歪で、甘い 3
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すぐ顔の近くから、静かな寝息が聞こえてくる。
パーティーの日の夜から同じベッドを使うようになった夫の呼吸音だ。
シャルリーヌを腕の中に抱き込んで眠るセルジュの顔は、今日は穏やかだった。
時折つらそうに歪められていることもあるのだが、今日はいい夢を見ているようだ。
彼と二人で眠るようになって、もう二週間が経つ。
「……わたしを愛しているというのは、本当だったんですか?」
ふと、そんな言葉が口を突いて出た。
この二週間、セルジュは全力でシャルリーヌに愛を伝えている。そんな気がしたのだ。
彼が何を考えているのか、まだわからない部分は多い。
だけど、セルジュは何かを恐れていて、シャルリーヌを本当に愛しているかもしれない。
シャルリーヌは二週間でこの二つだけ、セルジュのことが理解できた気がする。
セルジュがあまりにも暗号について知りたがるから、彼に許可を取ってディアーヌに手紙を書いた。
セルジュは最初は嫌がったが、暗号がどうしても知りたいようで、その許可取りだけなら手紙を書いていいと言ったのだ。
ディアーヌからの返信はまだ来ていないが、恐らく許可は出るだろう。
アロイスがセルジュにディアーヌを排斥しようとしている貴族について教えたのならば、ディアーヌもセルジュを味方だと認識していると思う。
もしディアーヌがセルジュを疑うのならば、シャルリーヌにセルジュを調べろと指示を出すはずである。それがないのだから、ディアーヌにとってセルジュは警戒対象ではない。
暗号について教えたら、セルジュの様子は多少軟化するのだろうか。
部屋に閉じ込めて、見えない何かから守るようにシャルリーヌに張りつく彼は、少しくらいは肩の力を抜いてくれるようになるだろうか。
「ねえセルジュ様。この関係がおかしいことくらい、わかっていますよね?」
シャルリーヌとセルジュは夫婦だ。
けれど、今のこの関係は夫婦というにはあまりにも歪だった。
まるで世界にある他の存在を排斥するかのように、二人きりで部屋の中で過ごす。
シャルリーヌは見えない鎖でセルジュに繋がれているようだ。
そしてセルジュもまた、見えない鎖でシャルリーヌに繋がれている。彼にとってその鎖とは、恐怖だろうか。彼が恐れている何かが、彼をシャルリーヌに繋いでいる。
閉鎖された空間にいるから思考が麻痺してくるけれど、永遠にこうしていられるはずがない。
夫婦であり続けるつもりならば、互いが互いに信頼して尊重して、同じ目線を向いているべきだ。
夫婦をやめるのであればなおさら、この関係はおかしすぎる。
そっとセルジュの胸に耳をつけると、規則正しい鼓動が聞こえてきた。
彼の心臓の音を聞くのにも慣れた。
本当に、不思議な関係。
夫婦なのに夫婦じゃない。
だけど彼は甘くて優しくて――セルジュの腕の中で微睡む時間は、嫌いじゃない。
停滞した時間の中で揺蕩うようなこの関係が終わったとき、シャルリーヌとセルジュの関係はどこに向かうのだろう。
セルジュのことは、もうあんまり怖くない。
だけどやっぱりわからない。
もし、セルジュがシャルリーヌとこの先も夫婦であり続けることを望むのならば、彼が隠している秘密を教えてほしい。
そうしないとシャルリーヌは、またいつか、彼の腕の中から逃げたいと思うかもしれなくて――そうなったとき、彼が壊れてしまいそうで恐ろしかった。
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