夜会と警告 6
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椅子に座って飲み物を飲みながら休んでいると、気分は少し落ち着いてきた。
パーティーがはじまる時間になって、国王が挨拶をする。
社交シーズンはすでにはじまっていたが、今日の王家主催のパーティーを皮切りに、今年の社交は本格化していくのだ。
国王の挨拶が終わると、身分の順に王族への挨拶の列ができる。
シャルリーヌもセルジュと共に列へ向かった。
ブラン伯爵家は伯爵家の中でも家格が上の方なので、順番は前の方だ。
国王夫妻の横に、アロイス王太子とディアーヌ妃の姿がある。
凛とした表情で椅子に腰かけているディアーヌは記憶のままの通り堂々としており、憧れてしまう。聡明で勤勉な彼女は、すっかりこの国にも慣れたようで、挨拶に来る貴族を夫であるアロイスと共にそつなくさばいていた。
(ディアーヌ様……)
シャルリーヌを侍女にしてくれた人。
ソブール国での息苦しい実家の生活から、救い出してくれた人。
ディアーヌの侍女となってから、シャルリーヌは彼女の役に立とうと心に決めていた。
それなのに、この一年のシャルリーヌの働きといったら、目も当てられない役立たずだ。
ディアーヌはそんなシャルリーヌを見たら失望するだろうか。
(早く挽回しなくちゃ)
シャルリーヌにとってディアーヌは、生きるための道しるべなのだ。彼女に不要と言われたら、どうやって呼吸をしていいのかもわからなくなる。
ブラン伯爵家の順番が回って来て、シャルリーヌはセルジュと共にまず国王陛下夫妻に挨拶をした。
その後、アロイス王太子夫妻の元へ向かう。
「シャルリーヌ、久しぶりね。元気そうな姿が見られてホッとしたわ」
ディアーヌが優しく声をかけてくれたことに、シャルリーヌは心の底から安堵した。
ディアーヌの表情に嫌悪感はない。穏やかで温かで、シャルリーヌの存在を肯定してくれるいつもの優しい彼女のままだ。
「お久しぶりでございます、ディアーヌ様。長らくご無沙汰してしまい申し訳ございません」
「いいのよ。体調が悪かったと聞いているわ。本当は来年の春には侍女の仕事に復帰してほしかったけど、もう少し待った方がよさそうね」
ディアーヌがセルジュに視線を向けて、すっと目を細めた。
まるで、何かを検分しているときのような目つきだ。
けれどシャルリーヌは、ディアーヌの視線の動きも気にならないくらい動揺してしまった。彼女がシャルリーヌの侍女の復帰を望んでいたのだ。
「ディアーヌ様、わたしは――」
「シャルリーヌ、後ろが使えているから長話はしてはいけないよ。殿下、妃殿下、私たちはこれで」
「ああ。またあとでな」
体調など悪くないと主張しようとしたのに、セルジュが強引に挨拶の終了を告げる。
彼の言う通り、シャルリーヌがディアーヌの時間を長く奪ってはならない。このあとも挨拶は続くのだ。だけどせめて一言、自分は元気であると伝えたかった。そうしたらきっと、侍女の復帰の話も復活するはずだ。
悔しい思いで一礼し、セルジュに手を引かれてディアーヌたちの元から下がる。
シャルリーヌはつい、半歩先を行くセルジュの背中を恨めしそうに睨んでしまった。
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