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セフィードのいとこ(3)


 一緒に選んだ砂糖菓子をいくつか買って店内で食べながら、私はふと思い出したことをセフィードに報告した。


「そういえば、今週末久々にパーティーに行くことになったの」

「パーティー?」


 唐突な私の言葉にセフィードは食べる手を止めてこちらを見る。

 私は頷きながら二つ目のお菓子を手に取った。


「そう、ギブリーゼ家主催のパーティー。ティールお兄様……二番目の兄に頼まれちゃって」

「ああ、ギブリーゼ家か。そういえばうちにも招待状が来てたな」


 セフィードの言葉に私は驚いて顔をあげた。


「え、もしかしてセフィードも行くの?」

「いや行かない。別のパーティーに先に出席する返事を出してたから、そっちは断った」

「そっかあ」


 少し肩を落とした私を見て、セフィードは不思議そうにする。


「何でがっかりしてるんだ?」

「ドレスアップしたところを見てもらいたかったなと思って」


 私の返事にセフィードは小さく笑い、視線を落としてお菓子をつまみながら言った。


「見に行こうか」

「え?」

「ドレスアップしたところ。ギブリーゼ家のパーティーは行かないけど、俺が出席する方のパーティーが終わった後にお前の家に寄ることはできる」


 無駄なことはしなそうなセフィードが、わざわざ私のドレス姿を見るためだけにそんな手間をかけるのが信じられなくて、私はまじまじとセフィードを見た。


「本気で言ってる?」

「なんだよ、見せたいんだろ?」

「そうだけど……」


 素直に喜んでいいのかわからなくて言葉尻を濁すと、セフィードは頬杖をついてこちらを見つめ返しながら言った。


「それに、俺も見たいから」


 宝石みたいなエメラルドの瞳にまっすぐ見つめられた上でそう言われて、赤くならない人なんているんだろうか?

 私は真っ赤になった顔をぱたぱたと仰ぎながら返事をした。


「あ、ありがとう?じゃあ、見に来てほしい……」

「ああ」


 頷いたセフィードは、満足そうに笑っていた。


******


 お菓子を食べ終わり、お店を出る。

 とくに行く当てもなくぶらぶらしていると、文房具を売っているお店の前でふとセフィードが立ち止まった。


「悪い、ちょっとここに用があるんだけど寄っていいか?」

「もちろん。私は外で待ってるよ。ごゆっくり」


 小さなお店だから、特に買うものがない私が入ったらきっと邪魔だろう。

 そう考えて外で待つことを提案した私にうなずいて、セフィードはお店に入って行った。


 お店の壁によりかかりながら、私はふー、と息をついた。

 セフィードとのお出かけは楽しいけど、心臓が常にドキドキしてせわしない。

 こうして休める時間が少しありがたかった。


 私が暇つぶしがてら足元にある石を蹴って遊んでいると、ふと目の前に影がかかる。

 首を傾げながら顔を上げて、私は小さく息をのんだ。


 いつの間にか私の目の前にさっきオスカー邸の窓から見たザルドが立っていた。


 目の前に立つザルドはとても背が高かった。

 セフィードも高いけれど、もしかしたらセフィードよりさらに高いかもしれない。肩くらいまである艶やかな金髪を無造作にまとめてスーツのような服を着崩したその姿は、近くで見るとチカチカするくらい眩しい。

 ミステリアスな群青色の三白眼のせいか、それともその目元にあるほくろのせいかわからないが、妙な色気まで漂っている。

 さすがセフィードの血縁と言うべきか、どうやらセフィードとは違う方向性でありながら、この男もかなりの美男子のようだ。


 ザルドは私を不躾な視線でじろじろと眺め、口を開いた。


「あんた、さっきオスカー邸にいたよな」

「……なんのことでしょう?」


 とりあえずごまかしてみるが、ザルドはふんと鼻で笑った。


「そんなださくてぼさぼさの三つ編み眼鏡女が何人もいるかよ」

「…………」


 ひどい言われようだ。

 私が口をつぐんでいると、ザルドは私に一歩距離を詰めて言葉を続けた。


「セフィードに彼女ができたって聞いたけど、まさかあんただったりする?」

「そうだけど」


 先輩だから敬語を使おうと思っていたけれど、あまりに失礼な物言いに私は思わず睨みながらそう返してしまった。

 警戒する私を面白そうに見て、ザルドはさらに近づいてくる。


「うーわ、まじかよ。あいつの趣味変わってんな」

「だったら何なの?」


 近寄られた分だけ後ずさって私は強気に返す。

 するとザルドは突然非常に冷たい目線になって私に言った。


「どうせあんたも見た目やら家柄やらで選ぶ馬鹿女だろ? うちの親そっくり。俺、あんたみたいなやつ大嫌いなんだよね。せいぜいセフィードに飽きられるまで楽しんでな」


 ザルドはそう言い捨てて、さっさと道の向こうに消えてしまった。


 残された私は一方的にぶつけられた悪意にただただ茫然とする。

 普通なら傷ついても仕方ない言葉を言われたが、それはザルドの勝手な憶測であって事実ではないため、全く私の心には響かなかった。

 それより、それを言うザルドの方がなんだか傷ついているように見えた気がする。


 文房具のお店から出てきたセフィードが心ここにあらずな様子の私を見て何事か聞いてくるが、私はなんとなくさっきの出来事を言う気になれなくて、「なんでもない」と答え、ごまかしてしまった。



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