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学園一の美少女が失恋したいと泣きついてくるので困っています……  作者: 田奈から来た使者
俺と彼女のハーレム作戦
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美少女と新たなる試練

六章突入です。

こんごともよろしくお願いします。

 俺と澄花が再び師弟関係となって約一か月が経った。


 外の空気は一段と冷たくなり、本格的に夏が終わって秋がやって来たのだと自覚することが多くなったような気がする。


 が、俺の前に座る少女、紗々木澄花には温度を司る神経のようなものは搭載されていないらしく、肌寒い風が吹き付ける中ニコニコと笑みを浮かべながらクレープを頬張っていた。


「師匠、私、幸せです~」


「ホントお前、いつも幸せだなっ!!」


 俺は相変わらず幸せのコスパの良い少女の顔を眺めながらため息を吐く。


 涙の師弟復活劇を演出した身としてこんなことを言うのは何だが、俺はこいつと再び師弟関係を結んだことを早くも後悔しつつあった。


 その理由は。


「なあ、俺たち昨日はどこで何をしていたっけ?」


「え? 昨日は確か……ここでクレープを食べていたと思います」


「じゃあ一昨日は?」


「え? 一昨日は確か……ここでクレープを食べていたと思います」


「じゃあその前は」


「え? その前は確か……ここでクレープを――」


「俺たち毎日クレープしか食ってねえじゃねえかっ!!」


 俺がそう叫ぶと澄花は「だって、クレープ美味しいですから……」と俯いた。


 師弟関係を復活させてから俺と澄花はこのクレープ屋にしか来ていない。いや、正確には一度だけ澄花の金で遊園地に行って丸一日ゴリラにリンゴを投げ続ける苦行があったが、それ以外はずっとここにいる。


 最近では「いつものやつ」というだけでクレープが出てくるようになってしまった……。


「なんというか俺たちの生活にはあまりにも張り合いがない気がする……」


「え? でも、私、毎日師匠と一緒にクレープが食べるの楽しいですよ?」


「お前は楽しいかもしれないけど、俺はさすがに飽きたんだよ」


 このままだとクレープ嫌いになっちまいそうだ……。


 多分、俺たちがこんな張り合いのない生活を送っているのは明確な目標を失っているからだ。


 いや、確かに澄花の失恋をプロデュースするという明確な目標はあるのだが、澄花の作品が完成してしまった以上、それはもはや有名無実化してしまっている。


 確かに俺は今回、澄花の小説を読んで、胸のドキドキや駆け引きだけが恋愛じゃないってことを知ったわけだけどいくらなんでもこれは緊張感がなさすぎる。


 何とかしなくては……。


 とは思うものの。


「師匠……」


「なんだよ」


「この苔可愛いと思いませんか?」


 澄花はそう言ってどこかで撮影したらしい苔の写真を俺に見せつけてくる。


「苔……だな」


「そうですよね。やっぱ苔ですよね」


 と、全く会話になっていない会話を続けているだけだ。


 本人は会話が成立していないことにも気づかずに苔の画像に見惚れている。


 が、そんな澄花の緩み切った表情は数秒後、凍り付くことになる。


「あら、もしかして澄木先生じゃない?」


 背後からそんな声が聞こえて振り返るとそこには何やら見覚えのある女がいた。


「なっ……」


 間違いない。彼女はド畜生編集者の結城富美加だ。


 結城富美加は相変わらずわざとらしい笑みを浮かべたまま俺と澄花の顔を交互に見つめた。


「あら、こんなところで出会うなんて奇遇ね」


 と、結城富美加はもはやテンプレのようなセリフを口にすると、こちらの返事を待たずに空いていた澄花の隣の椅子に腰を下ろした。


「はわわっ!!」


 澄花はクレープとスマホを掴んだまま石のように固まっていた。いや、よく見ると小刻みに震えているのが見える。


「澄木先生っ!! お久しぶりですね」


「…………」


 澄花は口まで固まってしまったようで何も答えない。


 が、そんなことを結城富美加は全く気にすることなく言葉を続ける。


「ねえ、新作のアイデアはできたかしら?」


「…………」


「その様子だとまだのようね」


「…………」


「ん? 新しいアイデアが思い浮かばなくて困ってるですって?」


 と、最終的には言ってもいない言葉を勝手に聞き取って返事をする始末だ。


 見かねた俺は「今日は何の用ですか?」と代わりに彼女に尋ねる。


「あら? 確かあなたは澄木先生の彼氏だったっけ?」


「いえ、違います」


「あら、そうなの? まあどっちでもいいわ」


 そう言うと結城富美加は持っていたカバンから何やら一枚紙を取り出して俺に渡した。


 そこには『澄木先生新作発売記念パーティin南の島』と書かれていた。


 なんじゃこりゃ……。


「これは私たち編集部から澄木先生へのささやかなご褒美企画よ」


「ご褒美企画?」


「ええ、この島にはうちの会社が持っている保養所があるんだけど、そこで澄木先生を囲んでパーティをやろうってことになったの。あ、もちろん、お金は経費で落とすから心配いらないわよ」


「パーティねえ……」


「南の島で先生に羽を伸ばしてもらって新作のアイデアでも練って貰えればって思っているの。もちろんお友達も呼んでいいわよ。どうかしら? 悪い話じゃないんじゃない?」


 何というか……怪しい。


 いや、この女の言葉は全てが胡散臭い。


 俺は澄花を見やった。が、澄花は凍り付いたまま動きそうにない。


 仕方がない。ここは俺が澄花に代って丁重にお断りするしかなさそうだ。


「あの……大変ありがたい話ではあるのですが……」


「そう、それじゃあ集合場所はまた追って連絡するわね」


「お、おい、待てっ!!」


 そう言って結城富美加は逃げるようにその場を立ち去ってしまった。


 どうやら俺たちには拒否権というものはないらしい。


 俺は澄花を見やる。


「し、師匠っ!? 今、ここに誰か来ませんでしたか?」


 澄花はようやく急速解凍され慌てて当たりを見渡したが、既に結城富美加の姿は見えなくなっていた……。


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