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セフィードのいとこ(2)

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 オスカー邸で提供された昼食は、非常に美味しかった。


「前にうちのシェフを引き抜きたいようなこと言ってたけど、全然必要ないじゃん……!」


 私の言葉にセフィードは首を傾げて答える。


「それはそれ、これはこれだろ?」

「よくわからない」


「セフィード様、大変申し訳ありません。ちょっと……」


 わいわいと私たちが話しているところに、突然玄関で会った執事さんが入って来た。

 執事さんは申し訳なさそうに私に会釈すると、セフィードに近寄る。

 執事さんに何やら耳打ちされ、セフィードは少し眉をひそめたあと低い声で答えた。


「帰ってもらってくれ」

「そう申しているのですが、なかなか……」

「俺が出たらおそらく余計時間がかかる。悪いけど、対応は全て任せる」

「かしこまりました」


 執事さんが頷いて出て行くのを待って、私はセフィードに尋ねた。


「何かトラブル?」

「……たちの悪い親戚がちょっとな」


 そこからセフィードがぽつぽつ説明してくれたことによると、どうやらセフィードのお父さんの末の妹さん家族がアポなしでやってきて、家に入れてほしいと懇願しているらしい。

 末の妹さんは気の弱いだけの普通の人なのだが、旦那さんが野心家でこの家にできるだけ取り入りたくて仕方なく、定期的にやってくるのだとか。


「大財閥の家ともなると大変だね」

「ハーシェ家だって似たようなもんだろ?」

「そうなのかな?」


 私は我が家はどうだったか考えてみた。


「うーん……たしかに、トラブルがないわけじゃないかも。でもほとんど兄たちが解決してくれてるから、私が困ったことはない……のか」


 言いながら、私は改めて三兄弟の存在に感謝した。きっと私の気付かないところで解決してくれた問題もたくさんあるに違いない。


 私の心を読んだようにセフィードがこぼす。


「優秀な兄弟がいて羨ましいよ」

「セフィードも羨ましいって感情あるんだね」

「俺をなんだと思ってんの?」


 セフィードと言い合いながら、私は自分の席の近くにある窓からオスカー邸の玄関の方を見てみた。


 オスカー邸のダイニングは3階にあるため、玄関を見下ろす形になる。

 すると、そこに立っていた同年代くらいの男の子がこちらを見ていることに気が付いて、私は慌てて窓から体を離した。


「どうした?」


 私の様子を不審に思ったセフィードが尋ねてくる。


「同じ年くらいの人がいた。遠くて顔はよくわかんなかったけど、少し長めの明るい金髪の……」

「ああ。ザルドか」

「ザルド?」


 尋ね返した私に、セフィードは説明する。


「その夫婦の息子だよ。俺のいとこの一人で、同じラース学園の6年生」

「えっ!?すごく目立つかんじなのに、見たことない……」


 その明るい金髪は艶めいてきらきら輝いていたし、セフィードのいとこなだけあって遠目からでも顔が整っているのはなんとなくわかった。

 あんな人が学園にいたら、女子たちの噂になっているだろう。


「ザルドは学園に来てないから」

「不登校ってこと?」

「そうなるな」


 なるほど、それなら知られていなくても無理はない。

 この学園は何もしなくても落第はしないから、このままいけば不登校のままランダムに相手をあてがわれて卒業することになるのだろう。

 セフィードのいとこであれだけ見目が良ければ自分で相手を選べるだろうに、もったいないなと思いながら再度窓の外に目をやる。


 そこにはすでにザルドという男子の姿はなかった。


******


 私たちは念のため裏口からオスカー邸をあとにして、街歩きデートを始めた。

 時間もそんなにないため、今日はこの辺りを散策して解散する予定だ。


 歩きながら放課後の寄り道での会話を思い出して私はセフィードに話しかける。


「ねえ、セフィードが小さい頃によく行ってたっていうお菓子屋さん行きたい」

「ああ、そんな話もしたな。ならこっち」


 セフィードは私の手を取ると、ちょうど人の波が途切れた大通りを横断して小道に入った。


 セフィードに引っ張られるままに歩き続けると、やがてピンク色のかわいらしい看板が見えてきた。


「……あそこ」

「思ってたお店と違った!かわいい」


 たどり着いたのは、甘い砂糖菓子のお店だった。

 ピンクの看板には非常にメルヘンチックな店名が書かれ、店頭にカラフルな砂糖菓子がたくさん並べられている。

 小さい頃のセフィードがこのお店に足繫く通っていたのを想像するだけで、かわいらしさに悶え死にそうだ。


「そうだよね、セフィード甘いもの好きなんだもんね」

「……久しぶりに来たらちょっと記憶と違った」


 セフィードは片手で目を覆ってなにやら天を仰いでいるが、私はそれに構わずお店に駆け寄る。

 どれもふわふわでとてもおいしそうだ。


「わー、選べない!ちょっと、セフィードも一緒に選ぼうよ」

「…………」


 何やら微妙な表情で私を見ていたセフィードだったが、やがて観念したようにこちらに来てお菓子を選ぶのを手伝ってくれた。


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