カピトリン王国の王都へ
ブックマーク、評価、誤字報告 ありがとうございます。
今回で第二章終了になります。
次回は少し開けて再開します。
岩石砂漠の上空をポルックスから伸びる街道を眺めながら飛んでゆく。街道と言っても馬車の轍が重なっただけだが、それでも日々足跡が消えてゆく砂の上とは違って何年も何十年も馬車が通った跡と偶に見かける隊商の列で人間の営みを感じることが出来る。
今は『御霊のランプ』のシャッターも開けてアレンの手前、数日閉じこもっていたパットも青白い人型の塊で隣に座っている。
黙って『御霊のランプ』の中でじっとしていることも平気だとは言っていたが、シャッターを開ければ外に出て私とおしゃべりしてくれるので、一人が好きだという事でもない様だ。
「一日ほど予定より遅れてしまっていますね? 多分二時間くらいでカピトリン王国の王都には着くと思いますが」
「こちらは急ぐわけでもないから構わないが、メリッサの方は店があるから余りゆっくりとはしていられないな」
「そうですね。こないだも一週間ほど閉めていたばかりなので」
「まぁ、ほどほどに急いで、だが焦らず行こう」
「はい」
岩と荒野の景色がだんだんと緑が増えそのうち深い緑に変わってきます。街道もしっかりとした道に変わり、人々の往来も増えて来たので高度を上げて気が付かれないようにします。
偶に森の中に大き目の街を見ながら、緑が増えてきたことにより隼や小鳥などの鳥たちも見かけるようになり、砂漠との違いを実感します。灼熱の暑さも段々と弱まり、空気に湿気が混ざって来て肌荒れの心配が無くなってきます。
途中、街の一つに市税を払わず降り立ち、ここの国風の冒険者衣装を調達します。
通気性が高く汗を吸い取ってくれる麻製のチュニック、薄手の革製のズボン、フード付のケープなどを新調しておきます。全体的に森の中で目立たない緑色の色調のものが多いですね。なお体温を適温に保ってくれる『調温の旅装』は着心地が良かったのでチュニックの下に着ています。
『砂除けの風霊』は魔法のネックレスで砂漠の細かい砂が服の隙間や靴の中に入り込むのを防いでくれる仕様でしたが、小さい虫などの侵入を防ぐ魔法陣に書き換えて『虫除けの風霊』に改良しました。多分10㎝くらいまでの蚤やシラミ、蚊、ハエ、ムカデなどには効果があると思います。あれ? これって小麦などの倉庫で需要高い気がしますね。帰ったら魔法小物工房の方々と検討しましょう。
なお、革製のブーツは以前から使用している防水と防湿、防滑、防臭・抗菌、静音、硬化ソール使用のものを履いています。足元はやっぱり履き慣れたものが一番ですね。
そして視界に森林の中に城壁で囲まれいくつもの聳える塔が立つ街が見えてきました。建物の外壁は材木の茶色で屋根の空色の青い瓦は何か釉薬を塗って作っているのでしょうか? 他では見ない鮮やかな青です。緑の背景の中に現れた一点の青色の街は空を切り取った様にも見えます。
カピトリン王国は300年前にアヴェンタイン帝国カンタブリア朝が消滅、滅亡した後、侯爵の領地だったものが国となったものです。
王都は深い森の中にあり国土の半分は森林地帯、残りは岩石砂漠となっている。ちなみにポルックスとカストルの間の砂砂漠地帯はどちらの国にも属していない。
北の山脈から流れる豊富な水源が幾枝にも広がって木々を潤し深い森を作っている。森林地帯と岩石砂漠地帯との間の僅かな地帯を穀倉地帯としているらしいが、食料の多くを森の恵みに頼っているらしい。
王立図書館の資料によれば国の規模、人口、食糧生産能力的には我がエスクイリン王国の三分の一ほどだそうである。
我々の目的地のグリアハーゲン遺跡は王都から数日の所にあるそうだが詳しい場所は解らない。王都で情報収集するべく私は王都近くの小さな町の近くに降り立ち王都へ向かう荷馬車に乗せて貰った。お礼にシナモン、ナツメグ、クローブなどのスパイスを効かせた薄焼きのカリッとしたクッキーを何枚か渡した。とても喜んでくれて一枚食べた残りは懐に仕舞って奥さんと子供に持って帰ると言っていたので追加でもう何枚か渡しておいた。
城門ではポルックスの領主の紹介状を見せて入市税をちゃんと払って何の問題もなく通して貰った。やはり現地の貴族の伝手は信用が違う。遠く離れた国の冒険者証や商人ギルド証では詰問にあっていたところだろう。
荷馬車の親父さんに別れを告げて紹介して貰った宿屋に向かう。
街中は主な道は石畳になっているようだが脇道はまだまだ土の様だ。木造の建物が多く、大体は三階建てで大きな建物は少ない。道行く人々に活気はあり、鳥や小動物の肉、果実や木の実を売っている屋台がそこかしこに店を広げている。
紹介された「三匹の小狼」亭はこじんまりとした店ではあったが清潔そうで「三匹の小狼」の突き出し看板はちょっとかわいく雰囲気がよろしい。
中に入れば扉のベルの音が響き、自分の店をちょっと思い出す。
ほどなく現れた恰幅が良く、柔和な顔のご主人に一泊分の宿代を前払いしカギを受け取り、魔法使いギルドと冒険者ギルドの場所を聞きます。
ポルックスの領主さんから聞いた話ではカピトリン王国ではエスクイリン王国の魔法塔のようなものは無く、他の職業ギルドと同じ扱いで魔法使いギルドもあるという事でした。
宿の親父さんは私の風体を見てちょっと不思議そうな顔はしましたが、特に何か聞くこともなく場所を教えてくれました。
部屋に上がれば狭いながらもきれいに清掃されベッドには真っ新なシーツが敷いてあります。ベッドに腰を落として『御霊のランプ』のシャッターを開けます。
「確認ですがこの後は昼食を途中で済ませて魔法使いギルドに行く流れでよろしいですね?」
「ああ、といっても私が顔を出すわけにもいかないのだから。君にお任せさ」
「ふふ、でもここ数日ゆっくり話すことも出来なかったですし、街中で美味しそうなお酒が有ったら今晩用にちょっと買ってきますかね。この国はコケモモのシュナップスが特産らしいですよ」
「それは楽しみだ」
魔法使いギルドと冒険者ギルドはすぐ近くにあるという事なので早速出かけましょう。
さぁ、新しいダンジョンの探索の始まりです。




