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初級技能者の執行者【クラスメイトの皆はチート職業だが、俺は初期スキルのみで世界を救う!】  作者: 出無川 でむこ
第二章 荒れ狂う極寒の都市『スノーガーデン』編
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第41話 新しい目標を円滑に進めるためには自由が必要の話

月ノ城さんとの一件から、一カ月半が経とうとしていた。


その間、俺は雷嘉さんに修業の相手をしてもらっていた。

何故、雷嘉さんなのかって?


そりゃあ、一番教えるのが上手かったからだ。

なんせ、たった一カ月で俺をレベル30から80レベル台まで引き上げた人なのだから。

現在の俺は、もう少しで100レベル台へ突入しようとしていた。


……まぁ、ステータスは相変わらずゴミなんだけどな!!


カキィィンッ!!


森の中へ、甲高い剣戟が響き渡る。

美しい木々に囲まれた修業場で、俺と雷嘉さんの剣が幾度となくぶつかり合い、その度に火花を散らしていた。

気付けば、打ち合いを始めてから二時間。

一瞬たりとも気を抜けない濃密な時間が流れていた。


「ふぅ……今回はここまでです。」


雷嘉さんが静かに剣を納める。

その姿を見届けた瞬間、張り詰めていた緊張の糸が切れた。


「ぜぇ……ぜぇ……。

 あ、ありがとうございました……。」


肩で息をしながら、何とか礼だけは口にする。

そのまま体を支えきれず、俺はその場へ倒れ込むように寝転がった。


「はぁ……。」


流石に二時間ぶっ続けの打ち合いは堪える。

腕は鉛のように重く、足も思うように動かない。

正直、あと一分続いていたら負けていただろう。


「大丈夫ですか?」


雷嘉さんが心配そうに顔を覗き込んできた。


「だ、大丈夫です……。」


そう答えながら視線を向けた瞬間、無防備に揺れるスカートが目に入る。


「っ!」


慌てて顔を横へ逸らした。


……危ない危ない。


というか、もし見てしまったら、雷嘉さん本人じゃなく"別の誰か"に殺される気がする。

そんな正体不明の殺気に震えていると、雷嘉さんは何も気付いていない様子で、優しく微笑んだ。


「お疲れ様です、黒杉さん。あれから見違えるように強くなりましたね。」

「……そうですか?」

「はい。一カ月半前とは比べ物になりません。もう私も簡単には一本取れませんから。」

「いやいや、一本も取れてませんよ。」


思わず苦笑する。

実際、俺は一撃も当てられていない。


「それでも、こうして二時間打ち合えるようになったんです。十分すごいことですよ。」


そう言われると、少しだけ照れくさい。


……まぁ。


一カ月半前の俺だったら、十分も持たなかっただろうしな。


「まぁ、大体は新しいスキルのおかげなんだけどな。」

「それも黒杉さんの実力ですよ。」


そう、この一カ月間は使っていなかったスキルの練度をひたすら上げていた。

その結果、新たにいくつかのスキルを習得することができた。


まず一つ目が、


千手観音せんじゅかんのん


スキル『千手』から進化した上位スキルだ。

千手の効果をさらに向上させるだけでなく、戦闘そのものを効率化する効果まで付与された。

おかげで攻撃の隙が大幅に減り、以前よりもずっと戦いやすくなった。


二つ目が、


『千手魔法・無属性』


これは、今覚えている初級魔法を全て練度最大まで上げたことで習得した魔法だった。

もちろん、真っ先に疾嘉さんへ聞きに行った。


「千手魔法とか初めて見たの。それに、無属性魔法なんて聞いたこともないの。」


……とのこと。

嫌な予感しかしない。

一応、実際に使ってみたのだが――


「…………。」


発動しなかった。

探求の千里眼で調べても、


『これは無属性魔法です。』


としか表示されない。

説明になってねぇ!!

どうやら、今の俺ではまだ扱えない魔法らしい。


そして最後が、


『成長・Ⅲ』


これは、いつの間にかⅡからⅢへ進化していた。

能力自体は変わっていないので、説明は省略。


……便利な主人公特権である。


結局、俺の戦闘スタイルは今までと変わらない。

大量のスキルを組み合わせ、

低いステータスを強化魔法で補いながら戦う。

その積み重ねがあったからこそ、今では雷嘉さんと二時間打ち合えるようになった。


……まぁ、一本も取れてないけど。


「さて、ご飯を食べに行きましょう。」

「あぁ、いつもありがとうございます。」

「いえいえ。それでは、お先に失礼しますね。」


そう言うと、雷嘉さんは剣を収め、

次の瞬間にはその場から姿を消していた。

相変わらず、とんでもない速さだ。


……総重量二〇〇〇キロ近い装備を持っているのに。


しかも、あれで"走っている"だけなんだから恐ろしい。


「さて、俺も食堂へ行って飯でも食いますか!」


立ち上がると、寝転がっていたせいでコートには土が付いていた。

軽く土を払って修業場を後にしようとした、その時だった。


『(おーい、聞こえるか! 黒杉の旦那!)』


耳につけていたインカム型軌光石から、聞き慣れた声が響く。

声の主はハグレだった。


「どうした、ハグレ?」

『(実はな! 旦那の新しい武器が完成したんだ! 今からエンジニア室まで来てくれねぇか!)』

「っ!」


思わず表情が明るくなる。

一カ月半前、ファノンの協力を得て作り始めた新しい武器。

それが、ついに完成したらしい。


「もちろん行く!」


自分専用の武器だ。

楽しみじゃないわけがない。

俺は手にしていた『黒姫ノ紅』を頭上へ掲げる。


「クレナ。」


そう呟くと、『黒姫ノ紅』は淡い光を放ち、俺の隣へ一人の少女が姿を現した。


「お疲れ様、ご主人様。大丈夫?」

「あぁ、ハグレから連絡だ。新しい武器が完成したらしい。一緒に見に行こうぜ。」

「ほんと!? 早く向かいましょ!」


クレナは俺の手を掴むと、ぐいぐいと引っ張って急かしてくる。

武器の精霊であるクレナにとっても、新しい武器の完成は気になるのだろう。


……いや。


案外、ハグレに会えるのが嬉しいだけかもしれない。

普段はツンツンした態度を取っているくせに、意外と懐いているからな。


「早く早く!」

「あぁ、分かった分かった。」


俺は苦笑しながらクレナと顔を見合わせ、そのまま食堂へ向かう予定を変更し、エンジニア室へと足を向けた。


―――――――エンジニア室



「旦那! 待ってたぜ!!」

「おうよ。同じロマンを求める同志だろ? すぐに駆け付けるさ。」


俺とハグレは、いつものように軽く挨拶を交わす。

すると、その後ろからファノンがひょこっと姿を現した。


「ごしゅじーん!! 会いたかったのだー!」

「お、おいっ!」


ファノンは勢いよく俺の腹へ飛び込むように抱き着いてきた。


ゴッ!!


「ぐふっ……!」


小柄な体からは想像もできない勢いで頭がみぞおちに突き刺さる。

ここで気絶する訳にはいかない。

歯を食いしばり、何とか踏みとどまった。


「ひ、久しぶりだな……。と、とりあえず離れてくれ……苦しい……。」

「分かったのだー!」


素直にファノンは俺から離れる。

その様子を、ハグレは腕を組みながら微笑ましそうに眺めていた。


「ところで、新しい武器はどこだ?」

「そう焦るなって! 今持ってくるからよ!」

「おー! 持ってくるのだー!」


ファノンはハグレの口調を真似しながら、元気よく両手を上げる。


「おー! 持ってくるのだー!」

「ははっ、お前は本当に可愛いな。」


ハグレはそう言うと、ファノンの頭を優しく撫でた。


「えへへ~♪」


ファノンは気持ちよさそうに目を細め、耳のような髪束をぴこぴこと揺らしていた。

その様子を見たクレナは、少しだけ唇を尖らせた。


「……むぅ。」

「ん?」

「……別に。」


そう言ってぷいっと顔を背ける。


「クレナも十分可愛いぞ。」


俺が頭を軽く撫でると、


「~~~っ!!」


クレナは少しだけ顔を赤くしながら慌てて俺の手を振り払う。


「い、いきなり撫でないでよ!」

「悪い悪い。」


そう言いながらも、クレナの機嫌は少しだけ直ったようだった。

……まぁ。

親代わりみたいな存在が、目の前でよその子ばかり可愛がってたら、少しくらい拗ねるか。


「二人とも可愛い娘みたいなもんだ。」


ハグレは照れくさそうに頭を掻きながら奥の部屋へ入っていく。

一方のファノンは、自分が褒められたことがよほど嬉しかったのか、


「ふんすっ! ふんすっ!」


と誇らしげに鼻息を鳴らしながら胸を張っている。

……いや、お前が作った訳じゃないだろ。


いや、待て。


今回はファノンも手伝ってたんだったな。

しばらくして、ハグレは見慣れた黒いアタッシュケースを抱えながら戻ってきた。

カウンターの前へ静かに置くと、ゆっくりと留め具へ手を掛ける。


「さぁ、お披露目だ!」


ハグレはアタッシュケースの留め具を外し、ゆっくりと蓋を開ける。

中には、一振りの刀が静かに納められていた。


漆黒の刀身は鏡のように美しく磨き上げられ、刃紋は淡い蒼色を帯びている。

光を受ける度、その蒼い刃紋はまるで妖しく鳴いているかのように揺らめいていた。

黒い鞘には、一枚一枚丁寧に重ねられた鱗が刀を護るように装飾されている。

それはまるで、一匹の竜が刀へ宿っているかのようだった。


……いや。


この刀は、生きている。

鼓動を刻むように、微かな存在感が手を伸ばせと訴え掛けてくる。


「どうよ。」


ハグレは自慢げに腕を組み、ニヤリと笑う。


「間違いなく俺の最高傑作だ。それに今回はファノンの嬢ちゃんにも随分助けられたからな!」

「おかげなのだ!」


ファノンは両手を腰に当て、えっへんと胸を張る。


「ふふん♪」


その姿を見たクレナは少しだけ頬を膨らませながらも、小さく笑っていた。

俺はそっと刀を手に取る。

柄を握った瞬間、不思議な感覚が全身を駆け抜けた。

まるで、この刀が俺を選んだような。


軽く一振りする。


ヒュン――。


空気を裂く音が心地よく耳へ届く。


いや、違う。


俺が刀を振っているんじゃない。

刀が俺の動きへ寄り添ってくれている。

そんな錯覚さえ覚えた。


「ハグレ、ありがとう。間違いなく、お前は世界一の職人だ。」

「旦那にそう言われると照れるぜ!


ちなみに刀の名前は――異刀『鵺鳴龍やなぎだち』だ!」


「異刀『鵺鳴龍』……。」


俺はその名を静かに口にする。

まるで最初からそう呼ばれることが決まっていたかのように、不思議としっくりきた。

すると、ハグレは「そうだそうだ」と何かを思い出したように奥から別の物を持ってくる。


「おっと! これも渡さねぇとな!


ファノンの嬢ちゃんの毛と鱗が前より増えただろ?

せっかくだから、それを使って旦那のコートも新しく仕立て直しておいた!」

差し出されたのは、一見すると今まで着ていた黒いコートだった。

だが、袖へ手を通した瞬間、その違いを理解する。


「……軽い。」


以前よりも軽い。

それでいて、生地の奥から鼓動のような温もりが伝わってくる。

これが竜の生命力なのか。

それとも、正体不明と呼ばれるファノンの力なのか。

俺には分からない。


だが、一つだけ確かなことがある。

このコートも、間違いなく俺を守ってくれる。


「これも最高だ。本当にありがとう、ハグレ。」

「へへっ、まだまだ改良の余地はあるけどな!」


ハグレは照れくさそうに鼻の下を擦った。

その時だった。


コンコン。


部屋の扉がノックされ、ゆっくりと開く。


「ヨウイチ。」

「豚杉さん。」

「まてまてまてまて。」


振り向くと、アイリスと疾嘉さんが立っていた。

……あと、さりげなく罵倒するのやめてくれませんか?

え?それ固定なの????


「どうしたんだ?」

「ヨウイチ。疾嘉さんが次の任務について話があるんだって。」


次の任務か……。

新しい武器も防具も手に入れた。

まるで、このタイミングを待っていたかのようだ。

疾嘉さんは一歩前へ出ると、静かに口を開く。


「この前、黒杉さんが持ち帰ってきた黒い石……解析が終わったの。」

「本当か!」


どうやら、あの黒い石の正体が判明したらしい。

自然と皆の視線が疾嘉さんへ集まる。


「まず結論から話すの。」


疾嘉さんは一呼吸置いて続けた。


「ウサさんは救えるかどうかですねぇ……。」

「……。」

「結果から言うと――」


ゴクリ。

誰かが息を呑む音が聞こえた。


「はい、救えますねぇ。」


その瞬間、張り詰めていた空気が一気に緩む。


「……よかった。」


思わず小さく呟く。

月ノ城さんは……まだ救える。

その事実だけで、胸の奥に重くのしかかっていた不安が少しだけ軽くなった。


「ただ、その為には色々必要なんですねぇー」


「……と言いますと?」


すると、ここで疾嘉さんの表情が真剣なものへ変わる。


「はいー。


あの黒い石は元々、四大魔獣から生まれた『四淵石しえんせき』というものなのですよー。」


「四淵石……。」


初めて聞く名前だ。


「これは四大魔獣に召喚された魔物だけが体内へ埋め込まれる特殊な石なのですー。


……ですが、なぜウサさんが持っていたのかは、まだ分からないのですよ。」


俺達は黙って続きを待つ。


「ウサさんを救うには、その体内に埋め込まれた四淵石を破壊する必要があるのです。


ですが――ここからが問題なのですよ。」


「その問題とは?」

「四淵石は宿主の心臓へ根を張るように浸食する性質があります。


だから戦闘中、ウサさんが突然苦しみ始めたのも、その影響だった可能性が高いですねぇ。」

そう言われて、俺はあの時の光景を思い出した。

最後に月ノ城さんは、自分の胸を押さえて苦しそうな表情を浮かべていた。


……あそこに四淵石が埋め込まれているのか。


「なので普通に四淵石を壊してしまうと、心臓まで一緒に破壊してしまう危険があるのですよ。」

「だから特殊な方法でしか助けられない……ってことか。」

「その通りなのですー。」


部屋の空気が一気に重くなる。


「その救う方法とは?」


疾嘉さんは少し困ったように笑う。


「結構難しい方法になりますけど……聞きますかー?」


当然だ。

月ノ城さんには命を救われた。

俺の恩返しは、まだ終わっていない。

そして――まだ救える希望があるのなら。

俺は迷わず、その道を選ぶ。


「大丈夫です。教えてください」


俺は迷わず頷く。


すると、疾嘉さんは静かに話し始めた。


「じゃあ教えますねぇー。


まず黒杉さんには、四大魔獣と戦ってもらいますー。」


「……まぁ、それは元々の目的でもありますし。」


四大魔獣を倒す。

その覚悟は最初から決めていた。


「そして、その四大魔獣の媒体となる物を持ってきてほしいのですよー。」

「媒体……。」


なるほど。

それが四淵石を破壊するために必要な物という訳か。

……いや、冷静に考えて、四大魔獣からそんな物を持ち帰る時点で十分無茶なんだけど。

俺の命が保つかどうかも怪しい。


「そして――」


疾嘉さんは一度言葉を区切る。


「最後に、魔王の血を持ってきてほしいのですよー。」

「……え?」


一瞬、聞き間違えたかと思った。


「……マジで言ってんの?」


魔王って……あの魔王か?

確かウェズって名前だったはずだ。

フィルネル王国へ来た時、話だけは聞いたことがある。


『絶対に敵へ回してはいけない存在。』


そう言われるくらいには、とんでもない化け物らしい。


「はいー。サンクくんが撃ち込んだ弾には、ウサさんの血が付着していたのですよー。


それを解析した結果、四淵石には強力な呪いが付与されていることが分かったのです。」

疾嘉さんは淡々と続ける。


「その呪いを解除するには、魔王の血が必要なのですよー。」


なるほど……。

救える方法があるというのは、そういうことだったのか。

希望はある。だけど、その道は想像以上に険しい。

四大魔獣を倒し、その媒体を手に入れる。

さらに、魔王から血を譲ってもらう。

……どれ一つとして簡単な条件じゃない。


「どうします?」


部屋の空気が静まり返る。


クレナとアイリスは、不安そうな表情で俺を見つめていた。

ファノンは話を理解していないのか、少し首を傾げながら俺の背中へ隠れる。


「ごしゅじん……?」


その小さな声が聞こえた。


(普通なら……行かないだろうな。)


四大魔獣、そして魔王。

どちらも世界最強クラスの存在だ。

普通に考えれば、無謀だ。


命を落とす可能性だって十分ある。


だけど――


俺は諦めが悪いんだ。

どうせ、いつかは四大魔獣と戦わなきゃならない。

だったら、迷う理由なんてない。

救える命があるなら、俺はそっちを選ぶ。


「あぁ、やってやるさ。」


俺は全員を見渡し、力強く笑った。


「俺が全部救ってやる。」


四大魔獣も、月ノ城さんも、この世界も、そして――。


俺の復讐も


「ここで諦めてたまるもんか。」

「分かったなの……」


疾嘉さんは静かに目を閉じる。

そして姿勢を正し、足を揃え、両手を後ろで組んだ。


ゆっくりと目を開く。

先ほどまでの眠たげで気の抜けた瞳は消え、そこにあったのは鋭く研ぎ澄まされた眼差しだった。

その瞬間、部屋の空気が一変する。


思わず俺は背筋を伸ばいた。

アイリスもクレナも、ファノンでさえ何かを感じ取ったのか、大人しく姿勢を正している。

そこにいるのは、いつもの疾嘉さんではない。


フヴェズルング代理司令官――源城 疾嘉だった。


「隊員、黒杉 楊一、アイリス、黒姫ノ紅、ファノン。」


一人ひとりの名前を確認するように視線を向ける。


「私、フヴェズルング代理司令官・源城 疾嘉により、貴方たちをⅩⅢ課へ正式に任命する。」


静かな声だった。

だけど、その一言一言には圧倒されるほどの重みがあった。


ⅩⅢ課。


フヴェズルング最高戦力。

その名くらいは俺でも知っている。

突然の任命に戸惑う。

俺より強い人なんて、いくらでもいる。

アイリスやファノンなら分かる。

だけど、俺が?

頭の中には疑問ばかり浮かぶ。


……だが。


今、この場でそれを口にできる空気ではなかった。


「そして、次の任務を言い渡します。」


疾嘉さんは俺たち全員を見渡し、静かに告げる。


「四大魔獣の素材の回収。魔王の血の確保。そして――月ノ城 羽咲の再救出。」


部屋が静まり返る。

誰一人として言葉を発しない。


「出発は二週間後。」


数秒の沈黙。

そして、疾嘉さんはゆっくりと次の目的地を告げた。


「最初の目的地は――」


一呼吸置く。


「北の国。荒れ狂う極寒の雪の都市――『スノーガーデン』。」


その名を聞いた瞬間、不思議と胸が高鳴った。

待ち受けるのは、過酷な任務。


それでも――。


「……はい!」


俺は声を張るように返事した。


こうして俺たちは、新たな任務へと歩み始める。


舞台は北の国――


極寒の雪の都市『スノーガーデン』。



―――――フィルネル王国


「さて……行きますか。」


私は小さく息を吐き、旅支度を始める。

荷物は多くない。

必要最低限の武具と着替え、それだけだ。


「ミハエルさんには挨拶をしておかないとな。」


時計を見ると、まだ朝の六時。

私にしては珍しく早起きだ。


……まぁ、今日くらいは仕方ない。


今日からしばらく、このフィルネル王国を離れることになるのだから。


「目指すのは――雪の"聖"都市『スノーガーデン』」


噂では、一年中雪が降り積もる極寒の国。

どんな場所なのか、少しだけ楽しみでもあった。


「よし。」


忘れ物がないことを確認し、私は部屋を後にする。

まずはミハエルさんの店へ向かおう。

ちゃんと挨拶くらいはしておきたい。


そうして私は、新たな旅へと歩き出した。


皆様のおかげで無事、第2章突入しました!

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