PHASE-1499【増援】
「突撃だ!」
グラトニーの加護がある以上、なんの心配もいらないとばかりに、発動者が先陣を切ってこちらへと突っ込んでくる。
上空から喊声を上げながらの急降下。
こちらにプレッシャーを与えながらの接近。
「頑張るわね~先頭の生真面目さん」
そういった状況でもあるが、プレッシャーを意に介することなくリンは余裕ある語り。
内容は褒めているが、リンの語調は呆れそのもの。
「なんでも一人で背負いたがるからああなるんだよ」
と、ラズヴァートが続く。
責任感が強すぎるところが自分とは反りが合わないとのこと。
「責任感が強すぎるのも問題だな」
「ああ」
「自らの責任感に背中を押されてしまっているんだよな」
「その通りだ」
「だからこそ引かないといけないところで引けなくなる。押されるままに前へと突き動かされる。加えて求心力が高いから、その無茶に続く者達も多い」
「ああ」
「結果、玉砕による全滅という道をたどる」
「よく分かっているな」
ベルと二人して話し込む。
グラトニーを前面に展開して果敢に上空から攻めてくる者達を見ながら。
「グラトニーって動かしながらも発動できるんだな」
「可能だけど、負担は大きいわよ」
と、リン。
本来はカウンターマジックとして使用するから、敵対者と発動者の中心辺りに顕現させて相手の魔法に対抗するってのがセオリー。
その定石を無視しているからこそ生徒会長の負担は大きいわけだ。
「まさかあの魔法で俺達を吸収とか……」
「ないない。あれはマナのみに反応するから」
「そうか」
だから生徒会長の後ろに続く連中も魔法を使用しないわけだ。
弓矢による攻撃をしながらの接近。
悉くをシャルナのプロテクションで弾きつつ、迎え撃つ。
「数ではこちらが上だ! 接近後、一気に翼包囲から削っていく!」
よくもまあ堂々と言うもんだ。
手の内を晒したところで大多数の包囲に対応は出来ないと考えてんのかな。
今までの突撃は悉くベルに阻止されたからな。包囲なら可能って考えなんだろうけども、それが可能なら前衛の連中がとっくに成し遂げてんだよね。
出来ていないから後衛による突撃になってるわけだし。
生徒会長――精神が窮しているよ。
ならばここは一気に戦意を削り取るべきだな。
「包囲も出来ないと分からせてやろう」
言いながらリンを一瞥。
俺の意図を理解してくれたようで、
「たまには大勢相手に少数ではなく、数で当たるというのも悪くないでしょうね」
俺がへっぽこ剣舞をする最中、中心となってくれたのはリンを除く女性陣とミルモン。
ラズヴァートを拘束しているから動かなかった。というのもあるんだろうけど、出番がきたとなれば、
「出てきなさい」
右足で地面を踏みつけるというだけの動作。
踏んだ場所を中心として魔法陣が展開される。
円形の魔法陣を中心に、四角形や六角形などからなる魔法陣が放射状に広がり、その広がりが止まったところで、陣全体が輝き出す。
強い輝きが収まれば、生徒会長と後衛担当だったストームトルーパー達が目を見開いてこちらを凝視。
兜で顔を隠している他の兵達も同様の表情になっていることだろう。
「おいおい……マジかよ……」
突如として自分の周囲に現れた者達にラズヴァートの声が上擦る。
「別段、俺達は少数ってわけじゃないんだよ」
と、返してやれば、嫌味で返す気迫も奪われたのか、苦笑いだけを俺に向けてきた。
決死の覚悟で上空からの突撃を仕掛けてきた生徒会長たちも翼に勢いがなくなり、その場に留まる。
自慢の大魔法グラトニーも維持するのが限界だったのか、力なく消えていく。
肩で息をしているところからするに、やはりかなりの負担だったようだな。
「なんという光景だ!」
グラトニーは力なく消滅したが、生徒会長の声は強い。
「勇者一行がアンデッドを引き連れるのか!」
継いで発せられるのは、こちらへの質問。
「凄いだろう」
と、自分の力じゃないけど、胸を張ってドヤッってみる。
「死者を戦いの場に参加させるという行為。しかもそれを勇者が行う。なんと不浄な!」
と、俺が思い描いていたリアクションは返ってこず、怒りに染まっただけの声が投げつけられた。
「不浄とは言ってくれるわね」
アンデッド=不浄という考え方にリンの眉尻が上がる。
一般的な感性だとアンデッドが恐怖の象徴なのは仕方ないからな。
俺も最初は怖かったからね。一緒に行動するようになって慣れてもきたけど。
「女。死霊魔術師か!」
「そうだけど」
お怒りの生徒会長に対して余裕のある返しをする――ってのがリンなんだけども、今回は不浄という発言を耳に入れているから、返事は機嫌の悪いものだった。
リン自体もアンデッドだからな……。
最強格のアルトラリッチの怒りを買うとは……。
生徒会長は手痛い目に遭うことだろうな。
「さて、喚び出されたはいいが、空からの脅威は今すぐにでもこちらに届きそうだ」
「そうなんですよ」
「久しいな」
「……どうも」
久しいと言ってくる存在。
頭の中をフル回転させるけども、皆が皆、同様の姿だから誰だか分からないんだよね……。
多分だけど、ブルホーン山の要塞戦時、俺と短い間だけど行動していた方だろう。
マスリリース習得時の方だと思う。
ゴロ太の護衛にも同種の方々が配置されているけど、その護衛をここに喚ぶなんて事はしないだろうからな。
――俺が目を向ける御仁の装備は煌めく黄金の兜と鎧。
流線型からなる防具に、染み一つ無い鮮やかな真紅のマントを羽織っている。
神聖な装備にも見えるが、それを纏っている者達の頭部は髑髏。
眼窩には目の代わりに緑光が灯っている。
リンが使役するスケルトンの前衛担当において最高位である、スケルトンルインだ。
この面子に加えて、メタリックグレーからなる流線型の防具を纏うエルダースケルトンの面々も参加。
ルインの下位ではあるがエルダーの実力もかなりのもの。
ルインの鮮やかなマントと違い、漆黒からなるマントは左肩だけにかけられたペリースと呼ばれるものだ。
エルダーの面々にはエルフの国で協力してもらったな。
どちらも強力な戦力だ。
相手もそれが分かっているからこそ、決死の覚悟により敢行した突撃を止めざるを得なかったんだろうし。




