PHASE-1935【とにかく硬い】
「死より立ち上がることで更なる力を得る――か。下らん冗談を言える胆力は褒めてやる。本来、死の淵に立たされている者は、ソレを与えた者に対して居竦むものなのだがな」
「なにが死の淵ですか! 実際に死んでいるのだから淵どころじゃないでしょうが!」
あ、俺の心中でのツッコミをまさかコクリコ自身が口にするなんてね。
「それほどの恐怖を植え付けられているのになぜ挑める?」
「私に何かあっても対処してくれるトールという存在を信じていましたからね」
信じてくれるのは嬉しいけども、
「だからって無茶はしないでくれよな」
「いつものことですが、無茶をしなければならない相手でしょう!」
「ンンン! まさに! 正論!」
今までもそうだったからな。
発展途上の俺たちにとって無茶は常。
「なので無茶をしつつ逃げの準備もしておきましょう」
「逃げる準備をさせるとでも?」
「そこはトールがやってくれますので」
「なるほど。信じるに値するだけの力を持っているのはこの目で見させてもらったからな。他の手段もあるということか」
「拙僧、多才なれば」
「ならばその多才な能力を俺が調べ尽くし、我らが軍の力として取り込んでくれる」
「やれるもんならやってみるといい! ここからはそれらの力も使わせてもらうからな」
「見せてみるがいい!」
手始めに、
「スタングレネード」
を顕現させてからの――投擲。
「なんだこの小筒は? 踏み潰しっ!?」
バンッって音と共にデカいのが両腕で顔を覆う。
「猪口才な! 下らん小細工を!」
と、怒号を発するヤツの頭上に、
「超重戦車マウス」
「は!?」
「押しつぶされるがいい!」
以前もやった使用用途からかけ離れた戦法。
「下らん!」
とか言いながら間違いなく巨大な鉄の塊を受け止めるということは出来ないと判断したのか回避に専念。
スタングレネードで視界以上に聴覚を奪われているのか、体をわずかにふらつかせながらも落下予測地点から離れたところでマウスが地面へと衝突。
ドズゥゥゥゥゥゥゥン! というコリドーガの一振りよりもおっかない音にて大地を震わせる。
「なんだこの化け物は!? お前達の前線にも似たのがいたようだが」
「質量の化け物だよ。なんと重さは180トン以上。わかりにくい例えだと標準的MSの3、4機分!」
「モ、モビ? 本当に訳の分からぬ事をぐぅっ!?」
五感の二つが弱っているところにコクリコからのファイヤーボールがこれまた頭に叩き込まれる。
でもって追加のスタングレネードを炎に包まれたコリドーガの手前に投げてやる。
炎を振り払ったところで再びの爆発。
「小賢しいことこの上ないな!」
なんて言いながらも頭上に気をつけているところに向かって、
「ポーカーショット!」
「こっ……の」
三発目は二発目と同じ位置。
腹部を押さえれば今まで以上に足を後方へと下げる。
良い感じだ!
四天王相手でも間違いなく俺とコクリコの攻撃は通用する。
メッサーラとギギンにはあしらわれるような感じだったけどもコリドーガには通用する。
コクリコの存在がでかい。
火力の高い魔法を叩き込んでくれるからそれで隙をつくことが出来る。
だがまあ、
「いけそうですかね」
俺の横に立てば聞いてくるので、
「無理だな。押してるようでいてまったく押してない」
「その様ですね」
決定打に欠ける。
マウスが直撃していれば、もしかしたらその時点で勝負はついていたかもしれないが、牽制には使えても強者相手に直撃させるにはそれなりの状況を作らないとならない。
強者に対して立ち回る余裕もなければ頭の回転も並なので好転する状況を作り出すこと自体が難しい。
今は目にしたことのないモノでの攻撃を受けて些か驚いているってだけ。
平静となってこっちの手段に対応し始めたらあっという間に向こうがイニシアチブを握ってくる。
なので目的通り、逃げることに徹する。
勝てると思い込み欲を搔いて攻めれば、まず間違いなく死ぬことになるからな。
「調子づかせるのはよくないようだな。主導権を渡してしまえば弱者であっても脅威になるというもの」
「弱者とは言ってくれますね!」
「そうだな。失言だった。お前達は十分に脅威に値する。だからこそ我らが軍は押し返されているのだからな」
素直に謝罪してくるね。
苛烈で残酷だが武人でもある。
こういった手合いは中々に油断ってのをしてくれないんだよな。
「ああいったのは逃がしてくれないですよね」
「だな。だが時間は結構、稼げたと思うんだけどな」
二人して頑張ったとは思うんですよ。
「確かに稼げたようですね」
「おうよ!」
「ほう、立て直してやってきたか」
こちらへと向かってくる砂塵。
先頭に位置を取るのは白銀の鎧兜と深紅の外套の猛者。
外套を靡かせながティタノモアに騎乗し、その横にはワーグ。
復活してくれたようだ。
手にする槍を大きく振り上げてから穂先を向ける相手は俺たちと対峙し、俺たちの攻撃を受けながらも俺たちを追い込んでくるコリドーガ。
次には一斉に矢がコリドーガへと降り注ぐ。
「大したものだな。お前達がいるというのに迷いなく矢を放ち、そして揃いも揃って俺の頭上に降り注がせるという絶技を見せてくる。こちらの騎兵では勝てんよな」
高順氏が指揮する騎馬隊を賞賛する中でも余裕は崩れない。
ただの矢では痛みを与えることなど無意味というのが分かっているようだし、俺たちもそれは分かっている。
頭上を見ている間に俺たちはただ後退するだけ。
肩越しにコリドーガを見れば降り注ぐ矢を何事もなく手で払いのける。
百を超える矢を受けたところで意にも介さない。
魔力の籠もった鎧を纏っているからというのもあるが、オレンジ色の鱗に覆われている部分に鏃が触れてもダメージは一切なし。
如何ともし難いほどに外側の防御力はチートが過ぎる。




