第41枚 結局絶傑シリーズって何だったんだよ会議
ここは、とある県のとある住宅街の一角。そこに異様を誇るが他の家の人からはあまり認知されていない、ゲーマー妖怪サティスファクション都の妖怪屋敷がある。
妖しの黒髪と、やる気のないジャージ姿のそれが、サティスファクション都である。ゲーム部屋としている和室を、やる気なくごろごろ前回りで転がっている。
「なんデスカ、サティスファクション。ただでさえ胡乱なあなたデス。奇怪な行動は慎んで欲しいデスネ」
「つまり、横回転!」
「転がるなと言っているんデス、ボケェ」
などとサティスファクション都と会話するのは、その従者のニシワタリである。ニシワタリは、言われてもまだ転がるサティスファクション都を止めて、姿勢を正し、えいやっ投げてゲーミングチェアに綺麗に座らせた。
「お見事!」
やんややんや、とサティスファクション都が囃したてるが、ニシワタリは渋面で言う。
「トイウカデスネ、最近ヤバイじゃなかったんデスカ、サティスファクション」
「だから、今は美咲たちはいないじゃない? しばらく来ないように言ったのもあるけど」
「もうちょっと打って出るとかの、直接行動があるからと、ワタクシ思っていたんデスガ」
「そういう話、シシデバルから来た?」
「来やがらねえから、苛立ちってるんデスヨ!」
そう言いつつ座り、そしてちゃぶ台の上の湯飲みを一息に開けるニシワタリ。
「そういうだけの苛立ちじゃない、と見るけどね、私は」
湯飲みにびきりひびが入る。かと思えば即それが治っていく。妖怪の持ち物らしい挙動である。
さておき。ニシワタリは苛立ちを隠すつもりもなくしたようで、明らかに怒りの入った口調で言う。
「そうじゃなけレバ、どうだって言うんデスカ、カの国の鬼姫」
うわ、ガチ切れじゃない。わざと私が嫌いな呼び名ぶっぱしてくるって相当じゃないの。
とは思っても口にはしないで、サティスファクション都は椅子の上でふんぞり返り、髪を悠然と広げてから答える。
「べっつにー」
「……っ!」
逆鱗に触れようかとしたところで、それは無駄だと言わんばかりの余裕を見せられ、ニシワタリは怒り心頭、をして逆に思考がクリアになった。
そして、クリアになれば、自分が馬鹿馬鹿しいことをしていると気づく。
「ふー」
溜息一つ。
「すみませんね、サティスファクション。血が上ってました」
「今も結構上ったままだとは思うけど、抑えられるなら何よりよ」
それよりも、とサティスファクション都は続ける。
「頭が冷えるまで、暇つぶしに付き合いなさい、ニシワタリ。一つ思いついたわ」
座った姿勢のまま、手を打つとベストな位置にやってくるホワイトボード。それに、サティスファクション都は板書していく。
「お題としては、<十禍絶傑>がローテ落ちする今しかするタイミングがない! ということで絶傑シリーズってなんだったんだろうと振り返ってみるわよ!」
「マジで誰得な話デスネ」
「得があるからするシリーズじゃないでしょ、これは!」
「シリーズ?」
「さておき! まずはどこから行ったらいいかしら!」
うーん頭を傾げ、傾げて、ニシワタリは言う。
「ニュートラルからで良いのデハ? シリーズは二つ合計でも絶傑スペル二つと使徒一つデシタシ」
「イグザグトリィ。じゃあ、まずは唯我の唯一の絶傑シリーズ、<唯我の一刀>ね。お前それだけかーい!」
テンション高いなあ、と思いつつも、それに乗る、ニシワタリ。
「流石の唯我、全体を見る事も出来ないデスガ、とりあえず5コスト除去、という基本に、進化で3コストが下がる、というノデ、使おうと思えば使える除去だった、っていう程度なのでいいノカ悪いノカ」
「分かんないから中央値。暫定5位!」
サティスファクション都はホワイトボードに付随する、記載できるマグネット板に唯我と書き、それを5位のところに設置した。
ニシワタリがそれを確認してから言う。
「ニュートラルはもう一つ、飢餓の絶傑シリーズが二枚デスネ」
「スペルの輝きは体5以上を輝きラインとして私たちに認識させた偉大なカードよね」
「そのラインのおかげで、日の目を見る見ないがてきめんに違ったのもいい思い出デス」
「使徒は?」
「輝きに比べると微妙に使いづらい印象デシタネ。3点バフが5コストはいかにも重い。3コストで4点バフだけデハナク、4点ダメージで除去も出来た輝きの破格さと比べる方がおかしいんデスガ」
「じゃあ、総合では何位にはいる感じかしら?」
今にも一位に貼りたそうにこちらを見ているサティスファクション都に苦笑しながら、ニシワタリは言う。
「暫定3位デショウ。余裕は欲しいデスシ。しかし、とにかく輝きが輝き過ぎマシタ。こいつだけで3位デスヨ」
3位にマグネット板をパァン貼るサティスファクション都。既にハイになりかけている辺り、本当に暇してたなこいつ感が炸裂している。
「じゃあ、次は並び順でエルフ! 不殺シリーズ!」
不殺シリーズを思い返しながら、ニシワタリは答える。
「不殺シリーズというと、相手フォロワーの攻撃力下げるのが、従者、信者、狂信者とありマシタガ、強い弱いで言うとそんなに強くない、というあいまいな表現になってしまう能力デシタ。永続デバフな点が無ければ全然弱かったまでありマスガ」
うんうん、と納得の頷きを入れたサティスファクション都は、残りは、と続けた。
「他は、刻印が0コスト1ドロースペル、円陣が3コスト2ドローアミュレット。使徒が1コスト以下スぺルのドローフォロワーだったわね」
「他の能力の方がメインなはずナノニ、ドロソとしてしか覚えられてない辺りに哀愁を感じマスネ」
さておき、とサティスファクション都はうっちゃって、言う。
「順位は暫定10位を与えたいわ」
「いきなり低すぎデスヨ、サティスファクション都。暫定でも9位くらいデハ?」
「ここも残す訳ね。じゃあそういうことで」
不殺と書かれたマグネット板が9位の位置にスターン貼られる。
「次はロイヤルの簒奪シリーズ!」
ふむ、とニシワタリはさっと頭の中で簒奪シリーズを思い起こす。
「簒奪シリーズは、どれも黄金系が手に入るという、かっちりしていた統一感が魅力デシタネ」
「黄金系は簒奪シリーズとは関係ないフォロワーが出したり、それが能力のキーだったりと活用の幅が広いのよね。簒奪シリーズ産なのに、簒奪シリーズがいなくなっても大丈夫、ってわりとトンデモの話だわ。新弾<アルティメットコロシアム>でも使えるカード入ってたしね」
「黄金シリーズ、大体が攻撃時能力で手に入る、デシタガ、潜伏や突進持ちだったりするノデ、全く出せない、という場合も少なかったのも良い点デシタ」
うんうん、とサティスファクション都は首肯し、続ける。
「後、スペルの蛇剣は2コスト3点、という標準除去能力だったのも大きかったわよね」
「ロイヤル、いい除去に恵まれなかったデスカラネ。最近のもコスト重いのが多いデスカラ、何気に重用されていマシタ。ロイヤルとしてはかなりの痛手デス」
「除去系だと舞はややひ弱な全体で、これは微妙デシタガ、使徒は使いやすいフォロワーデシタネ」
「黄金シリーズ一つ使ってランダム2点。育てながら除去ってことが可能だったものね。そのパターンはやっぱり強いわ」
さてと、サティスファクション都は一拍置いて、言う。
「じゃあ、順位はどうなるかしら?」
うーん、とニシワタリは首を傾げて、それから戻して答える。
「ロイヤルの打撃としては超あるノデ、2位辺りデハ」
2位の位置に、簒奪と記載したマグネット板をスパーン貼りつける。
「次はウィッチね!」
「ウィッチは真実シリーズデスネ。これは中々難しい……」
「良いのと悪いのがしっかりあるから、むしろ簡単なんじゃあ?」
ニシワタリは首を傾げ、しばらくそのままで言う。
「疾走持ちでスぺブでコストの下がる狂信者は、実際超使えマシタ」
「低コストにすればかなり効率のいい3点疾走。体力も5点と輝きライン、というのは中々強いカードよね。他のシリーズがお仲間が落ちて力が落ちる、というのに一人全く異を介さない安定感は流石というか」
「むしろ<飢餓の輝き>が落ちる方が痛いという異端デスネ」
「他は、従者は2コスト2点除去に、信者は1コスト1回復に、とアクセラレートの方が使えるまである感じ。
使徒はスぺブカードを破棄して、そのスぺブ回数を引いたスぺブカードに、という特殊なドロソだけど、お膳立てが面倒なわりに強い構築がいまいち浮かばなかったのよね。
絶傑スペルの掟と宣告は、共に高スぺブが必要だけど、どちらも効果は大きい。というか真実シリーズは狂信者と宣告が核まであったわね、結局は」
「トナルト、順位のほどはどうしマスカ?」
うーん、とサティスファクション都は首をひねり、言った。
「6位ね!」
ハイパーン! と6位の位置に真実は貼られた。
「ドラゴン、侮蔑シリーズはどうかしら、ニシワタリ?」
「これは今回の大本命デショウ。侮蔑はフォロワーの信者と狂信者と、スペルの炎爪と嘲笑がこちらのフォロワーにダメージもある、トイウノト、従者、使徒、ガルミーユがダメージを受けると能力発動、トイウノガきっちりとしたシナジーとして紐付けられていマス。同時に、シナジーを意識しなくても、どの侮蔑シリーズもその能力を発動出来るノデ、腐る場面があまりないトイウ、全絶傑シリーズかくあるべし、と言える見事な能力設定デス。100点」
「一気にまくし立てるくらいに、高評価な訳ね。となると順位は?」
「絶対に1位、デスネ」
スパン! 侮蔑と書かれたマグネット板が1位に吸い込まれるように。
「次はネクロ!」
「ネクロマンサーデスカ……」
「さっきのテンションを一気に下げるちゃうのね」
「沈黙はルルナイという絶傑の面汚しの率いるところデスカラネ」
「あなた、自分が高評価してて結局は、だったのを引きづって言ってない?」
「公明正大に見て、ルルナイは面汚しデス」
目がグルグルしている。大体まずいことになる兆候なので、サティスファクション都はまあ、いいわ、と無視して話を進行する。
「とはいえ、沈黙も見る所はあるわね。信者は相手の突進と疾走フォロワーの攻2点を永続デバフ。交戦時能力で、自身も守護持ちだから、下げられる可能性はかなり高い。環境次第だったけど、疾走は大体入ってくるこのゲームでは腐りにくかったわね」
「絶傑スペルは微妙デス。相手のラストワード効果を消して倒せる粛清も、全体に能力消去の詩も、エンハンスしてそれ? という雰囲気デスネ」
「どちらも1コストだとほぼ同じ能力なのも微妙なのよね……。でも、使徒と従者もだけど、守護に対しては効果が高い点は評価してもいいと思うわ」
「環境次第過ぎマス。入ってなかったら単なる邪魔なカードデスヨ」
「むう、反論できない。ああ、あれよ、狂信者は?」
「10位で」
「すっ飛ばさないでよ! お察しだというのは分かってるけど!」
言いつつも、サティスファクション都は沈黙と書いた板をホワイトボードに貼り付けた。
「さておいて。ヴァンプ、姦淫シリーズはどうよ?」
まだ若干むくれているニシワタリは、ぶっきらぼうに言う。
「姦淫は、悪くないデスヨ。ヴァーナレクが自傷回数で能力が上がるタイプで、姦淫シリーズは口付け以外全て自傷が入る、というこっちはヴァーナレクに全てを捧げると言わんばかりのヴァーナレク推しデス。自傷だけではなく回復する部分もあるノデ、案外体力減り過ぎるという自傷の弱点も、ほんのりデスガ緩和されていマス。高評価デスヨ」
「となると、わりと上位だと思うけど、でも上三つはもう占められちゃってるのよね」
ニシワタリはうーん、とする。中々難しいらしい。
しばらくそうしてから、ニシワタリは言った。
「4位デスネ。ヴァーナレクが主というより従、もっとぶっちゃければ<闇喰らいの蝙蝠>の場均しという面が強かったノデ、あれがいなくなって地味に自傷軸が振るわない現在を見ると、<飢餓の輝き>を越えられない、と」
「成程ね」
と納得したところで、次だ。
「ビショップはどうかしらね」
「ビショップ、というと安息シリーズデスネ。これはなかなか微妙なところデス」
「攻撃していないとシリーズだからね」
「ピンポイントで良いのは良いんデスヨ。従者は攻撃しなければリーダー含めた全体回復。エイラとの相性が抜群です。レ・フィーネがいなくなった後詰ですが、エンハンスでスタッツアップと守護持ちになる点も、レ・フィーネの後釜以上の効果がありマシタ」
「スペルとアミュレット、つまり顕現と領域は微妙な線?」
「顕現は4コスト払って欲しい低コストというのがそこまで、ですが、領域は決まる局面では超決まる一枚デスヨ。ダメージカットも、フォロワーに攻撃されないのも、どちらも決め場所はきっちりありマス」
「他のシリーズフォロワー、信者、使徒、狂信者は?」
「信者は出しておけば最低1点顔、という程度。使徒は進化してまで欲しい能力かというと微妙。狂信者は、進化しないで敵全体2点以下消滅ってその能力良いんデスカ!? なわりと強い一枚デスネ」
「いいのもあるけど悪いのもある、ってとこかしら?」
「ですね。なので評価は微妙なんデスガ……」
「ぶっちゃけ何位よ」
しばし沈思黙考してから、ニシワタリは言う。
「5位で」
「つまり、唯我と真実が下がる訳ね?」
「はい」
「オッケー!」
テンションを上げて、サティスファクション都は唯我と真実を一つ下げ、その空いた場所に安息をぶちこんだ。
「となると、ネメシスは破壊は自動的に7かしら?」
「そこまで考えてなかったですが、それはちょっと無いデスネ」
ニシワタリが、そう言いきった。
「聞きましょうか、割り込むなりの理由を」
「破壊シリーズも中々に微妙ですが、良いものは良いんですよ。絶傑スペルの愉悦、歌声ともに性能は高いですし、信者のドロー効果はヴァンプで味わっただろうってやつデスシ、使徒の指定した場にあるカードを手札に入れつつコストを下げる能力も効果が高い。ぶっちゃけこの辺はかなり使えマス。
従者と狂信者が微妙なのと、そもそも効果は自分の方のを破壊しないと、なのでその点を考慮に入れても不便がある点。それが総合して微妙と言わしめるのデス」
「もっと上に入れる為の方便かと思ったら全然下の方ね、その評価だと」
「ですね。ぶっちゃけ6位辺りが妥当デショウ」
「つまり、唯我と真実は更に下がる、ってことね」
破壊、と書いた小片は、唯我を7位に、真実を8位に下げて空いた6位を得た。
サティスファクション都は独り言ちるように。
「こうして見ると、絶傑の順位と近い感じに見えるわね」
「一番絶傑とシナジーがあるべきシリーズデスカラネ。そこがきっちりしていれば、仕えるという印象も大きいデショウ。特に侮蔑シリーズはガルミーユにダメージを与えて能力を出させつつ、そのカードの能力もデスカラ、そりゃあ強いデスヨ」
「そうねー」
と、表情を突如シリアスなものに、サティスファクション都は変える。ニシワタリも同様だった。気配が、それも妖怪のものが、ふぅっと香ってきたのだ。
その気配は、既に和室にも漂っている。
正しく言えば、既に和室に、その気配のものの一部が漂っている。
それは、靄のような、淡いものであった。
「こいつは……」
ニシワタリは記憶にある妖怪を思い出す。先頃、未来見の水晶をめぐって争った一派にいたやつだと。
その靄の様な妖怪が、どこからともなく声を出す。
「おぼろぼろぼろ……、恨み、恨み、おぼろぼろぼろ……」
「ニシワタリ、恨み買ってるわよ」
「そりゃそうデショウケド、自分たちが悪いんだから逆恨みじゃないデスカ」
「その意見が通じる相手でもなさそうよ?」
靄の様な妖怪は、恨み、恨み、と繰り返している。そして、その形が一か所に集まり始める。正体を現すつもりなのだろう。
だが、それにしては隙があり過ぎた。
「屋敷!」
パン、とサティスファクション都は拍手を打つ。と同時に、靄の様な妖怪の横から、大きな空孔が生まれる。そこに、集まっていた靄は吸い込まれ、空孔が消えるとともにどこかに消え去ってしまった。
「……ずっこいのでは?」
「相手のテリトリーに不用心に入ってくる方が駄目なのよ。さて」
そう言うと、サティスファクション都は少し残った靄をかき集める。そうするとそこに小さい靄の妖怪が出来上がった。
「こいつは、聞いたら答えてくるかしらね?」
「知らんがな」
靄の妖怪は、不穏な雰囲気に、小さな体を震わせるのだった。




