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運命なんて信じない  作者: マオ
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三章・真実って残酷だ・2

「いいわよ、呼び捨てで。そんなに上等な人間じゃないものね? エリオス」

 苦笑するレナがかなり失礼なことを言っているというのに、ひねくれ少年エリオスは反論もせずに頷いた。

「……構わない」

「あら珍しい。素直ね」

「……うるさい」

 ぶっきらぼうに言って、エリオスは目を逸らした。ひそかに彼は確信していた。

 寝ぼけたところ、話し方、立ち居振る舞い、何よりもその雰囲気。彼女は確かにセーズとなんらかの関係がある人物だ。

 確信したからには離れるわけにはいかない。わずかな確率でも、セーズと関係があるのならば、行方不明の彼の居場所が少しでもつかめるのなら、なんだってする。

「村長に話をしにいくんだろう。早く身支度を整えろ、セーナ(・・・)

「お、やっとセーナって呼んだな」

 イズの茶々入れにエリオスは無言。そして、セーナとレナは顔を見合わせた。

 とてもまずい状態になっているような気がすると直感したのはどちらのほうだったか。

 レナはこんなにあっさりエリオスが納得するわけがないと思った。詳しい話をしたわけでもないのにあのエリオスが素直に引き下がるなんてありえない。

 セーナは……内心で頭を抱えた。エリオスがどういうつもりなのか大体読めたからだ。

 彼はついてくるつもりなのだろう。昨夜予想したとおりだ。おそらくはどう言っても考えを変えるつもりはない。変なところで頑固なので確実についてくるだろう。

 何か勘付かれたかもしれない。エリオスは勘もいい。迂闊に話しかけたのは失敗だったと痛感する。

 痛感しながらも……どうすればエリオスをやり過ごせるのか思いつかない。

 黙って置いていくという手も考えたが、一度それをやられているエリオスは警戒して早朝からドアの前に居座っていた。同じ方法は使えない。

 何か考えなければ。セーナは頭を抱えたい気分だった。

 パタパタとワラを落とし、簡単に身繕いをして、村長宅へ向かう。当然のようにエリオスはついてきた。もはや彼もパーティーの一員だとでも言いたげだ。

 村長宅のドアをノックする。出てきたのは奥さんだった。これ幸いと奥さんに事情を話す。あの話の通じない村長と話すよりはマシだ。

 魔物は山にいないこと。遺跡に住み着いているのは罪のない恋人同士で(ビオラと兄貴と言うと奥さんは笑顔のまま無言になった)害がないこと。足を洗ってまじめになりたいという働き手がいるので、村で使ってあげてくれないかと話もした。奥さんはとりあえず納得してくれたらしく、山の遺跡には近寄らないことにすると言い、働き手は村としても願ったりかなったりだと喜んだ。

 依頼のほうは魔物がいなかったうえに、さらわれた娘というのも誤解で済み、両親も納得しているので前金だけでいいとセーナは笑った。何せここまで移動するのに馬車を使ったので、セーナとレナはともかく、お金をあまり持っていなかったイズは前金の分を多少使ってしまっている。

 村が困窮しているため、なによりもありがたいと奥さんは喜んだ。あんな村長ならなおさら苦労しているだろう。

 話は万事良いほうで終わり、セーナたちは村長宅を後にした。あとはもと山賊たちがまじめに働いてくれればいい。

「……村長さん、出てこなかったね」

「そうね、朝が早いからでしょうね」

「そうかなぁ……」

「そういうことにしておきなさい」

 昨日のいろんな物音を思い出してセーナは密かに村長の無事を祈った。多分、死んではいないだろうとは思うが。

 村を出る前に、もと山賊たちにもあいさつしていった。彼らはいたくセーナに感謝して、拝み倒す勢いだ。あの即死効果つきのカップルから開放してくれた上に、働き口まで見つけてくれてありがとうと泣き出す者までいる始末。ビオラと兄貴のカップルは、そうとう彼らの精神を圧迫していたらしい。

「気持ちは分かる……」

 アレを見たものとして共感を示すレナとイズだった。

 今後なるべくこの近くには立ち寄らないようにしようと、固く心に誓う。再びアレと遭遇するのは本心から遠慮したい。

「さ、ラジルダルに戻ろう」

 また馬車に揺られなければならない。今度は話好きの老婆が乗っていなければいいと思いながら乗り場を目指す。率いているのはすっかりセーナだ。当然のようにレナとエリオスはついていく。

「セーナちゃんはリーダーシップあるなぁ。気がついたら君が前に立ってるんだよね」

 何気なく言ったイズに、

「セーズみたいだな。彼も自分自身は意識せずに皆を率いてくれていた」

 エリオスが何気なく反応を見ようとする。

「そ、そうですか? あまり考えたことないですけど」

 うろたえないようにしようと思ってはいるものの、いきなり言われると動揺してしまうセーナだ。彼女の態度でエリオスはやはり怪しいと彼女の背を見つめる。何か少しでも怪しいところがあったなら、すぐさま突っ込んでわけを聞こうと意気込んでいるのがよく分かる。

「あ、ほら、馬車が来たわよ」

 咄嗟にそう言って助けは出したものの、レナは息をついた。ラジルダルにつくまでの間こんな雰囲気で馬車に揺られて、もともと素直で嘘のつけないセーナがボロを出さない可能性は低い。どうやってエリオスの追求を切り抜けるか。

 セーナもそこのところは考えていた。自分が嘘をつけない性格だということはよく分かっている。

「ぼ……私、疲れているので寝ます! 話しかけないでくださいねっ」

 なので、馬車に座るなり宣言した。追求されれば話してしまいそうなら、話しかけられないようにすればいいのだ。

「起きたばかりで疲れるわけがないだろう、まだ朝だぞ」

 冷静にエリオスが突っ込むが、レナが勝ち誇ったようにまくしたてる。

「誰かさんたちがうるさくて起こされちゃったものね? 前の晩わけの分からないこといわれて混乱しちゃってあまり眠れなかったのに。セーナったらかわいそう。寝なさい寝なさい。おねえさんが番をしてあげるから」

 そう言われては反論できないエリオスと、ついでにイズである。黙り込んだ彼らが何か言ってこないうちにと、セーナは急いで目を閉じた。いっそ本当に眠ってしまおう。昨晩考え事をしていてあまり眠れなかったのは事実なのだ。

 問題はエリオスのことだけではない。ラジルダルに戻ったら、バーミリアスの情報がなにか掴めているかもしれない。彼のことが分かったらすぐにでも出発する気でいる。

 その場合、イズはどうするか。彼とは今回限りのつもりでいるが、なにやらついていきたそうな様子。いい人ではあるのだが、出会いがしらにいきなりプロポーズしてきたような男だ、あまり付き合いたくない。なによりも彼といると、思い出したくない悪夢を思い出す。

 突然の裏切り。考えたこともなかった現実。

 バーミリアスに出会ったら、何度でも問い詰めたいことがある。

『どうしてなんだ? 何故こんなことをした?』

 答えを知っているのは行方の知れないバーミリアス本人だけだ。

 何よりも考えなくてはいけないことがあるのに、イズといい、エリオスといい、更なる問題が山となって積み重なっていく。

 巻き込みたくないのに。

 そう思いながら、セーナは眠りに落ちていった。


ちょっとシリアスっぽくつくろってみました(オイ)

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