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第39枚 結局絶傑ってなんだったんだよ、と言う話

 ここはとある県のとある街。その高級住宅街の一角。

 そこで、大きな池に放している錦鯉を見る、男。

 妖怪ではなく、人間だ。

 老人である。

 だが、一見して老いているという印象を受けない。元々の体のつくりが大きかったのか、齢七十を越えているとは全く思わせない、隆々たる存在感だ。武道全般に通じた武人のそれである。

 その男は、池の錦鯉を眺めている。時折、餌も撒く。それに食らいつく錦鯉のさまを、眼鏡の奥の目を細めて堪能している。

 と、そこに。

「御館様」

 声がある。だが、姿は見えない。それに対して、老人が問う。

「問題か」

「少し。あの妖怪に、こちらの草が捕まりました」

「ただ捕まったなら、問題はないはずだ」

 老人は特に表情を変えずに、餌を撒く。群がる錦鯉。

 仰せの通り。と声は答えて続ける。

「しかし、仕掛けた罠は無効化されたようです。そして草は逃げたのですが」

「わしと結びつくところに、逃げ込んだか?」

 声は淡々と言う。

「片付けるところに任せています。今頃は恐らく……」

「恐らく、だと?」

 そう言うだけで、どこかにいる声の主の総毛が逆立つ。強い、憤りだ。

 老人は、また餌を撒く。群がる錦鯉。

 それを一瞥し、老人は言った。

「可能性があるなら、潰しておけ」

「ははっ」

 声の主の気配がなくなると、老人は独り言ちる。

「さて、ならば次の手を考えなくてはな」

 老人はまた、餌を撒く。錦鯉は群がるのだった。


 ここは、とある県のとある住宅街。その隅にある少しうらぶれた雰囲気の屋敷にゲーマー妖怪サティスファクション都は住んでいた。

 そのサティスファクション都と、その従者であるニシワタリが口論しているところに、完全凡俗の犬飼美咲と退魔師の家系の人間である城茂美が巡り合った。

 いつもの和室で睨みあうというか噛みつきあうレベルで険を飛ばす二体に対し、茂美が呆れるように言った。

「なんだ、まだ都くんが何かしたのか?」

「城の中で私がどういう扱いなのか知りたいところね」

 でも、とサティスファクション都は続ける。

「悪いけど今それどころじゃないのよ。この馬鹿銀髪に格の違いを教えないといけないの」

「そうデスヨ、城。この万年汚部屋眠り姫に、世の中ってのを分からせてやらんといかんノデス」

「誰の部屋が汚部屋よ! あれは計算に計算を重ねた結果の大変計算高い計算高さがある配置なのよ?」

「計算言い過ぎて、逆に胡散臭いデスヨ。トイウカ普通に汚部屋だと認めなさい、サティスファクション。そこからして初めて部屋が片付くのデスヨ?」

「あれはあれでいいの! 私の部屋がどうあろうとあなたには関係ないでしょ!」

「デスガ」

「ちょっと待った!」

 口論する二体の妖怪に、美咲が割り込んで止める。そして言う。

「話が脱線しているような気がするんだけど、その辺大丈夫なの?」

「……言われてみると」

「……確かにそうデスネ」

 さっきまでの威勢がするっと抜けて、少し恥ずかしそうにすら見える二体。

 そこに、美咲が質問する。

「というか、そもそも、何が発端で口論になってたの?」


 問いに答えるのはサティスファクション都だ。

「それは、『シャドウバース』のカードパック<十禍絶傑>が後1か月半程度でローテ落ちする、って話から始まったのよね」

「そうデス。それで10人いる絶傑の、強さは結局どうだったノカ。その最終判断を下そうとしていたのデス。しかしこれがすり合わナイ」

 困ったもんだ、と二体はそれぞれ相手が分かってねえ、という態度である。それは無視して、美咲は続ける。

「<十禍絶傑>追加されるって時に、シシデバルさんに無理やり順位つけさせたっけ。あの時も白熱したけど、それからどう変わったか、って話かな?」

「美咲さんの言う通りデスネ。流石に今になれば評価も確定する。そう思うじゃないデスカ」

「それが、しかし全然違うと、なっている訳か」

「城の言う通りよ。もうローテでは終わり際なんだから噛み合うはずじゃない? なのにニシワタリったら妙なこと言う訳よ」

「妙なのはサティスファクションの方デショウ」

「何よ」

「何デスカ」

「だーかーらー」

 美咲が、再び喰らいあおうレベルの二体の間に割って入る。二体の妖怪としての格が分かる茂美としては、この行為は冷や冷やものなのだが、そんなこととは露も知らない美咲は、諭し始める。

「それで喧嘩、とか馬鹿馬鹿しいと思わない? あたしは思うんだけど」

 美咲の視線に、サティスファクション都とニシワタリは何か思うところがあったようだ。反省の色を見せる。

「……確かに大人げないわよね」

「……サティスファクションに大人げがあったという驚きはサテオキ、確かにこれで喧嘩、は良くないデスネ」

「そうそう。いい大人がすることじゃないよ。だから、ここは穏便に確認していった方がいいじゃないかな?」

「と、言いマスト?」

「二人でどういう順位か、言うだけ言っちゃえばいいんだよ」

「「……」」

 二体とも沈黙する。何やら打算が渦巻いているようだが、ゲームのカードの強さを手前勝手に判断するだけという以上の何かがそこにはあるのだろう。そう思う美咲。

 それはさておき。

「やりましょう」

「やりマショウ」

 二体同時に声が出た。そして、そういうことになった。


 突如登場するホワイトボード。美咲はそこに、マゼルベイン、と書いて尋ねる。

「ニュートラルから行くよー。<唯我の絶傑・マゼルベイン>は、何位になるかな? まず都ちゃん」

「私は2位ね」

「ニシワタリちゃんは?」

「ワタクシは5位ですね」

 ふむ、と言いつつ、美咲は記憶を確認する。

「確かシシデバルさんがやったインプレッションの時は。都ちゃんは4位で、ニシワタリちゃんは10位だったっけ?」

「そういう記憶力だけはやたらいいデスネ、美咲さん」

「それよりも! ずいぶんとあなたの中で株が上がったじゃあないの。ええ、ニシワタリさんよ?」

「実際、こいつを絡めたデッキは中々パワーがありましたカラ、評価しただけデス」

 ふふん、とサティスファクション都はほくそえむ。

「<天界の門>っていうハイランダー要員に別口が出来ちゃったから、その点はちょっと悲しかったけど、それでも自分三枚入れられるのとリーダー能力でというので、優位はあったのよね」

「『シャドウバース』というゲーム的にあまり意味が無かったハイランダーに、いい意味を持たせたという点は立派デショウ」

「総じて最終的に高評価、と」

 美咲はホワイトボードにそう記載して、続ける。

「じゃあ次。同じくニュートラルの<飢餓の絶傑・ギルネリーゼ>は?」

「私は3位ね」

「ワタクシは2位デス」

 ふむ、と美咲。

「最終評価は高めだね。前もわりと高そうな言い方はしてたけど」

「やっぱり全体バフ、それも攻プラスの2は大きかったわね。ヘクターみたく突進付与とかはないけど、堅実に高火力を叩きだせる形にするし、自身の潜伏及びドレイン、それと<飢餓の輝き>適正も合わせれば、最終的に強いの判定を出しても問題はないと思うわね」

「並べてバフ、というのがそれほど珍重されてない時以外では死角はない。そういう一枚デシタネ。補助要員としては相当な優秀さデスシ、今までの貢献を考えると、この辺りが妥当と言った所デショウ」

「ダブルで早口ありがとう。環境さえ合えば1位もあった、くらいかな?」

 さて次、と美咲はホワイトボードに記載していく。

「エルフの<不殺の絶傑・エズディア>については、一体何位?」

「私は5位をあげたいわね」

「ワタクシとしては8位が妥当カト」

「おや、これも結構離れたな。確か、前ではどっちも6位くらいだったろう?」

 茂美の言葉に、ニシワタリが頷く。

「デスネ。そこから上げましたか、サティスファクション」

「ちょっとね。でもそっちは下げたみたいね。その辺の理由は?」

「やはり、10コストで出すには微妙な能力、という点デショウ。無理やりリーサルを狙う形は、策が決まればいいデスガ、良い感じにカードが揃っても守護だけで、というパターンも多かったデスシ」

「その点は私は逆ね。そこを如何に突破するか、と言うのが燃えたわ。エズディアの後に強引にリーサルに持っていく、そういうのに向いたカードも出てきていたしね」

「意見が分かれる所、といった感じだね。どんどんやってくよ?」

 お願いするわ、とサティスファクション都。それに答えるように、美咲は板書して続ける。

「ロイヤルの、<簒奪の絶傑・オクトリス>はどうかな?」

「私は8位」

「3位デスネ」

 ふむ、と、美咲。

「また離れたね」

「ツーカデスネ、オクトリスが8位な訳ねえデショウガ!」

「3位もあり得ないと思うけどね、私は」

 ああん? と双方言い、にらみ合いが始まる。まただ。

 そこは特に気にせず、美咲は二人の意見を聞く。

「都ちゃんが低評価なのは何故なのかな?」

「ラスワを簒奪は、刺さると強いけどタイミングの問題もあるから、思ったより使えなかった、というのが印象としてね? そもそも取れて強いラスワもそう数はないから、状況次第過ぎるのよね」

「ニシワタリちゃんは高評価だね?」

「理由はサティスファクション都と同じと言えマスネ。刺さると強い。それが真実デス。エンハンスで能力を底上げしマスシ、刺しやすくもありマス。ぶっちゃけサティスファクションの評は見当違いトイウカ、私怨デショウ」

「ケーッ! 私怨上等でしょうよ! でも、今後アンリミでも入れ続けられるかというと微妙な線でしょうに!」

「話こじれそうだから次に行くね?」

 美咲は自分からふった形の話を強引に捨て置いて、板書しつつ続ける。

「ウィッチの<真実の絶傑・ライオ>は何位かな?」

「私は6位ね」

「ワタクシは6位デスネ」

 顔を見合わせるサティスファクション都とニシワタリ。

「こんなところで被るとは予想外ね。なんで中途半端な奴だけ噛み合うわけ?」

「それも大変中途半端な順位デスシネ。デスガ、ワタクシとしては、これは妥当と思いマスヨ」

「シシデバルさんも同じくらいの、7位だったね」

 そうねえ、とサティスファクション都。

「手札ではなくデッキに9回スペルブーストは強い、んだけどやっぱり後が上手く引けないと意味がないのがね。ドロソはあるんだけど、それでもだったわ」

「ドロシーみたいに手札に持ってきて、とかではないデスカラネ。それがあったら絶対ナーフだったデショウガ」

「コストも7なのもね。こいつのコストがスぺブでマイナスしてたらやっぱり壊れだから、本当に絶妙にいい塩梅ではあるんだけど、終盤にカード引けないといけない、って結構厳しかったわね」

「結局スぺブしたのをドロー出来ないと微妙、ってことでいいのかな?」

 異議なし、と二体は言ったので、美咲は先に続ける。ガルミーユと板書されている。

「ドラゴンの<侮蔑の絶傑・ガルミーユ>はどれくらいの順位かな? シシデバルさんは1位判定で、二人とも異議なしだったけど」

 サティスファクション都とニシワタリは、うーん、と悩み込む。

 悩んで、先に結論を出したのはニシワタリだ。

「ワタクシとしては、5位相当であると判断しマスネ」

「都ちゃんは?」

 ふられたので、サティスファクション都は渋々と。

「1位ね」

「1位、でたね。でも、まずはニシワタリちゃんから。下がってるけど?」

 ニシワタリはこくりと頷き、答える。

「やっぱりナーフでだいぶ穏当になったのが痛いデスネ。体力削って顔にガンガン攻撃飛ばせた頃と比べマスト、やっぱり少し微妙と感じマス」

「ガルミーユがダメージを受けると、という条件揃得る必要があるとはいえ、中々頭おかしかったからなあ」

 茂美の納得に対して、サティスファクション都は反論する。

「ナーフを受け入れても、私は1位ね」

「理由のほどは?」

「とにかく一枚で出来る事が多いのがいいわね。7コスト払えば、1点全体、自動進化、能力解放。どれも強みだわ。進化軸という要素も入ったから、自動進化は大変効果が上がったし、アンリミでもまだまだ見られる一枚だと思うわね」

「以前ほどではないけど、十分パワーがある、ってまとめでいいかな?」

 異議なしなので、美咲は続ける。ルルナイと板書される。

「次はネクロマンサーの<沈黙の絶傑・ルルナイ>。ニシワタリちゃんが高評価してたはずだけど、最終的には?」

「私は10位。確かあの時と同じだったわよね。で、ニシワタリ」

 にやりん、と変則的な笑み、蛙をにらむ蛇タイプ、を浮かべて、サティスファクション都はニシワタリに問いかける。

「あなたは、前は1位にしてたけど、1位以外信じられないってしてたけど、どうだったかしらねえ」

「……9位」

「ああん? 聞こえねーわねえ!」

「9位デスヨ。文句ありマスカ」

 あ、居直った。と、茂美は判断する。あんまりこれ以上突くとよからぬ。

 だが、美咲にそのような機微はすぐには分からぬ。吶喊する。

「1位から9位に大転落したのは何故なのかな?」

「ぐぬぬヌヌヌ!」

 超ぐぬぬ顔になるニシワタリ。流石に美咲も気づく。

「あ、なんか踏んじゃったかな、よからぬところを」

 その点に気づくのが遅くなければなあ、と茂美は思うが、それは当然口に出さず、ニシワタリのフォローに入る。

「まあ、結局相手のスペル以外に効果もないし、永続効果でもない、と言う点が微妙に使いにくい能力だった。刺さる場面が、使った方には分かりづらかったのがね」

「コストを増やすのが全てのカード対象だったら、相当強かっただろうね」

「3コスト3の3というのも強みではあったけど、最近普通に3コスト3の3がいるから、希少性減ったからね。その点も株を下げる要因だったね」

 美咲と茂美がフォローして、なんとか話は片付いた格好になった。ニシワタリはまだぐぬぬっているが、そこには気づかない美咲はは話を進める。ホワイトボードには既にヴァーナレクと板書されている。

「ヴァンパイア! <姦淫の絶傑・ヴァーナレク>の評価は、最終的にどうかな」

 まだほくそ笑んでいるサティスファクション都から答える。

「私の順位は7位ね。アンリミに行けばまたワンアクセントとして機能しそうだけど、自傷軸が微妙になった現在のローテで考えると、どうしても評価は低めね」

 切り替えた顔になっているニシワタリも答える。

「ワタクシは4位デスネ。以前にやった時の評価よりやや下くらいデスガ、サティスファクションの言う通り、自傷軸が下火になったので、そのアクセントとしての評価が高い一枚ゆえ、どうしてもデスネエ」

「能力の為には自傷が7回必要で、除去はあるけど純粋な攻撃力としてはやや非力。アクセントとして強いだとどうしても、ってことかな?」

 デスネ、となったので、美咲は次の絶傑の名を挙げる。マーウィンと板書されている。

「ビショップの、<安息の絶傑・マーウィン>はどうかな?」

「私は9位」

「ワタクシは10位デス」

 即答する二体。どちらもかなり低評価なので、美咲はその理由を問う。

「前にやったのでも低評価だったけど、更に下げたのかな?」

「やっぱり、相手にも恩恵があると、微妙な気持ちになっちゃうわよね」

「PPブースト、カウントダウンの進行、体力回復、ドロー。どれも自分だけなら、なんデスヨネ。相手にも恩恵がある、というのは、やはり相手が嫌なことをするというカードゲーには向いていない、優しい能力だったカト」

「カードゲーマーってそういうところあるわよね」

「それは単なる異常な偏見だと思うが?」

 茂美の言葉を全く聞こえていないふりをして、サティスファクション都は言う。

「進化時の能力、ダメージ減衰も悪くはないんだけど、なら守護欲しいわよね」

 ニシワタリも頷く。

「最近そういう守護も増えてきマシタシ、だからどうにも、見劣りがありマス」

 まとまったので、美咲は続ける。リーシェナとは既に板書してある。

「じゃあ最後。<破壊の絶傑・リーシェナ>はどうかな? どっちも順位は挙がっている感じかな?」

「もう後は残ったのを入れるだけだしね。私は4位」

「ワタクシは1位ですね」

「最後まで1位残してたの?」

「元よりここに入れるつもりでしたよ」

 自信のある発言だったので、サティスファクション都は掘り下げず、引き下がる。

「理由は……、都ちゃんは流れでって感じだね」

「一応、小細工系だけどバカなパワーがあるのがいいわね」

「対して、ニシワタリちゃんは明確に1位なんだね」

 ニシワタリはしっかりと頷く。

「完全にデッキの形を決める一枚、というのはワタクシ大好きでして」

「嫌いな人、そういないけどね。でも、かなり極端なデッキ構築になるんだよね、これ」

 ニシワタリはしっかりと頷く。

「進化で手に入る<白き破壊のアーティファクト>。

 それから生まれる<黒き破壊のアーティファクト>。

 これが揃えば、こちらは回復あちらは全てに大ダメージ! で、白黒共に、こちらのフォロワーが破壊されるとコストが下がる。なのでガンガン<操り人形>などを潰して場を均しておけばいい。設置できるまで乗り切れば勝ち。

 いい……」

 陶酔を見せるニシワタリ。若干、怖いなあ、とわりと酷いことを思いつつ、美咲はまとめる。

「どちらかというと、デッキの方を決めるタイプだからいい、ってことかな?」

「そういえば、最終的に、デッキの方を決めるまでのやつは、ある意味当然のマゼルベインとリーシェナくらいだったわね」

「ガルミーユはナーフなくてもメインは出来てもデッキコンセプトではなかったデスシ、エズディアは、一応デッキ形かもデスガ、どう考えても一発ネタデス」

「エズディアの一発ネタの何が悪いって言うのよ!」

「一発ネタが、だって言ってんダロボケナス!」

 またしてもにらみ合いが勃発してしまう。これをやめさせようと話をさせたのに、振り出し、いや、することが済んでしまったので、後は元気がなくなるまで延焼である。

 どうしようかなー、と美咲が悩んでいたところに、何かの音が。

「おっと、ちょい待ちなサイ、サティスファクション。電話です」

 ニシワタリが携帯を取り出すのと同時に、と何かの音、あるいはリュウのテーマが。

「こっちは気にしなくてもいいわ。私も電話……」

 そう言うと、サティスファクション都とニシワタリは、お互いの着信の相手を確認する。お互いがお互いの携帯のそれを、である。

 サティスファクション都が言うのはニシワタリの方の着信の相手。

「シシデバル」

 ニシワタリが言うのはサティスファクション都の方の着信の相手。

「パッション郷」

 一気に、きな臭さが増す。嫌な予感も、傍から見ている美咲すら覚えてしまう。しかし、出ない方がまずいだろう。というのもまた分かるから困る。

 南無三! とサティスファクション都とニシワタリは同時に電話に出る。

「パッション、何の用?」

「何の用件デスカネ、シシデバル」

 それから、しばらくふむふむと二体は電話の内容に耳を傾け、そしてどんどんげっそりとしていく。返事もするが、美咲たちを考慮してか、人間には分からない妖怪言語になっていく。

 だが、その挙動、表情から思わず出てしまうボディランゲージで、これはかなり厄ネタであるのが、美咲と茂美にも見てとれてしまった。

 そして、最終的に。

「「出来るかボケエ!」」

 という同時の発言と共に、通話をサティスファクション都とニシワタリは同時に切った。

 あえて、茂美は口を挟まない。かなりこちら側に配慮が見られるので、たぶん話し出さない方がいい。聞かない方がいいことってのは案外あるものである。

 美咲は聞いていく。

「何の話だったの?」

 戦慄が走る。が、美咲は何だったの? と素朴に。

 どうする、と茂美が二体の顔を確認すると、サティスファクション都が意を決した感じで頷く。そして言う。

「どうやら、私たちが狙われている、って話なのよ」

「私、たち?」

「そう、私たち。それも結構ヤバイ相手にね」

 サティスファクション都の表情に、冗談のそぶりは全く無かった。

<十禍絶傑>についてはもうちょい話しできそうだなあ、というのが。まあ、ノレばやりますよ。

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