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Ep.27 ナイスバレット

 「証拠がないって話をしてんだ。どれだけお前さんが自分の経験を語ったとしても、それが事実である証明ができていない」

 大木葉は高圧的な態度で那岐に詰め寄った。


 カンッ!


 その瞬間、大木葉は背中の二振りの刀を抜き、両手で那岐に斬りかかった。那岐はなんとか取り出した短剣で防いだ。が、大木葉は片手の刀を投げ、第二撃として拳を那岐の腹部に叩き込んだ。

 「!!!」

 その拳は那(・)岐(・)の(・)腹(・)部(・)を(・)貫(・)い(・)て(・)い(・)た(・)。

 (ぐぅ……うっ……【黄泉津比良坂(よもつひらさか)】……!)

 那岐は自身の死を遠くした。が、痛みは依然として残っている。

 「全く……容赦、ないですね……」


 拳を引き抜いた大木葉は、苦しみながらも笑顔を見せる那岐に不気味さを感じながら少し引いた。

 「生命力おかしいだろ……ったく」

 (殺すつもりでやったが……何らかのスキルか?)


 大木葉は那岐が再起する前にもう一方の刀を回収し、那岐に走った。

 【導き五輪書、果すは剣豪】

 その瞬間、大木葉のスピードが上がった。那岐は咄嗟に後ろへ跳んだ。大木葉が振り下ろした刀は床に激突すると、床がひび割れ二メートル程の穴が開いた。


 「避けんなよォ?!」

 大木葉は連撃を続け、那岐に迫る。

 (【黄泉津比良坂(よもつひらさか)】がある以上、かすり傷でも与えれば私の勝ち。簡単な話だ)

 那岐は短剣を構えなおし、大木葉の隙を窺った。

 (あれは罠、あそこは無理……)


 「はぁぁ!!」

 大木葉が振りかぶったその時、那岐は身をかがめて大木葉の左下に潜り込んだ。そして短剣を大木葉の腰に当てようとした。が、大木葉は左手の刀を放し、拳を握って那岐にそれをぶつけた。


 那岐は横腹に拳を受けた。鈍い音が響き、その身体は壁に打ち付けられる。しかしその顔は、笑っていた。大木葉の腰には小さな切り傷があった。

 「【黄泉津比良(よもつひら)――」

 那岐がそう言いかけた時、大木葉は那岐に両手の刀を突き刺そうとした。那岐は咄嗟にスキルの発動を中断し、身体を捻ってなんとか避けた。


 「まだまだだ!!」

 大木葉は再び連撃を仕掛けた。那岐は避けるのが精一杯だったが、その時


 ピュン!!


 一つの弾丸が大木葉の頭を貫いた。

 「え?」



 少し前、JNC本部の最上階が見えるとあるビルの屋上に、ほのかが立っていた。

 「あいつなかなか足速いなぁ~……あーしの追跡から逃げ切るなんて。

 でもまぁ、ナギの手助けはできそうだねぇ?」


 ほのかは双眼鏡で、JNCの最上階で局長と対峙するナギを捉えた。そしてほのかは大きな黒いバッグを開けた。

 「やっぱり隠しアジトは職場にも隠しておくもんだね~

 教えてたら、きっと先に制圧されてこ(・)れ(・)も没収されてただろうなぁ~」

 そう言ってほのかが取り出したのはスナイパーライフルだった。

 「弾は……あるね。ナギは大丈夫かな~?」


 ほのかはスコープを覗き、那岐の状況を観察した。追い詰められている様子を見て、ほのかはゼロイン調整を始めた。

 「ここからあそこは……1200ヤードくらいかな?」


 そして那岐が窮地に陥っている事を見たほのかは、狙いを合わせ、引き金を引いた。そしてほのかはスマホを取り出した。



 那岐はスマホが鳴っている事に気付いた。

 「やぁナギ、どうやら説得は無理だったみたいだねぇ?」

 「じゃあ……今のは、ほのかが?」


 「そだよぉ~、どう?ナイスバレット!でしょぉ?」


 「ふふっ……そうですね。そういえば、これからどうするんですか?」

 那岐は局長を失った暗部及び協会がどうなるのか気になった。

 「そうだねぇ~……協会はわかんないけど、多分暗部はあーしに任されることになるんじゃないかなぁ?

 あーし、局長に次ぐ二番手だし」



 この後、ほのかは局長とアマツキの死を、任務攻略中に裂け目が閉じた事による行方不明と説明し、直後実際に閉まりかけの裂け目の中に二人を放り込んだ。



 「さぁ、今日から新体制の暗部の幕開けだよぉ!」

 ほのかは張り切って叫んだ。那岐もそれを穏やかな表情で見ていた。


 「それじゃあ、新体制初の大仕事、任せて大丈夫?」

 暗部長となった彼岸は、那岐に依頼書を渡した。

 「また暗記ですか……」

 那岐はその依頼書をなんとか覚えようと凝視した。が彼岸は那岐の肩をポンと叩いた。

 「大丈夫、これは処理しなくて大丈夫なやつだよぉ。だって……本来は協会の傘下、国立ギルドに届いたやつだから~」


 「え?」

 そう言って那岐は依頼書に目を通した。


 ”S級裂け目【蛹(さなぎ)の夢】攻略参加要請

 参加メンバー、八咫ギルドより天宮 日織

 英傑ギルドより姫路 零。他数十名は裂け目外で待機”


 「これって……」


 「そ、伊勢神宮上空に六十年前から残るS級裂け目の攻略組募集だよぉ。

 本来は国立ギルドに寄せられた要請なんだけどね、あそこはS級ハンター並みの人がいなくてね?それで協会、そして暗部に回って来たってわけ~

 てことで、国立ギルドからの派遣として参加してくれない?」


 那岐は依頼書にある裂け目のある場所を見て、答えた。

 (伊勢……天宮家がある場所……そしてその当主、天宮 日織もいる……今の私に必要な情報がこの依頼で……)

 「はい。受けます」


 彼岸はニッコリと微笑んで、

 「あっそうそう、伊勢までの移動費は出せないからね~お金なくて」


 「ぇ」

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