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愛さないと言った夫が豹変しました~囚われたわたしが夫の真実を知るまで~  作者: 狭山ひびき


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3/9

豹変した夫の奇妙な行動 2

本日3回目の更新です。

次は明日の朝に更新します。

 シャルリーヌが離婚を決意したのは前日のことだった。

 一年、夫にも使用人にも放置されたシャルリーヌは限界だったのだ。

 ただ静かに暮らすだけならいざ知らず、彼等のシャルリーヌに対するこの扱いは人としての尊厳をも傷つけるものである。

 このままだときっと自分の心は病むだろう。

 そうなる前に、シャルリーヌは自分を守ることにしたのだ。


 ディアーヌもシャルリーヌとセルジュが白い結婚であると訴えれば、離婚に反対はしないだろう。駒が有用に動けないのならば、他の盤上に移したほうが有意義だからだ。合理的なディアーヌならばそう考えるはずである。


 だから、シャルリーヌは邸に帰って来ないセルジュに手紙を書くことにした。

 離縁してほしいとしたためた手紙と共に、離縁状もつけて送り付ける。

 使用人に頼んだところで出してはもらえないので、締め出される危険性があるが、シャルリーヌは久しぶりに外出することにした。


 ふと見上げた空が綺麗で、シャルリーヌはなんだか泣きそうになって来る。

 この一年、空を見上げる心の余裕すらなかったのだと気が付いたからだ。

 やはり、セルジュの元から去らなければシャルリーヌは頭がおかしくなってしまうだろう。

 一年で気づけただけましだったかもしれない。


 邸に帰って来ない夫は、シャルリーヌが離縁したいと言ってもすんなり了承するだろう。もともとシャルリーヌと結婚したくなかったのだ。顔すら見に来ないのだから、いなくなっても何も思うまい。


 城までゆっくり歩いて行ったシャルリーヌは、城の使用人に手紙を言づけてブラン伯爵家に帰った。

 幸いにして、今回はまだ日が高かったからか、玄関の鍵は閉められていなかった。

 手紙を出したところで、そのまま放置される危険性もある。

 シャルリーヌは侍女の仕事を休職中だが、ディアーヌがシャルリーヌの部屋をそのまま残していると言っていたから、ディアーヌに事情を話して侍女として復帰させてもらおう。


 そう決めたシャルリーヌは、すぐに荷造りを開始した。

 案外、手紙を読んだセルジュが荷造りをしている間にやってくるかもしれない。

 やって来なければ来ないでも構わないのだ。

 生活拠点を城に移せば、アロイスの側近である彼とディアーヌの侍女であるシャルリーヌは嫌でも顔を合わせることになるだろう。

 話ができそうならそのときに話せばいいし、相手が話したくなければ放っておく。

 シャルリーヌは離婚の意志を示したのだ。


 合理的なディアーヌはセルジュとの仲を取り持つよりシャルリーヌの次の相手を探すはず。

 ならば離婚は、ディアーヌが多少強引な手を使ってでも成立させるだろう。

 今度こそ、シャルリーヌは人並みの結婚生活を送りたい。

 そして、ディアーヌの役に立つのだ。駒としての働きをしなければ、何のために彼女の侍女としてこの国にやって来たのかわかったものではない。


 シャルリーヌは、役に立ちたいのだ。

 ソブール国の実家では、いらない者として扱われていた。

 シャルリーヌが周囲からの評価を受ければ、すごく迷惑な顔もされた。

 ディアーヌの侍女に決まった時も、義母からは実家の跡取りである異母弟の立場を脅かすつもりなのかと罵られたくらいだ。どうやら義母は、シャルリーヌが家督を狙っていると思っていたらしい。そんなつもりはないと、何度も説明したのに。


 誰の役にも立たない。それどころか邪魔でしかない。

 そんなシャルリーヌの人生は、ディアーヌの侍女となって一変した。

 ディアーヌはシャルリーヌが役に立つと喜んでくれるし、褒めてくれる。

 誰かの役に立つことが、喜んでもらえることがこんなにも嬉しいことなのかと、侍女になってはじめて知ったのだ。


 だから、ディアーヌの役に立ちたい。

 このままブラン伯爵家で過ごしていたら、役立たずの人生に逆戻りだ。

 絶対に抜け出す。


 シャルリーヌの決意は、固かった――





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