デートの相手
「今回の演劇祭の優勝学年は……二年生です!」
全部の学年の劇が終わり、審査員によって結果発表が行われると、私たちの学年は飛び上がって喜んだ。
私も衣装係の面々と抱き合って喜びを分かち合う。
「がんばったかいがあったねー!セフィード様とシャーリーさんに華がでたのは絶対私たちのおかげっ!」
「うんうん!私たちがんばった!」
自画自賛でも間違っていない。私を含めて、ここにいる全員が衣装を完璧に仕上げるために毎日頑張った。
ぴょんぴょん飛び跳ねて一番喜んでいる様子のアーリちゃんをほほえましい目で見ながら、私はセフィードのいる方をこっそりうかがう。
セフィードは今誰よりもたくさんの人に囲まれていた。なかには、違う学年の人も混ざっている。
「やっぱお前を主役にしてよかった!」
「セフィード様のおかげですね!ありがとうございます!」
「先輩、優勝おめでとうございます!」
「一言!主役から一言!!」
男子にも女子にも囲まれる彼の人気は本当にすさまじい。
しかし周りのテンションに反して、彼はため息をつきながら言った。
「一言なんてねーよ。俺より頑張ってたやつたくさんいるだろ」
優勝した学年の主役とは思えないノリの悪い言葉だったが、それでも場は一層盛り上がった。
「謙虚!この人謙虚です!!」
「お前のそういうとこ好きだぜー!」
わいわい周りが騒ぐ中、一人の女子の言葉に場は一瞬静まり返った。
「デート権はどうするんですか?セフィード様、デート権は誰と!?」
その場にいた全員が一度口をつぐみ、それからさっきより激しくざわめき出す。
「やっぱシャーリー・アストンじゃね?!」
「あれ、そういえばシャーリーさんどこ?」
「わかんねーぞ?もっと別の本命がいるのかも」
一同はひと通り考えを話し合った後、答えを求めてセフィードを見た。
セフィードは彼らからの期待に面倒くさそうな表情で視線を上げる。
彼の緑の瞳と私の視線がぶつかった。
私の心臓がどくんと大きな音をたてる。
え?ここで言っちゃうの?ばらしちゃうの?
しかしセフィードが口を開こうとしたそのとき、司会者の声が会場に響き渡った。
「はい、二年生、喜ぶのもいいですが、そろそろ演劇祭を締めますので一度席に戻ってください!」
司会者の言葉に、セフィードを取り囲んでいた面々が残念そうにがやがやと散らばって行く。
私はそれを見ながら、ほっと胸をなでおろしていた。
******
しかし、安心するには早かった。
人目を避けて合流し、一緒に帰った私とセフィードは、先日寄り道したときのベンチに腰かけていた。手にはこちらも先日と同じ、お菓子の袋。
しかしセフィードのもう片方の手は、私の頬をつまみあげていた。
「いひゃいいひゃい、なんで!?」
「お前さっき、安心したな?理由を言ってみろ」
「ひゃ、ひゃべれないよ」
セフィードの腕をつかみながら言うと、セフィードはぱっと頬から手を放す。
私は頬をさすって言った。
「だって絶対大騒ぎになるじゃん。こんな地味な女が相手なんて許せないとか言われそうだし」
この間、一緒に帰っただけで詰め寄られたのだ。恋人になったなんて知られたら、何を言われるかわからない。
唇をとがらせて言う私を見て、セフィードは眉をひそめた。
「許すも許さないも、他のやつらは関係ないけど」
「その通りなんだけどね」
身も蓋もないセフィードの言葉に、私は苦笑する。
セフィードは私をじっと見てから、ふっと息をついて話を切り替えた。
「ところでお前、週明けの登園日は空いてる?」
「週明け?学園終わったあとなら暇だよ」
「そうじゃなくて、そこで今回のデート権使いたいんだけど」
もしかしなくとも今、私はセフィードにデートに誘われているのだろうか。
驚きと嬉しさで、頬がかっと熱くなる。なんだか本当に恋人みたいだ。いや、恋人だけど。
「使うの早くない?」
ドキドキをごまかすための私の言葉に、セフィードは首をすくめてみせた。
「ちょっと早めにやっときたいことがあって。悪いけどそれに付き合ってほしい」
「? いいけど……。それなら明日とか、もっと早い方がいいんじゃないの?」
「いや、実は、今週は家の用事で残り全部学園を休む予定なんだ」
そうだったのか。
今週はあと3日だけど、週末も含めて今日から5日会えないようだ。恋人になったばかりでしばらく会えないのは寂しいが、次に会うときはデートだと思うと心も浮き立つ。
セフィードのやっておきたいこと、というのも気になるが、それなら私もそのときセフィードにカミングアウトしたいことがある。私の外見のことだ。
私は笑ってうなずいた。
「わかった、じゃあ週明けね。デート権は私から先生に申請出しとく」
「助かる。当日はお前の家まで迎えに行くから」
私が笑顔になったのを見て、セフィードもうっすらと笑みを浮かべてくれた。
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誤字報告も非常にありがたいです。
改めて次回から両思い編となります。
引き続きお付き合いいただけるととても嬉しいです!




