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1932/1937

PHASE-1932【起き上がりヘッドバット】

 炎の竜巻を口の中に突っ込んでから口内で無数の炎の刃に変化させることで内部にダメージを見舞ってやる。

 

 決定打! と、俺だけが思っているだけで、コリドーガは倒れることはない。

 顔と肩に足を置く俺を豪腕で振り払おうとするところを咄嗟に回避。

 拳圧だけでも強烈な打撃を思わせる。

 衝撃を受ければ回避は出来ても着地は失敗。

 受け身を取れないまま地面に背中を叩きつけ、咳き込みながらも立ち上がることだけに意識を傾倒。

 矢庭に立ち上がってコリドーガを見る。

 痛みと苦しみはリジェネポーションのお陰で徐々に回復。

 その中で苦しそうに口を押さえて俺たちから距離を取る姿のコリドーガ。

 決着のための決定打とはならなかったけども効果有りだ。

 あれだけの強者を後退させることが出来るなんてね。


「トール! まだまだ相手は動けますよ!」

 ここで一気に仕留めるとコクリコが動き出す。

 ワンドの貴石を真っ赤に染めさせて次に放つのは、


「ポップフレア!」

 紅炎をうねらせる巨大な火球三発で再び頭部を狙う。

 そして着弾。

 ファイヤーボールと違って着弾すれば連鎖爆発を起こして連続した熱と爆発ダメージを与え続ける。

 これに乗じて俺も動いて再び炎舞を――、


「やってくれるな小娘! 貴様の登場で中々に痛快な展開となったぞ!」

 存外、元気だな……。


「楽しんでくれてなによりですよ」


「強気なところも気に入った」


「私としては頭を吹き飛ばすつもりだったのでそこまで流暢に話されれば気分が悪いですね。口内はズタズタでしょうに」


「ハハハッ! 生意気なものだ!」


「コクリコ以上に俺が気分悪っての」

 炎舞を喰らって何であそこまで喋れるのか……。

 残火の力も混ざった技だから回復阻害の状況下にある。

 回復魔法やアイテムを使用しても意味がないのに普通に喋ってる……。


「やっぱ強えんだな……」


「そんな事は端から分かっていたことでしょう。なので倒れるまで攻撃を叩き込むだけです」

 言いつつ一人で突っ走るコクリコ。


「流石の俺でも今のような攻撃を何度も叩き込まれると耐えきれないな」


「素直な発言ですね」


「なので耐えなくてもいいように――」

 消えた。


「コクリコ後ろだ!」

 

「くぅ!」


「まずは逸って突出した一人。勝利を確実にするために弱い方から仕留めないとな」


「…………あ……」

 短い声を漏らすと同時に両腕を力なくだらりと垂らしながら小柄な体が宙に浮く……。

 サーバントストーンの力や羽衣の力ではなくコリドーガの攻撃で……。


「コクリコォォォォ!」

 腹部を貫くのはコリドーガの尻尾の先端。

 深く突き刺されていて呼びかけても反応はない……。


「死んではいるが、念入りにしよう」


「この肉ダルマがぁ!」


「ほう、今までにないくらいの殺意の籠もった太刀筋だ。だが遅い。しっかりと見ていろ」

 間合いへと入り込む前にコクリコの華奢な体にデカい拳が叩き込まれる。


「くそがっ!」

 勢いよく地面へと叩きつけられれば人間の体ではなくボールを思わせるようにバウンドして倒れ込む。

 尻尾で貫かれた時からコクリコが絶命していたのは分かっていただろうに。

 だというのに確実という名目でデカい拳を叩き込みやがって!

 無慈悲な攻撃は戦いとなれば当然。だが仲間に見舞われるとなればどうにも抑えられない怒りがあふれ出して攻撃を見舞ってやりたいという気持ちに支配されるが、どうやっても今の俺ではかなわない相手……。

 不甲斐ない自分とコリドーガに対する怒りから奥歯を食いしばれば口の中でプチリッ! 

 口内を噛んでしまい鉄の味が口内を支配する中でここでも素早く回復が始まる。

 回復時の温かな癒やしのお陰でもあるのか、怒りに支配されながらも冷静さをなんとか脳内にこびりつかせることが出来た。


 そのこびりつかせた冷静さのお陰で無意味な攻撃を実行するという感情をなんとか押し止め、愛刀二振りを鞘へと収めて手早くプレイギアを手にする。

 

 大丈夫! 心の中で強く念じる。

 以前も成功しているからこそ問題ない。

 

 視線をコリドーガから地面へと倒れるコクリコの方へと向けて駆けつつ、プレギアのディスプレイを手に向けながら――、


「除細動器!」

 と、発せば強い光が俺の手の中で輝く。

 次には以前、使用したパドルが二つ手の中に。

 両手に握ると同時にコクリコの頭上にはDの文字が浮かぶ。

 Deadを意味するDの文字の中に走る心電図波形。

 青文字からなるDの文字が時計回りに徐々に黒色に染まっていく。

 エルフの国でハウルーシに使用した時とまったく同じ状況。

 Dの文字が完全な黒に染まるまでに十秒。これを過ぎれば助けることは出来ない。

 まだ半分ある。

 

 パドル二つをすりあわせればキュィィィンとチャージ音。

 次にはピピッっとチャージ完了を知らせる音。


「戻ってこい!」

 コクリコの体にパドル二つを当てることで、


「…………おうぶっ!?」

 美少女からは聞きたくなかった残念な声とともに上半身を勢いよく起こすコクリコから思いっきりヘッドバットを喰らってしまう……。


「何だと!?」

 離れた位置で驚くコリドーガをよそに。


「良かった。でもって痛えよ……。なんてお礼だ……」

 安堵する俺を目にして悟ったのか。


「トールがいなければ私は若くして伝説になってしまっていたようですね。感謝します。――全く! これからも功績を積み上げていって偉大な伝説を残さないといけないというのに、それを妨害するとはとんだ肉岩石ですよ!」


「蘇生して早々にそんな事を言えるのがコクリコだよな……。何というか軽いぞ……」


「こうやって昂ぶった発言をしていないと震えが出てくるんですよ……」


「素直でよろしい」

 死んでたってことを理解すればそら怖くなるよな。

 支える体からは小刻みな震え。唇を見れば青ざめている。

 恐怖を刻まれたな。

 殺されたんだから当然か。

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