不器用なあなた 2
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夢を見た。
そしてわかった。
あの人が、どうして、わたしを閉じ込めたのか。
全部わかったらどうしようもなくあの人に会いたくなって、目を開ける。
泣き腫らした顔でわたしを見つめるあの人に、わたしも、声を上げて泣きたくなった。
☆
ビオラの花が咲きました
ノースポールの白い花も見頃です。白
いポットがお気に入りで、お茶
をとてもよく飲むからなのか最近
ははだの調子がとてもいいです。そうそう、
はく鳥が飛来する季節ですね。
ロシエール湖には今年
もやまほどの
はく鳥の群れが訪れていることかと思います。
はく鳥の刺繍を
くろいハンカチに刺したので、今度送りますね。
そえてあるのは季節外れですけ
どミモザの花を入れました。
リリアンがミモザが好きだったとので見せてあげてくださいね。
そういえばディアーヌ様のお好みに合いそうな
むらさき色の布が手に入りました。
エギルリア地方の染め物だそうです。ハンカチと一緒にお届け
するので、ドレスにでも仕立ててくださいませ。
それは、懐かしいようで、つい昨日のことのようでもあった。
どのくらい気を失っていたのか。
暖炉の湯が沸いていないので、おそらく数分のことだろう。
シャルリーヌは書斎机の隣で、セルジュに横抱きに抱きしめれていた。
机の隣で気を失ったのだろう。
絨毯に直接腰を下ろしたセルジュの腕の中にいる。
……何を言うべきか、迷った。
セルジュがどうしてシャルリーヌを閉じ込めたのか。
何故オールポート伯爵に過剰な反応をしたのか。
全部わかったけれど、それを言葉にしていいのかどうかはわからない。
だから考えて、かわりにこう言ってみた。
「オールポート伯爵の狙いは、ディアーヌ様のお子でした。妊娠中に流産させることができなかったので、エミリーと共謀して、赤子には毒になるようなものを口にさせようとしていたようです。不審に思われないような、大人には毒ではないけれど赤子には毒になるようなお茶を、こっそりと入手して、飲ませようとしていました」
セルジュがひゅっと息を呑んだ音がした。
愕然とした顔で見下ろしてくるけれど、驚いているのはシャルリーヌも同じだ。
まさか彼が、シャルリーヌを守るために閉じ込めるなんて、思わなかったから。
「あの日、オールポート伯爵邸に侵入した賊の狙いは、はじめからわたしでした。わたしがオールポート伯爵の近辺を探ったから。そして……エミリーに、恨まれていたから」
そう。
エミリーには、ずっと恨まれていた。
シャルリーヌは死ぬ少し前まで、それを知らなかった。
エミリーは、セルジュが好きだったのだ。ずっとずっと、それこそ、シャルリーヌとセルジュが結婚するずっと前から。
エミリーがディアーヌを裏切ったのは、シャルリーヌとセルジュの結婚が原因だった。
シャルリーヌはディアーヌに教えられるまで知らなかったのだが、エミリーはずっと、セルジュと結婚させてほしいとディアーヌに訴えていたという。
だけど、ディアーヌがセルジュの相手に推薦したのはシャルリーヌだった。
あの瞬間から、エミリーはディアーヌへ忠誠を誓うのをやめたのだ。
セルジュと離縁し、シャルリーヌがオールポート伯爵の情報を集めるために彼と再婚することになったとき、エミリーはすでにシャルリーヌの殺害計画を立てていた。
シャルリーヌだって、馬鹿ではない。
薄々エミリーの様子に不信感を抱いていたし、オールポート伯爵とのつながりも疑っていた。
だけどあえて泳がすことで確かな情報を集めようとした。
それが仇となって、あの日、エミリーとオールポート伯爵が仕向けた賊によって、殺された。
――今でも覚えている。
邸に火が放たれて、自分の人生ももう終わると諦めたあの時。
朦朧とする意識の中に、セルジュが現れたことを。
(わたしも、好きだったんですよ、セルジュ様……)
離縁した元夫を、別れた後で好きになるなんてどうかしている。
だけど、好きになってしまった。
それなのに、シャルリーヌは彼を好きという感情よりも、ディアーヌの優秀な駒としての働きを選んだ。
ディアーヌと彼女の子供を守るために、この身を危険にさらすことを選んだ。
全部が終われば――もしかしたら、セルジュの元に戻る日も来るかもしれないなんて、都合のいい期待を少しだけ胸に抱いて。
オールポート伯爵との結婚式の日の、泣きそうなセルジュの顔を覚えている。
(わたしはたくさん、あなたを傷つけたのね)
最初は彼に傷つけられた。
そして次に彼を傷つけた。
それなのにセルジュは、あの炎の中、シャルリーヌを助けるために飛び込んでくれた。
結果は助からなかったけれど、最期にセルジュの顔が見られて、シャルリーヌはとても安心したのを覚えている。
最期に会えてよかったと思ったのを覚えている。
(セルジュ様があの時の記憶を持って今にいるということは、きっと彼も……)
シャルリーヌのせいで、死んだのだろう。
それはとても悔やまれるけれど、だからこそ、シャルリーヌはあの時とは違う形で生きている。
まだ、セルジュの妻でいられている。
今こうしてセルジュの側にいられて嬉しいと思ってしまう自分は、ひどい女だろうか。
一度目の人生で、大好きな人を巻き添えにしたのに。
「シャルリーヌ……?」
セルジュが綺麗な緑色の瞳を揺らしている。
まだ、信じられないのだろうか。
だったら、とっておきの言葉を言おう。
シャルリーヌは彼の頬をそっと撫でて、笑う。
「大好き」







