夜会と警告 1
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セルジュに恐怖を感じてからというもの、シャルリーヌの中で、彼の考えを理解しようという気持ちは消え失せた。
これ以上深入りしてはならない。
そんな警告に似た何かが自分の胸の中で鳴り響いているからだ。
一度恐怖を覚えると、部屋に閉じ込められていることも怖くなる。
早くここから逃げ出さなければと、ここ数日、シャルリーヌはそればかり考えていた。
もし逃げ出すチャンスがあるならば、セルジュが仕事へ行っている時だ。
しかし、失敗は許されない。何故なら、セルジュは言ったからだ。「君が逃げるのならば、君の足を鎖でつながなければならなくなる」と。さすがに鎖で繋がれるのは怖すぎる。
機会は慎重に伺わなくてはならない。
ブラン伯爵家の使用人は、主であるセルジュの味方だ。シャルリーヌが情に訴えかけたところで、ここから逃がしてくれるとは思えない。
むしろ、逃げようとしたと告げ口されれば一発アウトだ。
(ディアーヌ様に助けを求められないかしら? だめね、手紙を出そうとしたら怪しまれるわ)
恐怖は、精神力をごりごりとすり減らす。
セルジュが買ってくれたリボンも、まるでシャルリーヌを繋ぐ枷のように思えてきた。
昨日は仕立屋が呼ばれて、セルジュが機嫌よくシャルリーヌのドレスを五着も注文していたが、着ていく場所もないのにそんなものを注文してどうするのだろうと、どこか冷めた気持ちになってしまった。
「シャルリーヌ、浮かない顔をしてどうした?」
「え? いえ、ちょっと寝不足なだけです」
うっかり朝食の席でぼんやりしてしまって、セルジュが心配そうな顔になる。
セルジュは心の底からシャルリーヌを心配しているように見えるのに、その表情すら得体が知れないものに思えてぞくりとした。
一度怖いと思うと、彼の笑顔すら怖く見える。
「寝不足? ……熱は?」
セルジュがすっと手を伸ばしてきて、シャルリーヌは思わずびくりとした。
肩を震わせたシャルリーヌに、セルジュがぎゅっと眉を寄せる。
(……怖い)
怒っているわけではないだろう。むしろ悲しそうに見える。だけどやはり怖いのだ。
セルジュが一度手を止めて、シャルリーヌを怯えさせないようにゆっくりと額に手を伸ばして来た。
「熱は、なさそうだな。体調が悪いのならそばについていてやりたいんだが、今日は外せない仕事があるんだ。何かあればユベールを呼ぶといい。……君専属のメイドについても、あらかた人選は終わっているから、もう少ししたら紹介するよ」
そう言えば、専属のメイドをつけると言っていた気がする。
メイドが来れば、少しはこの恐怖も和らぐだろうか。
それとも、逆に怖くなるのだろうか。
専属メイドが優しいとは限らない。
セルジュがいない間の監視役としてくるのならば、メイドにも心は許せない。
「寝不足なら食事が終わったら横になるといい。ここには、君が休んでいても文句を言うような人間は誰もいないよ。安心してゆっくりしてほしい」
ここに閉じ込められているから安心できないのだ。
そんなこと到底口には出せないが、シャルリーヌを精神的に追い詰めている本人にそのようなことを言われても、安心なんてできるはずがない。
「フルーツなら食べられるだろうか? 食が進まないようだが、少しは食べた方がいいよ」
そう言ってイチゴが盛り付けられた皿を差し出してくるセルジュに、シャルリーヌはぎこちなく微笑む。
怪しまれてはいけない。
警戒されてもいけない。
平然として、チャンスをうかがわなくては。
城の――ディアーヌの元に逃げることができれば、きっと、この恐怖から解放されるはずだから。
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