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1933/1937

PHASE-1933【相殺】

 死を与えられた恐怖を振り払うように立ち上がろうとする小さな体を支える。

 常に自信と強気に満ちているコクリコでも物理的に肝を冷やされればこういった姿になるか。

 そんな中でも立って反論できるのは気骨あるけど。


「震えはおさまったみたいだな。動けるか?」


「問題なしです! しかし――よくも私の一張羅を! あと突き刺す時に弱いのから先に狙う的な発言をしてましたね! 許せないですね肉岩石!」

 悔しそうに地団駄を踏む姿で腹の部分がはだける。

 穴が開いた部分は除細動器の有り得ない能力で塞がってはいるがローブまでは復活していない。

 なのでその部分は肌丸出し。

 もうちょい上だったら目のやり場に困っていたところだよ。


「貴様。いったい何をした」


「教えるわけがないだろう」


「さっきまで持っていた物が原因のようだな。もう一度、出してみるがいい」


「やなこった」


「ならば力尽くで出させてやろう。小娘は殺すが、貴様は両足を切り落として我々のところへと連れ帰る」


「なんて恐ろしいことを言うのか……」

 コイツは言ったことは絶対に実行してくるだろうからな。

 隙を見せれば間違いなく俺の両足を切り落としてくるだろうし、コクリコの命も確実に狩りにくる。


「ふざけたことを言ってくれますよ。私のことを追い込んだことは褒めてやりますが、次があるとは思わないことですね」


「そっちも何度も何度も蘇ることが出来ると思うなよ」


「その通りだぞコクリコ。無茶はするなよ。前に出すぎないでくれ」

 ここは後退しつつ騎兵たちと合流するべきだな。

 ロンゲルさん達やり手のことだ、高順氏に回復アイテムを使用して戦線復帰を整えているはず。

 でもって援護にも来てくれることだろうから、それまでは守勢に徹するのがいいだろう。

 情けないが二人で相手をするのは分不相応。

 コクリコはやられたことが許せないのか好戦的な思考になっているようだけど、除細動器にはクールタイムがある。

 蘇生後また直ぐに命を落とせば使用はできない。

 コリドーガは見た目とは違って速い。

 コクリコの背後に回り込んでの尻尾での一突きには、翼幻王ジズから賜った羽衣のオートガードすら追いつけなかったからな。

 なのでコクリコには無理はさせられない。というか、殺された相手に対して好戦的になっているのは凄いを通り越して怖えよ……。

 

 眼前の強敵。

 後方には多くの敵兵。

 こっちは二人。

 となれば今がその時だな。


「コクリコは俺が力を発動したら宙に浮いとけ」

 小声で伝えれば、


「分かりました」


「こそこそと作戦を立てるのはいいが、この状況を覆すことが出来るほどの力は――いや、不可思議な蘇生能力を有しているのだから油断はできんか」

 油断してくれていいんだけどな。

 お久しぶりの――、


「スプリームフォール!」


「ほう! 詠唱破棄スペルキャンセルによる大魔法か!」

 驚きよりは感心が勝っている。

 飛行能力を持っているから余裕があるようだ。

 発動位置は敵兵達の後方。

 宙空から突如として現れる巨大な滝。

 瀑布が地面へと叩きつけられれば一帯が水に支配される。

 平地で自分たちの背後から降り注いでくる大量の水となれば対応は難しいだろう。

 

 コクリコはアドンとサムソンに羽衣であるトヨウケビメを使用してちょっとした高さで飛行も可能。

 俺には水龍から賜った鱗があるので問題なし。

 敵兵が激流に襲われて混乱しているところを隙として後退させてもらう。

 コリドーガはイブメロイの兵がどうなろうとも気にしないだろうが、蹂躙王ベヘモト麾下の部隊は見捨てられないだろう。


「面倒な大魔法を詠唱もなしに発動するとはな。勇者なだけはある」

 前魔王であるリズベットのお陰なんだけどな。


「しかし――」


「ん?」


「お前だけが詠唱破棄による大魔法を使えるとは思わないことだな」

 

「そんなことは分かってるさ。経験しているからな」


「ならばその経験に俺も加えておけ」

 コリドーガが横へと手を伸ばせば地面から顕現するのはポールウェポン。

 デミタスがフランベルジュを出す時と同じモーション。

 四メートルを超える肉ダルマが諸手に握るのは先端がハンマーだけでなく、鳥の嘴のようなピックや穂先が備わっている複合型のウォーハンマー。

 確かスイスなんかでルツェルンハンマーって呼ばれるやつだな。

 ハルバートのお仲間みたいなポールウェポン。

 七メートルはありそうなポールウェポン・ルツェルンハンマー。

 ハンマー部分に最も信頼を寄せているようで、その部分が他の部分よりもデカい。

 打撃面はミートハンマーみたいな凹凸からなるもの。

 あれで殴られようものならオーガやトロールだって体の原型を留めることは出来ないだろう。

 まして人間なんかが見舞われればその場で全身ミンチ。


 凶悪なウォーハンマーに身構える俺とコクリコだったが、


「おん!?」

 コリドーガはこちらに背を向け諸手に握るウォーハンマーの先端を高らかに掲げると、


「グランドウェーブ」

 そう発しながら打撃面で地面を全力で叩く。

 次の瞬間、


「何じゃそりゃ!」

 叩きつけた地面が波のように大きくうねり出す。

 味方側へと向かってうねる大地が波紋のように広がっていく。

 激しくうねる大地が味方の兵達へと近づくところで、


「跳べ! 何のためのティタノモアか!」

 と、怒声を飛ばす。

 触発されたというよりは、恐怖から来る脊髄反射で怒号に合わせてティタノモアに乗っている面子が跳び上がる。


 次には、


「うぬぅ……」


「トールの大魔法を受けきりましたね」

 うねる大地がこちらへと迫ってくる瀑布からの激流を相殺。

 敵兵の中には両方の大魔法から逃げることが出来ずに激流と大地のうねりに飲み込まれたのもいたけども損害は軽微。

 激流も俺たちの足下に到着するころには踝あたりを濡らす程度のさざ波となっていた。

 久しぶりのスプリームフォールだったが大した効果は出せずに不発に終わり隙を作り出すこともできなかった……。



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