衝撃と動揺と焦燥(SIDEセルジュ) 1
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セルジュ・ブランについて友人に語らせれば、だいたいの人間がこう言うだろう。
堅物で生真面目で、少々思い込みが激しく一途。
その評価は、果たして肯定的なものなのか否定的なものなのか、セルジュにはわからない。
だが、自分が頑固なのは自覚していた。
そしてその頑固さの末に、かけがえのないものを失うことになるとは、かつてのセルジュは思いもしなかったのだ。
☆
妻、シャルリーヌからの手紙が届いたとき、セルジュは王太子の執務室で書類仕事をしていた。
セルジュは文武両道であるが、どちらかと言えば体を動かすよりは室内で過ごすことを好むタイプだ。
背が高く、体格もまあまあいい方なので、インドア派だと伝えると驚かれることの方が多い。
王太子アロイスの側近であるセルジュは、基本的に政務関係を補佐する立場だ。剣も使えるが、護衛役の側近ではない。
手紙を届けに来た城の使用人に「奥様からです」と言われた時、そう言えば自分には妻がいたんだったと、セルジュはあきれることを思った。
口に出していたら、室内にいたアロイスも他の側近たちも、唖然としたに違いない。
だけど一年前に結婚した妻シャルリーヌは、セルジュにとっては他人も同然で、仕事が忙しかったのもあり、その存在をすっかり忘れていたのだ。
何故なら、まったく会っていなかったのだから。
そもそも、シャルリーヌとの結婚は、セルジュの意志なくして進められた。
最初に言っておくが、セルジュは王太子妃の祖国ソブール国が嫌いだ。
ソブール国とヴェルリール国はセルジュの祖父の時代に戦争をしていた。
戦争で多くの犠牲も出て、友人知人を幾人も亡くしたセルジュの祖父は、戦争が終わってもソブール国を毛嫌いしていた。
父が仕事で忙しい人だったので、セルジュは祖父母に育てられたようなもので、幼い頃からソブール国がいかに卑劣な国で、自分の大切な人がいかにして亡くなったのかをしつこいくらいに聞かされた育ったセルジュがかの国を嫌うのは当然だっただろう。
それでも、成長するに従って、戦争だったのだから犠牲が出るのも当然だし、相手ばかりではなくこちら側も充分卑劣な手段を取ったこともあるし、相手ばかりが悪いわけではないと理解はした。
しかし理解と感情は別物で、やはりセルジュはソブール国が嫌いだった。
そんな嫌いな国出身の女性を妻に娶るなんて冗談ではなかったし、亡き祖父への裏切りだとも思った。
けれど、アロイスと妃のディアーヌの仲は良好で、妃がヴェルリール国で心地よくすごすためには、彼女の味方を広げればならないという理由の元、セルジュに白羽の矢が立ったのだ。
ディアーヌは侍女を十人ばかり連れて来ており、彼女たちをヴェルリール国の貴族に縁づかせることを望んだ。
その相手は、セルジュをはじめとするアロイスの側近や、彼に近しいところで選ばれたので、セルジュが対象に上がっても当然ではあっただろう。
だけど、アロイスはセルジュがソブール国を嫌っていることを知っていたはずだった。
シャルリーヌとの結婚生活が成立しないことくらいわかっていただろうに。
(妃がソブール国出身だからな。俺のかの国への印象を変えさせたくて選ばれたのもあるんだろう)
実際、シャルリーヌは美人だった。
ディアーヌが連れてきた十人の侍女の中でもその容姿は断トツで際立っており、なおかつディアーヌのお気に入りである。
つまりは、セルジュのソブール国への印象を変えようと、ディアーヌの肝いりの侍女がよこされたわけだ。残念ながらいくら美人でも、それだけで絆されるほどに、セルジュの意思は弱くなかったのだが。
セルジュは、動揺を隠しながら使用人から妻の手紙を受け取った。
この一年。互いに関わって来なかった妻が、何を思って手紙なんてよこしたのだろう。
セルジュは書類にサインを入れる手を止めて、ペーパーナイフで手紙の封を切る。
中には二枚の紙が入っていた。
一枚は彼女の手紙。
もう一枚は――
それを見た瞬間だった。
ガンッと頭を殴られたような衝撃が走ったのは。
実際には殴られたわけでもないのに、ぐらりと体が傾ぐ。
頭の中がガンガンして、意識を保っているのが難しくなった。
「セルジュ⁉」
アロイスの焦った声を聞きながら、セルジュは、暗い闇の中に意識を手放した。
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