美少女たちの対面
俺はどうしてもパーティに誘いたい奴がもう一人いた。
そいつの名前は磯崎紗耶香。俺の幼馴染だ。
思えばここ最近、俺は彼女と会話をしていない。多分、最後に会話を交わしたのは俺の家でゲームをしていたときに停電に見舞われ、色々と気まずいことになったあの夜以来だ。
これまでは何の躊躇いもなく話しかけられたはずなのに、校庭でお弁当を食べる彼女の後姿を見つけたとき、俺は少しだけ緊張した。
「紗耶香」
俺が背後から声を掛けると紗耶香は体をビクつかせた。が、それも束の間、俺に返事もせずに再び弁当に箸を伸ばす。
「おい、返事ぐらいしろよ……」
俺はそう言うと、彼女の前に回ると芝生に座って弁当を食べる紗耶香の目の前にしゃがみ込む。
すると、紗耶香は俺には視線を向けないまま体を動かすと再び俺に背を向けて弁当を食べ始める。
どうやらあくまで俺と会話をする気はないようだ。
が、俺も根気強く、再び紗耶香の前に回り込んでしゃがむと彼女の顔を覗き込む。
すると、紗耶香と目が合った。
が、紗耶香は俺と目が合った瞬間、驚いたように目を見開いて顔を赤くすると俺から顔を背けた。
が、しばらくすると顔を背けたまま目だけを俺に向けるとようやく口をひらいた。
「あら、柄木田くん。いたの?」
「おい、さすがにその発言には無理があるだろ。あと、俺を苗字で呼ぶのをやめろ……」
「…………」
紗耶香は何も答えずに弁当箱のたこさんウィンナーに箸を伸ばす。
が、
「あっ……」
掴み上げたところで箸の間からたこさんウィンナーが零れ落ちた。
俺は芝生に転がるたこさんウィンナーを見つめる。
「そう言えば二郎の分のお弁当を作るって話だけど……そのウィンナーがあなたの分のお弁当ってことでいいかしら?」
「いや、よくねえよ……」
どうやら紗耶香は相変わらずのようだ。
俺はウィンナーを拾い上げるとそれをお弁当箱を入れていたらしきポリ袋に放り込む。
そして、芝生の上に腰を下ろすと紗耶香は俺をちらっと見やった。
「ジャージのことなら中々返すタイミングがなかっただけよ。必要なら今晩にでも家まで届けに行くわ」
どうやら彼女は俺がジャージの返却の催促に来たとでも思っているらしい。
「そんなのはいつでもいいよ」
「そうはいかないわ。私があなたのジャージを返さない限り、私はあなたに対して負い目を感じて、つけ入る隙を作ることになってしまうわ……」
「お前は俺をなんだと思っているんだよ……」
「サイコパスよ」
「そ、そうか……」
紗耶香から凶悪犯罪者呼ばわりをされたところで俺は本題を切り出す。
俺は澄花のこととパーティに招待されていることを一通り紗耶香に話した。
「話を要約すると、あなたのお友達が主催する乱交パーティの数合わせに私も来てほしいってことね?」
「いや、どこをどうやって要約したんだよ……」
「あなたが私を強引に誘うパーティを要約したらそうなったの」
「だからお前は俺を何だと思ってるんだよ……」
俺はため息を吐くと話を進める。
「とにかく俺はお前にも超絶健全な発売記念パーティに来てほしいんだ。どうだ? お金もかからないらしいし悪い話じゃないだろ?」
そんな俺の言葉に紗耶香は少し悩むように黙り込んでいた。
が、俺の顔を見やると、
「行ってもいいわよ……」
と小さな声で返事をした。
※ ※ ※
時というのはあっという間に過ぎる。
気がつくと俺はパーティ当日を迎えていた。
「師匠、こっちですよ~!!」
待ち合わせ場所の港へと紗耶香と一緒にやって来ると先に到着していた澄花が大きく俺と紗耶香に手を振った。
「悪いな。待ったか?」
「私も今来たところです。え、え~と……」
と、そこで澄花は俺の隣の紗耶香を見やった。
「ああ、こいつは俺の幼馴染の磯崎紗耶香だ。何回か見たことあるだろ?」
「柄木田くんが勝手に幼馴染だと思い込んでいる磯崎です」
「いや、現に幼馴染なんだよ……」
「よろしくお願いします」
澄花はそう言って紗耶香に深々とお辞儀をした。
そこで俺はあたりを見渡す。
どうやらまだ藤谷は来ていないようだ。
「柄木田く~んっ!!」
が、直後、そんな声がしたので後ろを振り返るとそこにこっちへと向かってもの凄い勢いで駆けてくる藤谷の姿が見えた。
「ごめんね、遅くなっちゃった……」
藤谷は俺の前まで来ると立ち止まりはぁはぁと息を切らせながら膝に手を付いたのだが、
「やけにでかいキャリーケースだな……」
俺は藤谷が持っていた異様にでかいキャリーケースを見やる。
すると藤谷は何やらドキッとした顔をしてキャリーケースを自分の背後に隠すが、キャリーケースがでかすぎて何も隠れていない。
「な、なあ、藤谷……」
「な、何かな……」
「まさかとは思うけど……お友達を連れてきたりしていないよな?」
「え、ええ? な、何の話かな……」
「キャリーケースからハサミの先がちょっとはみ出ちゃってるぞ?」
そう言うと藤谷は「え? うそっ!?」と慌ててキャリーケースのファスナーを確認するが、すぐにそれが俺の嘘だとわかると何やらバツが悪そうに俺の顔を見やった。
わかりやすい奴だ……。
「な、なんていうかその……」
「まあ、言い訳ぐらいは聞いてやろう」
「わ、私は留守番しててねって言ったんだけど、どうしてもバルちゃんがついてくるって言うから……」
「いや、どこの世界に持ち主の旅行について来たがる着ぐるみがいるんだよ……」
まあとりあえずキャリーケースに収まっているしいいか……。
と、そこで俺は今度は澄花と紗耶香に藤谷の紹介をする。
「こいつは俺の同級生の藤谷美沙だ。紗耶香とは前に秘宝館で会ったよな?」
「う、うん……」
そう言って藤谷は紗耶香の方へと歩み寄る。
「磯崎さん……だったよね? 改めまして藤谷美沙っていいます。よろしくね」
そう言って藤谷が手を出すと紗耶香は少しだけ照れたように顔を赤くすると「よ、よろしく……」と藤谷と握手をした。
「で、その隣でアホ面を晒しているのは紗々木澄花だ。こいつも何度か見たことあるだろ?」
そう澄花を紹介すると藤谷はこくりと頷いた。
「紗々木澄花ですよろしくお願いします」
澄花がまた深々とお辞儀をすると藤谷もつられてお辞儀をした。
「ちなみにこいつがお前の大好きな澄木紗々先生だ」
と、そこで俺は澄花が藤谷の大好きな澄木先生だということを暴露する。
すると藤谷は何やら恥ずかしそうに顔を真っ赤にすると澄花を見やる。
「あ、あの……私、澄木先生の大ファンで原作も全部持っていて、先生のキャラクターを使った二次小説とかも書いていて……」
と、憧れの澄木先生を目の前にすっかり興奮する藤谷。
「あら、みんな揃ってるみたいね」
が、そんな藤谷の言葉を遮るようにどこからともなくそんな声が聞こえてきた。
俺はあたりを見渡す。すると港に停泊していた小型船の上になにやら見覚えのある女の姿が見えた。
「じゃあ、さっそく出発するから乗り込んで」
そう言って結城富美加は俺たちを手招きするので俺たちは次々と船へと乗り込んだ。




