新しい未来を掴む 5
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「シャルリーヌの仕業よ!」
ディアーヌがアロイスによって寝室に運ばれ、侍医が呼ばれると、ディアーヌの部屋にはシャルリーヌとエミリーと二人の侍女、セルジュが取り残された。
食事に毒が盛られていた可能性が高い以上、シャルリーヌたちは部屋から出ないようにと駆けつけてきた騎士から指示があったのだ。
現在部屋の入口は封鎖され、勝手に出入りはできないようになっている。
そんな中、エミリーが怒りで顔を真っ赤に染めて、シャルリーヌに向かった怒鳴った。
「だってそうでしょう⁉ キッチンから食事が提供される前に、王族の食事は必ず毒見がされるわ! ワゴンに乗せられた時は毒見がすんでいる状態よ! ディアーヌ様のお部屋にはわたくしたちがいるんだから、大勢の人の視線があるこの場で毒を仕込むなんて無理。できたのは、一人で食事を運んで来たシャルリーヌだけなのよ!」
「バレ子爵夫人、待ってくれ! どうして妻がディアーヌ王太子妃殿下の食事に毒を盛るんだ。シャルリーヌは王太子妃殿下を誰よりも尊敬している。毒を盛るなんてあり得ない!」
セルジュがエミリーからシャルリーヌを庇うように前に立った。
「セルジュ様は騙されておいでですわ! シャルリーヌはディアーヌ様を恨んでいるのです! シャルリーヌはセルジュ様との結婚を嫌がっていたんですわ! わたくし知っていますのよ。シャルリーヌがブラン伯爵邸でどのように過ごしていたのか! 夫からも愛されず、惨めな結婚生活を送っていたシャルリーヌは、セルジュ様と結婚させたディアーヌ様に殺意を覚えているのです。セルジュ様、シャルリーヌに騙されてはなりませんわ!」
その言葉で、かつてシャルリーヌを無視していたブラン伯爵家の使用人の誰かとエミリーに繋がりがあったのがわかった。
確かにシャルリーヌはブラン伯爵邸で使用人たちからひどい扱いを受けていたが、それが外部に漏れるはずがないのだ。
使用人たちは対外的にはうまくごまかしていたからである。何故ならセルジュすら知らなかった。シャルリーヌにあった噂は、夫と不仲ということだけ。邸でどのように扱われていたのかについては、中の人間以外知るはずのないことだ。
(案外、エミリーの指示もあったのかもしれないわね)
使用人の誰とエミリーが繋がっていたのかはわからないけれど、あれほど徹底して無視されていたのだから、誰かの指示があったとしても不思議ではなかった。
セルジュがさっと顔を青ざめさせてシャルリーヌを振り返る。
シャルリーヌが結婚を嫌がっていたと言ったエミリーの言葉にショックを受けたのかもしれない。
(もう、しっかりして)
シャルリーヌが小さく首を横に振ると、セルジュの顔に安堵が広がる。今はエミリーの言葉に一喜一憂している場合ではないのに、本当にどうしようもない人……。
「エミリー、勝手なことを言わないで! わたしは納得してセルジュ様と結婚したわ。ディアーヌ様を恨んでいたことも、ましてや殺意を抱いたことも一度もないわ!」
「誤魔化さないで! それならどうやって毒が盛られたのか言って見なさいよ! セルジュ様、シャルリーヌを押さえてください! 食事を運んでくる途中に毒を持ったのなら、まだ証拠を持っているかもしれませんわ!」
「うるさいぞ!」
エミリーが大声で怒鳴り散らしていると、隣の寝室からアロイスが姿を現した。王太子に怒鳴られてエミリーはびくりと震える。
「アロイス殿下、ディアーヌ様は……」
「予断は許されない状況だが、今は薬が効いて眠っている。それで、何の騒ぎだ」
アロイスがエミリーをじろりと睨んでからセルジュに訊ねた。
セルジュがこれまでの経緯を説明すると、アロイスがはあ、と息を吐き出す。
「エミリーはシャルリーヌが犯人だというんだな?」
「そうですわ! シャルリーヌ以外、ディアーヌ様の食事に毒を盛ることができた人間はいませんものっ!」
「わかった。セルジュ、シャルリーヌの身体検査をする。それで何も出なければエミリーも納得するだろう。女性騎士を呼ぶが構わないか?」
「……かしこまりました」
「シャルリーヌもそれでいいな?」
「はい。それで、身の潔白が証明されるのであれば」
シャルリーヌが同意すると、アロイスの指示で女性騎士が二人呼ばれた。
バスルームを借りてシャルリーヌの身体検査が行われる。
そして――
「ポケットに、こちらの小瓶が」
シャルリーヌのポケットから出てきた香水の瓶がアロイスに提出されて、エミリーが顔を輝かせた。
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