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PHASE-1500【打擲一撃】

 頼りになる前衛戦力に加えて、白いローブで全身を隠すようなスケルトンたちもリンは召還していた。

 骸骨の手が持つのは、白樺にも似た木材で作られているスタッフ。

 以前、世話になったスケルトンピルグリムだ。

 マジョリカとタイマンで戦った時、周囲に被害が出ないようにとリンが召喚してくれたな。

 プロテクションが展開可能な頼れる方々だ。

 

 ――ルイン、エルダー、ピルグリム。

 三クラスからなる前衛寄りの編制。


「凄いや」

 魔法陣より喚ばれたアンデッドの軍勢。

 この増援にミルモンは壮観だと明るい声。

 ギルドハウスの向かいにあるベルが拠点にしている建物で会ってはいても、こうやって軍勢として見る事はなかったもんな。

 

 召喚されたスケルトンを見渡す。

 召喚と同時に整然と隊列を組んでいるスケルトンの軍勢。

 ルインが十。

 エルダーが三十。

 ピルグリムが十。

 総勢――五十。

 この天空要塞の総兵力とぶつかるとなれば寡兵ではあるけども、


「現状なら十分だな」

 見上げつつ発する。

 ベル無双の前に多くが倒され、五百いた兵達もいまではこちらの倍程度。


「包囲――出来るかな?」

 嘲笑を浮かべて言ってみれば、


「貴様は勇者にあらじ!」


「失礼だな生徒会長。俺は勇者として頑張らせてもらっているよ」


「死者の軍勢を率いてなにが勇者か! 不浄! 不浄! 不浄! 不浄ぅっ!」

 連呼するやん。

 俺はともかくとして、


「好き勝手に言ってくれるわね。アンデッドなら不浄という考え方しか出来ない凝り固まった思考。程度が知れるわね」


「なんだと!」


「どんな種族であっても対等に接し、敬意を持てば仰ぎ見る。そういった事が出来る者と、最初から不浄としか決めつけられない者では器の大きさが違うって言ってんのよ。お馬鹿さん」


「貴様っ!」


「良いこと言うね。俺の事をそんな風に見てくれていて喜ばしい限りだ」


「じゃなきゃ協力なんてしないわよ」

 その発言を耳にするだけで、俺達との関係性が深くなっているのが伝わってくるよ。


「外の世界に出るようになったのは良い傾向だな。以前のような素直さが戻ってきているようだ」


「うっさいわね!」

 お怒りの生徒会長を余所に、照れ隠しとばかりに発言してきたルインの一体に蹴りを入れていた。

 やはりリンとルインやエルダー達は特別な繋がりがあるようだな。

 俺達には見せない照れる姿。その中にわずかに見える幼さ。

 俺達が対象だと五月蠅いわね――って言うけど、ルイン達にはうっさいわね――だからな。

 言葉づかいにも幼さが見えるね。


「こちらを馬鹿と謗ったと思えば蚊帳の外に置く。どれだけこちらを愚弄すればよいのだアンデッド共め!」


「貴方たちを倒すまではその行為を続けさせてもらおうかしら」

 嘲笑――というよりは、完全に悪者としか表現できない笑みで見上げるリン。

 ルイン達と話をしている時とは違い、いつもの不敵なものに戻っていた。

 

 そんな笑みを向けられる上にいる者達は、


「勇者一行は悪そのもの! 悪である以上、誅滅こそが正道! 我が向ける穂先に続け!」

 気炎万丈。

 生徒会長に続いて喊声を上げて上空からの急降下を再開。

 突撃と共に再び生徒会長がグラトニーを展開。

 無茶をしているというのは見ただけで分かる。


「死兵の如し」

 と、リンに蹴りを入れられていたスケルトンルインが発する。

 毎度、思うことだが。声帯のない骸骨がどうやって喋っているのかが謎だし、死者の兵が死兵って例えるもんだから、あんたらは真の意味での死兵じゃないか! と、ツッコミを入れたくなる俺がいる。


「各自、抜剣」

 ツッコむ気持ちをグッと抑えている中で、ルインの号令に規律ある動きから剣を抜く前衛のスケルトン達。


「マスリリース」

 指揮するルインの一体が先陣となって剣を振れば、呼応して放たれる三日月状の光刃。

 俺のマスリリースとは違って、この面々の光刃は赤黒いもの。

 纏う燐光も同色であり、禍々しくあるが力強くもある。


「無駄なんだよぉ!」

 生徒会長の声は初対面の時と違って冷静さはない。

 この辺りもラズヴァートに似てたりするね。

 術者の気迫が宿ったかのように、グラトニーが全てを吸収。


「ぐぅ!」

 苦しそうな声を上げながらも突っ込んでくる生徒会長とそれに続く者達。

 当初は包囲を考えていたようだが、彼我の差おおよそ20対1から一気に2対1にもなればそれも不可能。

 

 引くこともせずに、自らの責任感により背中を押されての決死の突撃は痛々しい。


「引く時宜を見誤ったな」

 立ち上がって見上げる先の存在にそう発するラズヴァートの声音は寂しさが混じっていた。

 声から理解できるのは、迫ってくる側が負けるということを悟ったというもの。


「気骨はあるが限界だな」

 と、ここでも先ほどのルインが一言。

 その声に合わせるようなタイミングでグラトニーが消える。


「窮したな」

 と、継げば、


「え!?」

 ルインが跳躍。

 全身を金属の鎧で覆っているというのに、金属音をたてることなく軽やかに跳ぶ。


「素晴らしいな」

 と、跳躍の技巧の高さにベルが感嘆しながらルインに続くので、俺も跳ぶ。


「貴公の失態は頼られるが故に、それに応えようとすること。悪くはないが、もっと周囲の者にもその重圧を分散させることだ。それを受け入れてくれるだけの絆を紡ぐことがまずは大事だな」

 ルインがそう言ったところで、


「アンデッドが絆などと口にするか!」

 十文字槍をルインへと向けつつの生徒会長だが、


「勝負にならねえよ」

 喘鳴による構えなんてすでに構えですらない。


「少しは周りに頼る事を覚えるのだな」


「浄化してやる!」

 肩で息をしながらの刺突。

 空中で立てば、迫る刺突を盾で受け止め、そのままいなす。

 姿勢を崩したところで、


「疲労困憊の貴公では我を浄化するなど不可能」

 言いつつ、振り下ろす剣は刃の部分ではなく――が彫られた腹部分。

 全力にて背中へと打ちつければ――、


「がぁ!?」

 叩かれた衝撃で背中の白い翼から羽根が舞い散る。

 ルインの横で倒れる生徒会長は、そのまま起き上がることなく沈黙。

 それを同じ目線の高さで立ち、俺とベルも見届ける。

 

 ――空中に立つことを可能としているのは、スケルトンピルグリム達によるプロテクションのお陰。

 ルインが跳躍し、十文字槍の間合いに入る前の絶妙なタイミングで障壁による足場を作り、着地と同時に槍の刺突に対応。

 手にした剣を振り、打擲一撃で決着。

 

 前衛、後衛とも無駄がなかった。


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