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Ep.26 事態の急変

 その後、那岐と彼岸は暗部の寮ではなく、ホテルに泊まることにした。

 「ま、あーしは事情を知っている身として君の味方ではいるからね~」

 「……ありがとうございます。そういえば……血は大丈夫なんですか?」

 那岐はアマツキとの戦闘で彼岸がスキルを使っていた事を思い出した。すると彼岸は輸血パックをカバンから取り出して見せた。

 「保管してたやつ全部持ってきたから、大丈夫~」



 その頃、アマツキの死体が埋められた場所に、ある男が来ていた事は誰も知らなかった。



 翌日、まだ日も昇っていない早朝に、那岐と彼岸はJNCに向かった。

 「あーし達の説明を聞いてくれるかは分からないけど、こんな時間から行けば……まぁ、罠だとか待ち伏せはないと思うよ」


 彼岸はその瞬間すれ違ったある男に注意が行った。その表情は獲物を見極めるようなものであった。

 「……」

 「どうかしました?」

 突然歩みを止めた彼岸に那岐は尋ねるが、彼岸はすぐにいつもの穏やかな表情に戻り、駆け足で那岐に追いついた。

 「何でもないよ~」



 しかしJNC本部の前に置かれたある物を見て、二人は事態の深刻さに気付いた。

 「どうしてこれがここに……」

 そこには、ア(・)マ(・)ツ(・)キ(・)の(・)死(・)体(・)が(・)置(・)い(・)て(・)あ(・)っ(・)た(・)。しかも一緒に埋めた、アマツキを殺すのに使ったナイフも置いてあった。彼岸にとってもこれは想定外の事だった。


 「今からまた隠すのじゃ間に合わないなぁ……ナギ、何か処理に使えそうなスキルは?」

 那岐は一瞬、対象の時間の流れを速くする【原初より(クロノス・オーバー)】が頭に浮かんだが、

 (ダメだ……今の熟練度じゃ今からの処理じゃ間に合わない……)

 那岐は頭を横に振った。彼岸は周囲を見渡すと、

 「ひとまず中に入れよっかぁ。ここじゃあ一般人にも見られちゃう」


 アマツキの死体を中に入れた後、那岐は彼岸がずっと何かを考えているような顔をしていることに気づいた。

 「何か心当たりがあるんですか?」


 「ん?いや~、根拠もない、直感だよぉ?」

 彼岸はあまりその考えを重要視していないようだったが、那岐は

 「今は些細な事でも気にすべきでは?」

 そう言った。

 「あはは~……後輩に説教されちゃうなんて……まぁ、たしかにそうだね~

 ……じゃあ、一旦この件、預けていい?」


 「……先輩はどこへ?」


 「この死体をわざわざ掘り起こした人を懲らしめに行くんだよ~」

 そう言って彼岸はJNCの扉を開いた。そして何かを思い出したように振り返ると、一言那岐に言って走っていった。

 「”ほのか”でいーよ、あーし、夜灯(やともり) ほのか」

 「あっ、はい……」


 ほのかが出発したことを確認すると、那岐はオスドを呼び出した。

 「師匠、いますか」


 「なんじゃ?こんな時間に……ってアマツキの死体じゃと?!昨日埋めたんじゃなかったか?!」

 オスドは那岐が抱えるアマツキの死体に驚き、それをよく観察した。

 「はい、さっきここに来たら置かれていて。先輩が犯人らしき人物を追っています」


 「なるほどな。では那岐、お前はどうする」

 「話をしに行きます。局長に」

 那岐はJNCのエレベーターに乗った。目的地は最上階、局長室。


 エレベーターを出ると、目の前には局長室の扉があった。

 「!」

 那岐は扉の隙間から光が漏れている事に気付いた。

 (まさか、今ここに……)


 那岐は深呼吸をすると、扉をゆっくり開けた。

 「……よォ。お前さんが、オスドの弟子とやらか」

 局長室の奥に広がる一面の窓を背景に、一人の茶髪の大男が椅子に座っていた。オスドが那岐に警戒するように忠告した。

 「奴がJNC局長、大木葉 望(おおきば のぞみ)じゃ」


 「大木葉局長、私は――」

 那岐がそう言いかけた時、大木葉はそれを遮った。

 「いつ俺が自分の名前をお前さんに教えた?……オスドか。てことはお前さんの史刻はオスドか?」


 「……」

 那岐は大木葉の判断力に驚いたが、目的を忘れないよう口を開いた。

 「局長、アマツキは――」


 「分かってる。だが、いかんせん証拠がない」


 大木葉は立ち上がり、ある映像が映ったタブレットを那岐に渡した。そこにはアマツキと戦闘する那岐と彼岸が映っていた。

 「これはお前さん達がアマツキを殺した証拠にはなるが、お前さん達が何かしらの正義の下に戦った証拠にはならない」

 大木葉は圧をかけるように那岐を見下した。


 「局長はFrom Hellについての報告には目を通していただけていますか」

 那岐は怯むまいと、事情の説明を始めた。

 「あぁ。だが分かっていないことだらけだ。そういう連中が存在するとしか分かっていない。目的も分かっていなければ規模も分からない。そんな奴らなんか俺からすれば存在しねえも同義だ」


 「はい。しかし私はそれ以上の情報を持っています。それを報告書に書いている時にアマツキに襲われたのです」

 「そうか、話してみろ」


 那岐は大木葉に裂け目【妖精の森】での一件による五十嵐の事、廻甦者学園で沙羅学園長を刺したナナシと呼ばれた暗殺者、そして暗部の情報をFrom Hellに渡したFrom Hellのスパイであるアマツキの事を話した。

 大木葉は那岐の説明を聞き終えると、


 「はっはっは!!アマツキがFrom Hellのメンバーだと!?それは面白い!!


 ……で?」

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