新しい未来を掴む 4
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「遅かったのね」
「ええ、そこでオールポート伯爵に会って少し立ち話していたものですから」
ディアーヌの部屋に戻ったシャルリーヌが答えると、セルジュがむっと眉を寄せた。
アロイスがそれに気づいて、にやにやと目を細める。
「セルジュ。お前、ちょっと嫉妬が強いぞ。いいじゃないか立ち話くらい。いくら妻が可愛くても、世界中の男から妻を遠ざけることなんてできないぞ」
「わかっていますよ。ただ、オールポート伯爵は先日シャルリーヌに色目を使ったので気に入らないだけです」
「色目なんて使われていませんから!」
シャルリーヌが赤くなると、ディアーヌが「あらあら」と笑う。
エミリーの嫉妬心を煽るためだとはわかっていても恥ずかしい。
シャルリーヌは赤い顔を誤魔化すようにうつむいて、運んで来たワゴンから食事をテーブルの上に並べはじめる。
「手伝うわ、シャルリーヌ」
「ありがとう、エミリー」
笑っているようで目が全然笑っていないエミリーと一緒に、ディアーヌとアロイスの二人分の食事をテーブルの上へ運ぶ。
「シャルリーヌ。そのオレンジが入っているサラダがディアーヌ様のものよ。ディアーヌ様は最近オレンジを好まれるの。入っていたほうが食べやすいんですって」
「そうなのね」
エミリーに言われて、シャルリーヌは二つあるサラダの皿のうち、オレンジが入っている方をディアーヌの席へ置いた。
スープ、前菜のテリーヌ、メインの赤身肉のロースト、パン。デザートはフルーツヨーグルト。
シャルリーヌとエミリーが料理を並べている間に、残り二人の侍女はお茶の準備をしていた。
妊娠して体を冷やさないように気をつけているディアーヌは、食事中も水ではなく温かいお茶を飲んでいるそうだ。もちろん、ワインなどの酒には手は付けない。
アロイスも、ディアーヌに合わせて、彼女と食事をするときはアルコールは飲まないようにしているらしい。
料理を並べ終え、お茶の準備も終わると、シャルリーヌとアロイスが席に着いた。
「今日は食べられそうかな?」
「そうですね、体調もいいですし、昨日よりは食べられると思いますわ」
「それはよかった。しばらく食べられない日があったから心配していたんだ」
ディアーヌの悪阻は軽い方だったらしいし、今は落ち着いているというが、それでも日によって体調の落差があって、あまり食事がとれない日もあったそうだ。
「侍医によると、もうすぐ食欲が増してくるらしいですわ。今度は食べ過ぎで心配させてしまうかもしれませんわね」
「食べないよりは食べてくれる方が安心できるよ」
「そうかしら? そのうち、『そろそろ太るからやめておけ』とか言い出しそうですわ」
ディアーヌがくすくすと笑ってフォークに手を伸ばした。
シャルリーヌがディアーヌの後ろに控えて、エミリーがワゴンのところに控える。
ディアーヌが、サラダを口に運び、咀嚼した直後だった。
「ん……」
ディアーヌがぐっと眉を寄せて、膝の上に置いていたナプキンを取ると口元を覆った。
口元を覆って立ち上がり、その場にうずくまる。
「ディアーヌ⁉」
「ど、く……」
口の中のものを吐き出し、激しくせき込んだディアーヌが、そのまま床に倒れ込んだ。
「ディアーヌ‼ セルジュ、侍医を呼べ! 急げっ‼」
アロイスの怒号が、室内に響き渡った。
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