?おたくの職員さんに出来て?こちらから人は出さないわよ。」
「心得てますとも。」
ここにお茶運ぶんですかぁ~誰かかわって!総括気が短いからそろそろ…
「お茶の用意ができました。」
「ありがと。で、要望が違う、説明になかった!とかのクレームに対応できて?最初だけじゃないのよ?途中何度も見せたり。造り直すのよ。その対応は?費用は?最悪、受け取り手のない商品は?落ちた信頼は?」
「それはお互い様ってことで?」
「お互い様?で、何をしてくれるんです?ギルドは?そうね、問題がおきた時に一件に付き商品代金の倍払ってくれるんでしたら考慮しましょう。」
吹っ掛けるわね…そういう商品は訳アリ商品としてお安く売ってるくせに…流石だわ!セツナ様!
「倍?横暴ではないかね。」
「あら、だって今まで堅実に築いてきた信用が落ちるんですもの。それくらい安いものだわ。ギルドだって信用第一でしょ?信用0のギルドなんて…プクス」
「…では、それはそちらの責任もあることであ「ないわよ。うちの製品は”今まで”何の問題もないんですもの。そこにあなたが介在して来ようとしてるのよ?むしろお金をもらいたいわ」…」
ごもっとも。
「…愚弄しおって…」
「はぁ?なにいってるのよ!もっとまともな話をもってきたら?少なくとも納得できるくらいな。」
「…くそ、小娘では話にならん!責任者をだせ!」
仮面バリバリ…本当にバカねぇ…
「だから私だって。笑」
「私はギルド長だぞ!貴族でもある!言うことを聞け!」
「貴族はパパでしょ?こっちだって自信もって造っているの。オーダーメイドだけじゃなく、一般のも同様。簡単に数を増やしたり、適当な人を入れることもできないの。自信!誠実をもってね。信用を扱うってそういうことよ。はぁ、わかったわ。商業ギルドの考えが。利益利益って。どうせ懐に入れるのでしょう?商人のくせに、製品を、お客様も大事にしない組織だって。もう話すことはないわ。お引き取りを」
「こ、小娘のくせに…後悔するぞ?」
定番ですね。鍛冶ギルドと手を切るつもりかしら?
「はいはい、忘れてます?私鍛冶師ギルドの代表次席、理事ですの。お帰りは、あ・ち・ら」
手をシッシッシ。
ぎゃぁぎゃぁ騒ぎ側近?達に引きずられて出ていく元紳士…それにしても短気すぎない?まったく。さすがセツナ様。この後きまって…
「ミディア、塩撒いておいて!念入りに!」…
「は~い」
やっぱね。なんのおまじないかしら?もしかして、呪い?
その日の内に正式書体、公文書の書式にて…
『ノリナ国、商業ギルドには今後品物は卸さない。品質維持、商品への考え方が弊社と大きく隔たりがあるために商品を預けられない。顧客と品質を守る点から、通商の一切を取りやめることとする。』
との旨が一方的に発表される。ついでに商業ギルドからの脱退も。まぁ、元々、鍛冶師ギルドで運営していたし…お付き合いで加入したようなもの。影響は…こちらには無し。
もちろん今日の議事録。滅却されてたと思われていたギルド長の要請の手紙の束。公正書に添付されて…これでギルドは文句ひとつ言えまい。
これに伴い、『国内については、直販のみとする』と同時に告知された。
その後の経過としては、特に売値に変化がない一般向け。物によっては手数料分安くなることや、通商都市には大抵、うちの支店があるため、すぐに受け入れられた。
一部の貴族が反発したが、商業ギルドからの賄賂や、王都の商業ギルドに借金がある者たちということが明るみに出て、早々に鎮火した。
そもそも、お貴族様はギルドで既製品など買わず、”王都本店”でオーダーだったので、反対勢力は汚職、借金まみれという不名誉な噂に加え、”本店”でオーダーもできないダメ貴族という風評まで流れた。もちろん、この時に反対に回った貴族は出入り禁止よ。出禁!セツナさんが黙ってるはずないものね。
店頭にデカデカと家名を晒したのはいい娯楽でしたわ。
なぜこれが大きな問題にならなかったというと、ほとんどが下級貴族であり、”ノリナ王都店”は、あのヴァ―トリー商会の大規模店舗のワンフロアーを借りて営業しているのでそうそう文句が上がらないから。
商業ギルドが独占していた分は、そのままヴァ―トリー商会で扱うことになったみたい。商業ギルドと同様、主に国外向けに販売されるそうだ。
「やってくれたわねぇ~セツナぁ。」
「あら、マシュー出てくるの遅すぎ。怠慢じゃなくて?散々報告はさせてもらってたわよ。貴女に。破り捨てたいくらいの無礼な書状や、議事録も提出して。これ以上私にどうしろと?」
「…わかっているわよ…私だってただ座っていただけじゃないのよ!何度グラマスに相談したか…なまじ、伯爵の3男坊ってことで資金と権力を傘にギルド内でおおきな顔してたのよね。あのアホ。」
「それが、問題でしょ。何か手柄があれば別だけど、どうせ汚点しかないんでしょう?さっさと切らなかったのが問題ね。まぁ、うちは手を切れたから良いけどぉ~」
ギトおやじだもんね。無礼だし。
「くっ、耳が痛いわ。そういった縁故みたいのがまだまだ多くてね。資金がある貴族だと…特にね。」
「今回の全体の”損失”埋められるの?そんなにお金ないわけ?そういった俗物は排斥しないことには先に進まないわね。ミーティアお茶おかわり。」
相変わらず辛辣ですこと。
「はい。ただいま。」
「補填できるわけないでしょ。実際、補填については算出中。全ての関係先いれたら凄い額になるわ…どうせ、”実家には関係ない、家を出ている。個人の裁量”ってことで、”首”に損失額の10%位の…今回は額が額だから、%は低くなるかも。その”見舞金”でお仕舞よ。」
あんなギト首いりません。受け取り拒否です!
「…うちで、ギルド買ってあげましょうか?ふふふふ。」
「冗談に聞こえないんですけど…」
「冗談よ~そんなのお荷物でしかないわ。いらないわ~」
「でしょうね!うちも打撃大だわ。うちだけでも流してくれない?」
「流通?」
「そう。」
「う~ん、今、反ギルドしてるし、何より、エルザ説得できれば良いよ?話してるし。」
「むぅ、ヴァ―トリー商会と関係あるのは知ってるけど、資金協力とかないわよね?」
「エルザの店がうちの一号店なのよ。店の半分に置かせてもらってね。その伝手で”王都本店”があるのよ。直ぐに王都の方で有名になっちゃったけど。王都で買えない買えない言ってるとき、普通にエルザのとこでは売ってたわよ。毎日売り切れ完売だったけどね。マシュー、貴女への借りを返すのに輸出分を回したけど…残念だわ~」
「ううう…腹立つ!それに、エルザかぁ、くそー」
「エルザにも借りあるしねぇ~」
「もういいわ!セツナ!今から飲みに行くわよ!貴女の店で奢りなさい!」
「あら、いいわね。エルザも呼ぶ?」
「おう!絡んでやる!」
「ふふふふふ」
何もトドメ刺さなくても…マシューさんごめんなさい…
もう一本あります。こっちが先。よろしく。




