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愛さないと言った夫が豹変しました~囚われたわたしが夫の真実を知るまで~  作者: 狭山ひびき


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新しい未来を掴む 6

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 エミリーの気分は高揚していた。

 ついに、ついに、シャルリーヌに天罰を食らわせる日が来たのだ。


 思い返してみれば、最初から気に入らなかったのだ。

 シャルリーヌとエミリーがディアーヌの侍女に選ばれたのは同時期だった。

 ヴェルリール国に嫁ぐことが決まって、ディアーヌは共に連れて行く侍女を探していたのだ。

 ヴェルリール国で王太子妃として権力を握るべく、ディアーヌは侍女を十名連れて行くつもりでいると聞いた。侍女とヴェルリール国の貴族を縁づかせて自分の派閥を作り上げるためだ。


 エミリーはその話を聞いたとき、とてもわくわくしたのを覚えている。

 エミリーはソブール国の男爵令嬢だった。

 両親は子だくさんで、エミリーは五番目の子供だった。


 上には兄が二人と姉が二人。下には妹が二人。

 上の兄は跡取りで、二番目の兄は学者気質で頭がよかった。

 上の姉は美人で有名で父の自慢で、二番目の姉はおっとりとして気立てがよく、母の一番のお気に入り。

 下の妹二人は双子で、まだ幼くて手がかかる。


 エミリーは……取りたてて美人でもなければ頭もよくないエミリーは、家族の中でいつも中途半端な扱いだった。

 大切にされなかったわけではないだろう。

 兄も姉も優しかった。妹はうるさいけれど、可愛いとも思う。


 だけど、貴族の中でも男爵家という末端貴族の中で、さらにうずもれて生きていたエミリーの未来の展望は、あまりにも暗かった。

 美人な姉も、気立てのいい姉も、いい縁談が見つかったけれど、エミリーはどうだろう。

 上の姉の婚約者が決まった年になっても、エミリーには縁談一つ来ない。

 たいして金持ちでもない男爵家の、平々凡々すぎる三女だ。妻にもらいたいと思う男性は、きっとほとんどいないし、いてもろくなやつじゃない。


 それならば、王女の、そして未来の王太子妃の侍女という肩書を得て、最高の相手を探そう。

 兄も姉も妹たちも、誰もがうらやむ相手を見つけるのだ。

 取り立てて注目されなかった自分が、見目麗しく身分も地位もある最高の相手と結婚したとき、きっと家族はエミリーの真の価値を知るだろう。

 一番大切にすべきだったのはエミリーだったと、気づくはずだ。


 エミリーは一番がよかった。

 一番注目してほしかった。

 一番愛されたかった。

 だから期待に胸を膨らませてディアーヌの侍女になったのに、そこにはシャルリーヌがいた。


 艶やかな金髪にサファイア色の綺麗な瞳。

 儚げな風貌。

 まるで妖精だと、ディアーヌはシャルリーヌを褒めた。


 シャルリーヌはなかなかいないレベルの美人だ。

 性格も控えめで、常にディアーヌを立ててディアーヌのために献身的に動く。

 ディアーヌがシャルリーヌを一番のお気に入りにするのには、時間はかからなかった。


(おかしいわ。おかしい。こんなはずじゃなかった。ディアーヌ様の一番はわたくしがなるはずだったのに。そして、一番素敵な男性を紹介してもらって、一番の結婚をするはずだったのに)


 シャルリーヌに奪われた。

 兄と姉妹に両親の一番を奪われて、ディアーヌの一番をシャルリーヌに奪われた。

 一番が欲しいのに、エミリーはまた、一番になれない。


 シャルリーヌに憎しみを抱いたのはそんなとき。

 けれど、そのときはまだ、少し憎いくらいにとどまっていた。

 決定的だったのは、シャルリーヌの結婚相手がセルジュ・ブラン伯爵に決まった時だ。


 セルジュには、エミリーが目をつけていたのに。

 銀髪に緑色の瞳の、見目麗しい若き伯爵。

 王太子の覚えもめでたく、アロイスが即位した暁には宰相候補とすら言われている人物。


 また、奪われた。

 シャルリーヌに。

 セルジュは、エミリーのものだったのに。


 かわりにエミリーにあてがわれたのは、アロイスの側近の一人ではあったけれど、パッとしないバレ子爵。

 年はエミリーよりも五つ上で、優しいだけが取り柄のような、朴訥とした、たいした出世も見込めなさそうな男。


 シャルリーヌはディアーヌの一番のお気に入りで、一番の出世頭の、とんでもなく美丈夫の妻なのに、どうして自分だけ。


(シャルリーヌさえいなければ)


 エミリーの中にシャルリーヌへの殺意が芽生えたのはそんなとき。

 そして同時に、エミリーを一番にしてくれなかったディアーヌへの憎しみが生まれたのも、そんなとき。


 そこに、目をつけられた。

 オールポート伯爵のささやきは、甘い甘い蜜のよう。

 そうだ、欲しいなら、力ずくで奪えばいい。

 シャルリーヌも、ディアーヌも。

 エミリーを苦しめる人間なんて、追い落としてしまえばいいのだ。


 深い深い、奈落の底に。





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― 新着の感想 ―
自分を一番に取り立ててくれないなら裏切ってやる。 そんな性根だから、信用されなかった。 それだけだな。
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