第40枚 <魔道具専門店>を雑に入れてみよう。
そこは、とある県にある妖怪屋敷。住宅街の片隅にひっそりとある。
そこに住まうゲーマー妖怪、サティスファクション都は、悩んでいた。
ついつい溜息も出る。
「はあ」
長し美し妖しの黒髪をきらめかせながら、サティスファクション都は悩んでいる。これ見よがしに。
いつものゲーム部屋である大きめ和室でするその様は、これ見よがしとはいえど、中々に絵になるものである。
そこに雑に問いかけるのは、サティスファクション都の友人、犬飼美咲だ。茶色の癖っ毛が目印の娘である。
「どうしたの、都ちゃん」
また溜息して、サティスファクション都は答える。
「ええ、それがね」
「うん」
「シャドバのデッキ案で悩んでいるのよ」
「わりに深刻そうに見えて、それか」
そういうのは美咲の友人、城茂美である。大型犬をの尻尾を思わせるポニーテールの娘である。
ふるふると首を横に振ってサティスファクション都は言う。
「この世にデッキ作り以上の難事は存在しないわよ、城」
「どこの世だよ、それは」
サティスファクション都は肩をすくめる。いつもだが、噛み合わない二者である。
と。
「サティスファクション。ワタクシはちょっと出てきますカラネ」
部屋の入口で、そう言うのはサティスファクション都の従者の妖怪、ニシワタリである。
「二人に変なことしないようにお願いしマスヨ」
「信用ないわねえ!」
「あると思ってるんデスカ。あなたはこの辺りでも指折りの危険妖怪デスヨ。自覚してクダサイ」
それだけ言うと、ニシワタリは部屋から出ていった。
「失礼しちゃうわね!」
と、サティスファクション都は憤るが、ニシワタリの言はそれなりに事実なので、美咲も茂美もあいまいに笑うだけである。
まあいいわ、とサティスファクション都は気持ちに区切りを入れると、サティスファクション都はバカの少年みたいな笑顔を作る。ぱっと見妖艶の方が似合う容姿なのに、と茂美は思うが、それは口には出さない。
さておき。
「ここはひとつ、あなたたちに私のデッキ案を話して、行けるかどうか判定してもらいましょう」
「はあ」
そういうことになった。
「で、どういうデッキを夢想しているんだ?」
茂美の問いに、サティスファクション都は座っていた座椅子から立ち上がり、ホワイトボードを召喚して、そこにキュイキュと書いていく。
で、それを読む。
「デッキ名はずばり《機械の国の魔道具屋さん》、よ!」
「妙にふわっとしたデッキ名だね!」
「美咲、それ褒てないぞ? 褒める所がないとはいえ」
「二人してナチュラルにディスるの止めてくれないかしらねえ!?」
こほん、と咳払い一ついれて、サティスファクション都は続ける。
「《機械の国の魔道具屋さん》! それは機械ウィッチに舞い降りた<魔道具専門店>による圧倒的なバーンダメージ! デッキを回してたら勝手に勝ってたが狙いよ!」
「無茶苦茶に虫のいいこと言っているんだが」
「<魔道具専門店>と言うと、この前のアディショナルで追加されたカードだったかな?」
サティスファクション都は頷く。
「<魔道具専門店>はウィッチのゴールドレア。7コストのアミュレットね。一応直接召喚の条件もあるけど、基本7コストを払ってポン置きして問題ないわね」
「確か、能力の方は、プレイ、カードを使うたびにランダムで相手リーダーかフォロワーに2点」
「それと、こちらのデッキにフォロワーがいなかったら、カードを出すたびにPP1回復、だったね」
茂美と美咲がきっちりとカードの内容を言うのをみて、サティスファクション都はうんうんと頷く。
「だいぶ濃く染まってきたわね、二人とも」
「それ、あんまり褒めてなくないか?」
心外そうな顔を、サティスファクション都はする。それにむっ、と茂美が反応し、一触即発の雰囲気に。
そこに、美咲が割って入る。
「わたしは、濃いって言われて嬉しかったよ?」
「……美咲がそういうなら」
「相変わらず美咲絡みはグズグズね、城」
さておき、とサティスファクション都は区切りを入れて、話を再開する。
「で、その<魔道具専門店>を、雑に《機械ウィッチ》にぶち込むのが、この《機械の国の魔道具屋さん》なのよ!」
「「……。……?」」
美咲と茂美がシンクロした動きで頭をひねるので、サティスファクション都は質問を促す。
「何か、得心しないところがあるみたいね?」
「そりゃあねえ。機械ウィッチにフォロワー入れないタイプあったっけ、とかアホなこと考えちゃったよ」
「《機械ウィッチ》に入れるとすると、PP回復の能力が使えないから、微妙じゃないかと思うんだが」
言われ、しかしサティスファクション都はふっふーん! と鼻高々である。
「そこにこだわるのが短慮の山田だわ。《機械ウィッチ》の要諦は何か、と言う点が重要よ?」
「《機械ウィッチ》って言うと、<マシンブックソーサラー>の効果で機械カードをフルに使って並べるデッキだよね?」
「そこよ。<マシンブックソーサラー>の効果。つまり機械カード使用時にPP1回復があるから、疑似的に<魔道具専門店>の効果がある。なので、フォローは出来る訳」
「成程な。だが、そうなると<マシンブックソーサラー>と<魔道具専門店>の二回、着地を綺麗に決めないといけないんじゃないか?」
「着地、つまり上手く置くというのはそこら辺は気にせず置いても大丈夫よ。たぶんきっと。きっとたぶん」
「やや怪しいが、まあいい。デッキの内容はどういう風にする予定なんだ?」
「基本的には、《機械ウィッチ》のそれね。要の<マシンブックソーサラー>や1コストバーンが出せる<蒼の反逆者・テトラ>は当然三枚。
それ以外の機械フォロワーも出来るだけ入れるわよ。
2コスト帯は地味に1コスト回復スペル<リペアモード>の供給要素な<メカゴブリン>。
これも地味に<リペアモード>供給要素の<ジェットウィッチ>。
ドロソとしてマジソを呼べる可能性のある<フロートボードマーセナリー>。
マジソ着地以後は超ドロソの<機械生命体>。
後はマジソや専門店が着地した後から超除去力の<機械魔導のゴーレム>。
後半になる程効果のある除去要素の<機械神>。
この辺りはもりっと三積したいわね」
「それに、<魔道具専門店>を三積みすると、残りは13枚か」
「4種類か5種類くらい入れられるね」
「そうね、ここからは匙加減。私は、<知恵の光>と<真実の狂信者>と<荒野の休息>を三枚積んで、後は<未知の求道者・クラーク>、<エレメンタル・マナ>を二枚ずつにしてるわね」
「何故そこで自然要素の<エレメンタル・マナ>と<荒野の休息>なの?」
「都会にだってうるおいは必要でしょ?」
「答えになってねえよ」
くす、とサティスファクション都は小さく笑う。
「本来なら、<カオスウィーザード>とか<マシンエンジェル>辺りを三積みするのが正道なんだけど、そこに違う要素を入れてみるというオリジナリティよ? と、待って待って。去ろうとしないで立ち上がらないで。ちゃんと意味はあるんだからあ!」
茂美はノリでついてきていた美咲に座るように促し、自分もまた座る。そして聞く。
「で、意味とは?」
「7コスト時に<魔道具専門店>を置いた後、動きが出来ない点を緩和する為に、0コスト<ナテラの大樹>を手に入れておきつつ、きっちり回復も、っていう狙いね。対症療法かもだけど、ちょっとの差が出る時っていうのはあるものよ?」
「成程ー」
「後、マジソ以前でドロソとして使うこともありね。基本低コストドロソだから、上手く使える時は使えるのよ」
感心する美咲と、やや胡散臭そうに見る茂美と。両者の反応にとくとくとするサティスファクション都。
「妙に楽しそうだね」
そう、茂美が眉を寄せつつ追及する。
「やっぱり、自分考案みたいなのって大変楽しいじゃない? それが上手く動けるかは重要だけど、こういうのを考案するだけで満足すらあるわね」
「それはそれでどうなのか、って気がするんだが。遊んでなのぼじゃないのか?」
「これはこれで遊んでいると思うけど?」
謎の平行線がそこに生まれかける。
「それより」
と、美咲が空気を読まずに切り出す。
「あたしとしては、結構いけるんじゃないかなと思うよ? 着地点に難があるかもだけど、フォローの案もちゃんとしているし」
茂美は首を横に振る。
「フォローの形がいまいちだと思うね、僕は。ちょっと素のドロー頼り過ぎるし、初手の引き直しでキープするカードの選択が難しいと思うね」
「そこは、少々運次第を許容するかどうか、だと思うな」
「なら、僕は許容しない方だな」
やいやい、と言いあう美咲と茂美を見て、サティスファクション都はまぶしく目を細める。
と、そこに。
「帰りマシタヨ、サティスファクション。やばいことしてねえデショウナ?」
ニシワタリが帰ってきた。
「お早いお帰りね、ニシワタリ」
「というか早過ぎないか? 15分くらいしか経ってないだろ」
「そもそも、何しに出かけてたの?」
「いちどきに話しかけるの止めてもらえマセンカネ。とりあえず、することはすぐデシタカラ、ちゃっと終わらせてきたんデスヨ。向こうも取り込み中みたいデシタノデ、すぐに帰って欲しかったみたいデスガ」
全く困った奴らだ、と言わんばかりに盛大に肩をすくめてみせるニシワタリ。そのニシワタリに、サティスファクション都は尋ねた。
「で、用向きは問題なかった訳ね?」
「傍点つきで一応デスガ」
「……なんで一応な上に傍点まで付くのよ」
「それだけ微妙に面倒だったんデスヨ!」
まさか里の者と会うとは、とニシワタリは言う。その声は酷く小さい。その台詞の前提を知らない美咲と茂美には聞こえず、知っているサティスファクション都には聞こえる、微妙な音量だ。
それで、サティスファクション都は成程と分かった顔を見せる。それを見て、美咲と茂美ははてな? となっているが、そこに説明しようとは、ニシワタリは思わない。わりと公言するには微妙な話だからだ。
それに言及する代わりに、ニシワタリはホワイトボードを見る。
「またサティスファクションが、微妙なデッキ案で遊んでたんデスカ」
「むっ、微妙とは何よ、微妙とは。<魔道具専門店>の使い方の一端でしょう?」
「そんな手を使うくらいなら、いっそ最初から<魔道具専門店>と地獄の底まで付き合うやつをつくりナサイヨ」
「なんだとぉ……。案があるなら言いなさいよぉ……」
「例えば、<天界の門>でコストを下げるのを狙うトカ」
「それもそれで5ターン目を凌ぐのが厳しいじゃない!」
「ハマれば、7コスト帯で倒せるから問題ないノデス」
「んな訳あるかあ!」
ぎゃあぎゃあ、と言える騒がしさ。何か、そこに目下の問題を先送りする何かを、美咲は感じるが、先送りにしているだけに今何か出来る事でもないんだろう。そうとも思うのであった。
アディショナルがあると、また色々と発展するので楽しいですが、やっぱまとめてでもいいよね……。と思いつつ、<魔道具専門店>とかお出しされると掌ころころしてしまうのでした。こういうの好き……。




