領主邸の宴
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領主邸では結果、手厚くもてなされた。
事前にカストルの冒険者ギルドから薬草の輸送が『魔法の絨毯』と『魔法収納袋』で行われ二人が来る旨はポルックスの冒険者ギルド経由で領主にも伝わっていた。
その迎えにやった騎士隊が広場に「リヴァイアサン」が鎮座しているのを見かけることは想定外だった事だが、それも私たちが来る前に先触れがあり知っていたという事だった。
流行り始めの病の特効薬の原料を運んできた異国の冒険者に丁寧なもてなしをしようという領主の気持ちは態度や言葉で伝わってきたが、それでも「こんな少女が?!」という不信感が顔から滲んでいた。
いつもの事ではあるのだが、やはり冒険者として信用を勝ち取るにはダブスとかチャドみたいに明らかな見た目というものが必要であろうか?
次からそんな幻影を纏ってみるか?
とりあえず、許可を得て家令に預けていた『魔法収納袋』から『幻影の杖:イリュージョンワンド』を出し、カストルから『魔法の絨毯』で飛び立ち空を飛ぶ幻影を披露する。
領主と家令、騎士隊の面々、使用人たちが声を上げて空の旅を楽しんでいる。そこからオアシスでの小休憩、中間地点の大きなオアシスの街の様子を経て、岩山の前に立ち上がる「リヴァイアサン」を上空から見る段階で全員が息を呑んでいるのが解る。
それまでのどこかのんびりした雰囲気から一転、緊張が走る。
そこから私の視点でゴーグルを嵌め、『火球:ファイヤーボール』を打ち込み、『魔法の絨毯』から飛び降りたところで何人もから悲鳴が上がる。風を切り迫りくる「リヴァイアサン」の頭部にどこからともなく出したバリスタの矢が貫通し、スピードを落とし何とか砂地に着地したところで振り向けば目の前に迫る砂嵐!というところでみんな手を前にして顔を守る格好だ。
「という感じで「リヴァイアサン」は討伐しました」
すぐには誰も答えられず、私は手元のお茶をゆっくり飲ませていただきます。
アレンも上から見ていたはずですが初見の人と同じように止まっています。
家令が一早く気を取り戻し、領主に耳打ちし領主が再起動します。
「す、素晴らしい! あの「リヴァイアサン」を一撃で!」
「あの手の巨大な魔物系は外部からの『火球:ファイヤーボール』などはダメージを与え辛いですし、地上からでは剣や槍などではまず急所に届きません。ですが巨体を誇る「リヴァイアサン」でも脳は一つです。的確にそこを撃てればバリスタの矢や電撃などで致命傷を与えることが出来ます。今回は『火球:ファイヤーボール』を砂に振動を与え気を逸らすとともに動きを止める役目で使用しています」
そこからは私が倒したと信用して貰えて薬草輸送のお礼、「リヴァイアサン」討伐の慰労が伝えられこちらからは砂上快速の修理、商会の設立、『共明石』の試験、「リヴァイアサン」の素材の売却割合、明日以降王都に向かう事などの話をさせて貰った。
領主は概ね協力することを約束してくれたが、商会設立はこの国では外国人では手続き上難しいだろうという話で既存の商会に出資する方が早いし良いだろうとアドバイスを貰った。
アレンと相談し今回薬草の輸送を依頼した商人は信用できてカストルとポルックスの両方それぞれに商会を持っているという事で、カストルの街を出る時に見送ってくれた心配顔の商人さんの顔を思い浮かべて納得した。
途中、「リヴァイアサン」の血抜きと分割と回収も無事終わり、この街で買い取って貰うものについては後日寄った時に清算する話を冒険者ギルドと詰め、現在は祝宴の最中である。
領主や騎士隊などの領主邸の面々、各ギルド長などの街の有力者などが床に敷いた厚手で柔らかい絨毯の上に何十人も座り、その間を薄絹の女性たちが給仕に立ちまわっている。
私は領主の隣の主賓の席にアレンと一緒に座っている。
広間から見える庭では見慣れぬ植物をバックに火が焚かれ仔羊の丸焼き、「リヴァイアサン」の頬肉ステーキなどが豪勢な火に炙られている。屋敷内の方々に水路が張り巡らされ、ところどころの噴水では涼し気な水音が聴こえてくる。天井の風の塔からは風が吹き込んで来ており、風はその下のプールに当たって隅々に涼しさを届けている。
また、手元の皿には「リヴァイアサン」のレバーの串焼き、「リヴァイアサン」肉とナッツの炊き込みご飯、岩石砂漠にすむ岩鶏の塩釜焼き、砂漠羊とドライフルーツの煮込み、砂漠では手に入り辛い新鮮野菜のサラダ、各種パン、ヨーグルト、ザクロやイチジクなどの冷たい果実、ラクダのミルク、ヤシ酒の蒸留酒、ザクロの果実酒などなどが山と積まれます。
どれも珍しくちょっとずつを美味しく頂いたが、「リヴァイアサン」の生き血と蜂蜜酒のカクテルに一瞬、杯が止まった。
宴には領主夫人や小さな子供たちも顔を出し、「リヴァイアサン」討伐や異国の話を強請って来るので再び、『幻影』を出しながらお話をします。男の子には『幻影の炎が出るおもちゃ剣』、女の子には『蝶々が飛ぶ幻影が出るオルゴール』、夫人にはエスクイリン王国特産の絹布、領主には『ソード+1』などをお渡ししたところとても喜ばれた。
途中でアレンがここの宴は朝まで続くことと、主賓が途中で抜けても問題ない事を教えてくれたので夫人や子供たちがお暇する時に便乗しました。
アレンは付き合いがあるのでまだ寝ないという事だったので、私は宛がわれた部屋で休むことにします。二人の召使が付いてくれて水浴びをさせてくれて、見慣れぬ薄絹の寝巻を着せてくれるので軽さや素材に見入ってしまい軽く回ってしまいました。
多分最上級の賓客用の部屋は外気の影響を受けにくい様に厚い石造りで窓は小さく、色鮮やかなステンドグラスや細かな透かし彫りが施され、昼間であればさぞ美しい事でしょう。
床が見えないほど厚手に織られたシルクや羊毛の絨毯が敷かれ、素足で歩くと足裏に心地ち良さが伝わってくる。
天蓋付きの寝台には細かい網目のシルクで作られた布が張られ、部屋の隅で焚かれている虫よけのお香と相まって虫対策も十分なようだ。
翌日、改めて顔色の悪いアレンと平気な顔の領主、家令と打ち合わせし領主直筆の紹介状を頂き、帰りまでに返礼の品を用意しておくので必ず寄る様に念を押され、子供たちの見送りで『魔法の絨毯』に乗り込みポルックスを後にした。
更新頻度は不定期です。




