たとえ嫌われたとしても(SIDEセルジュ) 3
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「セルジュ! おい、大丈夫か⁉」
肩をゆすられてハッとした。
顔をあげればアロイスが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「付き合わせてすまない。体調が悪かったんだな」
「いえ、ちょっと頭痛がしただけですから」
まだかすかに痛むこめかみのあたりを押さえて首を横に振る。
そうだ。
そうだった。
一度目の人生で、シャルリーヌは賊に殺された。
オールポート伯爵邸に火が放たれていたが、シャルリーヌは血に濡れていた。
賊に斬られたのは間違いない。
(つまりあの賊が、ディアーヌ王太子妃を排除しようとする派閥の手の者だったとしたら?)
ディアーヌを孤立させるために、シャルリーヌの命を刈り取ったのだとしたら?
セルジュはぎりっと奥歯を噛んだ。
シャルリーヌと離縁しなければ。
彼女とオールポート伯爵を再婚させなければ。
それでシャルリーヌが守れるとセルジュは考えた。
だが足りない。
ディアーヌを排除しようという勢力が彼女の周囲の人間を狙うのならば、やり直したこの時間軸でもシャルリーヌは安全とは言い難いのだ。
(誰だ、いったい誰が仕向けた。誰が……シャルリーヌを殺した)
もう二度と彼女を失うわけにはいかない。
その結果、シャルリーヌに嫌われたとしても、それでもセルジュは今度こそ彼女を守り抜く。
「殿下、王太子妃殿下を排除しようとしている派閥の人間は把握していますか?」
「全部ではないし、派閥全体で動いているのかどうかもわからない。それにディアーヌを排除しようと考えているのは知っているが、現状で彼等を捕らえて尋問できるような材料があるわけではないんだ」
「それでも、把握しているだけでいいので情報をください」
「構わないが、妙な行動を取るなよ? あちらに警戒されると逆に動きにくくなる」
「それはわかっています」
セルジュにしても、シャルリーヌを殺害した犯人が特定できるまで不用意に動くつもりはない。相手を確実に捕えるには、焦りは禁物だ。
「あとでリストを届けさせよう。くれぐれも内密にしてくれ。それから、頭痛薬を持ってこさせるから、少し待て。どうせディアーヌの話はまだ時間がかかるだろうからな」
アロイスが使用人に頭痛薬を頼んでくれる。
水と一緒に小さな錠剤を煽り、しばらく休んでいると、使用人の一人がアロイスを呼びに来た。
「どうした?」
「それが、ディアーヌ王太子妃殿下の元に、バレ子爵夫妻とオールポート伯爵がいらっしゃいまして。それとなく殿下を呼ぶようにと妃殿下が」
オールポート伯爵。
その名前を聞いた瞬間に、一度目の人生で感じたどす黒い感情が蘇って来る。
あの男に嫁いだからシャルリーヌは死んだ。
シャルリーヌを幸せにできなかった男。
シャルリーヌを、セルジュから奪った男。
(ダメだ。あの男にシャルリーヌを近づけたら、絶対にダメだ)
もう二度と、セルジュからシャルリーヌを奪うことは、許さない。
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