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デート?(2)


 結局長兄が大量の姿絵を全て見せ終わる前に、しびれを切らした三番目の兄が長兄をひきずるようにして出て行く頃には、私の家にセフィードが到着して小一時間は経ってしまっていた。


「ごめん、かなり遅くなっちゃったね」


 セフィードが乗って来た馬車に乗り込みながら、私は言う。

 彼は首を横に振ってこたえた。


「いや、かなり有意義な時間だった」


 主に長兄が騒いでいるだけの時間だった思うけど、どのへんがだろう?

 私は首を傾げつつも、特に深堀りすることなく話題を変えた。


「ところで、今日はどこへ行くの?」


 馬車の奥側に座った私の隣に腰をおろしつつ、セフィードは答える。


「ティールバーグ庭園」

「えっ、うそっ!?」


 セフィードの答えに、私は思わず口に手を当てて驚いた。

 

 ティールバーグ庭園とは、最先端の空調管理設備でどの季節に行っても全国四季折々の花が見られることで有名な、この国有数の観光地兼デートスポットである。

 庭園の中にはカフェやレストランも併設されており、景色を見ながら食事をとることもできるらしい。あまりの人気に、訪れる際は予約をしないと入れないことでも知られていた。


「1年先まで予約でいっぱいって聞いたけど……」

「そこはなんとか。あそこ、オスカー財閥が経営してるから」

「そうだったの!?」


 そういえばそういう話を聞いたこともあったかもしれない。

 ティールバーグ庭園が完成したのは2年前だが、当時三番目の兄がオスカー財閥の名前を出しながら何やら熱心に父と議論していた場面を、今更ながら思い出した。


「ええ、すごい……。私行くの初めて。セフィードは当然行ったことがあるんだよね?」

「まあ、視察もかねて何度か」

「そっかー。うわあ、うれしい」


 まさかそんなロマンチックな場所に連れて行ってもらえるとは思わなかった。

 勝手なイメージで失礼だけど、セフィードはそのへんの機微に疎そうな気がしていたのだ。


 しかし、喜びで頬をゆるませる私の横でセフィードは若干気まずそうに言う。


「喜んでもらえて嬉しいけど、俺の用事に付き合ってもらうだけだから」

「用事って?」

「それは……着いてから説明する」


 煮え切らない返事に私は首を傾げたが、おそらく今問いただしてもセフィードは答えてくれないだろう。

 セフィードの用事が何であれ、一緒にティールバーグ庭園に行けるのはやっぱり単純に嬉しい。

 私は胸を弾ませながら、馬車の窓から見える雪がちらつく庭園までの景色を楽しんだ。



******



「うわあ、広いんだね……!」


 受付を済ませて庭園に一歩足を踏み入れた私は、思わず感嘆の声を漏らした。


 ティールバーグ庭園は、巨大なドーム型の透明な屋根に覆われた屋内施設だった。

 空を見上げれば雪が降っているのに、庭園内はコートを脱いでもちょうどよいくらいの暖かさで、なんだかとても不思議な感覚だ。

 広い庭園内にはぽつぽつといくつかおしゃれな建物が見えるが、それがおそらくカフェやレストランなのだろう。建物の中に建物があるのも面白い。


 ちなみに受付はセフィードの顔パスである。事前に話が通っているらしく、受付のおねえさんに生暖かい笑顔で「どうぞごゆっくりお楽しみください」なんて言われてしまった。


 私の横に立ったセフィードは飄々とした態度で説明をする。


「今手前のエリアでは、南の地域の植物特集をやってる。その奥は春の植物から順番に並んでるから、まず手前を散策して奥に行く形でいいか?」

「うん、いいよいいよ!わ、川とか滝とか吊り橋とかもあるんだね」

「できるだけその植物の生育環境に近い形を作ってるからな」

「すごいね、この庭園に来るだけで旅行した気分になれちゃう」


 これはこの庭園が1年先まで予約で埋まるほど人気が出るわけだ。


 顔を輝かせる私を見て、セフィードはふ、と笑みを漏らした。

 エメラルドグリーンの瞳を細めて甘やかな笑みを浮かべるセフィードに、思わず目を奪われてどきっとする。


「マフルはいつも楽しそうだよな」

「え、うん、セフィードといると楽しいよ?」

「……」


 私の返事にセフィードは驚いたような表情をしたあと、眉をしかめてそっぽを向いた。

 セフィードの突然の表情の変化についていけず、セフィードが顔を向けた方にまわりこんでみるも、また逆の方向を向かれてしまった。


「……なんでいつも反撃されるんだ……」

「え?なに?なんか言った?」

「なんでもない」


 セフィードの言葉が聞こえなくて、尚もセフィードの正面に回り込もうとする私の手を、セフィードは突然ぱしっと掴む。


「行くぞ」

「わっ、待って、転ぶ!」


 そしてそのままずんずん進んでいくので、私は彼に手を引かれたまま小走りで着いていく羽目になった。


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