演劇祭当日(6)
衣装を着替えなければいけないセフィードとは別れ、一人で講堂に戻った私は、赤い顔のままライシーのもとへふらふら近寄った。舞台はちょうど、三年の劇と四年の劇の幕間だった。
戻って来た私をみて、ライシーはいぶかしげに眉をひそめる。
「マフルどこ行ってたの?なにその呆けた顔」
「セフィードに告白してきた……」
ライシーの横にどさっと座ってつぶやくと、ライシーははじめ私の言葉の意味がのみこめなかった様子だったが、だんだん目を見開いて口をぽかんと開けた。
「え……ええええ!?」
「それで、付き合うことになった」
「えええええええええ!!!!」
ライシーは文字通り椅子から飛び上がって驚いた。
私たちの周りの席の生徒たちが何事かと目を丸くしてこちらを見る。
ローシャくんにも私の声は聞こえていたようで、いつもにこにこしている彼が驚愕した顔になっていた。
「な、なにその急展開!?!?ちょっと、詳しく聞かせて!!外行こ!!」
言いながらライシーは立ち上がり、私を引っ張る。
「え、でも」
渋る私に、素早く表情を戻したローシャくんが笑って手を振ってみせた。
「この場所は取っておくから、話が終わったら戻っておいで」
「そういうこと!!劇とかもうどうでもいいから!早く!!」
私はライシーに引っ張られるままに、戻ってきたばかりの講堂を後にした。
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ライシーに連れ出された私は、外のベンチで彼女に詰め寄られていた。
「さあ、詳しく話してもらおうか?」
「いや、えーと、さっき話した通りなんだけど……」
なんだか詳しく説明するのが照れくさくて私がそうごまかすと、ライシーは胡乱気な目で私を見る。
「ていうか、マフル、またいろいろ私に内緒にしたね?」
「えっと……はい。ごめんなさい」
私は少し迷ったあと、ライシーの方を向いて口を開いた。
「実は、私ずっとセフィードがシャーリーのことを好きなんだと勘違いしてて。セフィードに協力するつもりだったから、ライシーにも言えなかったの。ごめん」
「なるほどねー」
ライシーは合点したようにうなずいてから、にやっと笑う。
「だけど、それでもセフィード様に伝えたくなるほど好きになっちゃったんだ?」
「うっ……えっと、そう、だね」
「それで、セフィード様もマフルのことを好きだと?」
「……うん」
改めてライシーから言われるとやっぱり恥ずかしい。
俯きながら答えた私に、ライシーがえいっと体当たりしてきた。
「この学園で一番人気の男を手に入れるなんて、マフルすごいじゃん!さすが私の親友!」
「その言い方……」
私が体当たりされた場所をさすりながらライシーを見ると、ライシーは楽し気にあははと笑った。
「間違ってないでしょ?」
「そうだけど」
ライシーにあのことを伝えるには、今しかないかもしれない。
私はぐっと手を一度握ってから、ライシーに向き直った。
「あの、ライシー、実はもうひとつ内緒にしてたことがあるの」
「え?なに?」
目を丸くしてこちらを見てくるライシーの前で、私は自分のおさげ髪に手をやってぐいっと引っ張った。
黒髪おさげのカツラが取れて、中からふわふわのピンクの髪が現れる。
さらに、眼鏡をとって眉毛をこすりおとしてみせると、ライシーは目を零れ落ちそうなくらい見開いて驚いた顔をしてみせた。
私を上から下まで何度も往復して眺めた後、やっと彼女は口を開く。
「ど、どういうこと?天使じゃん」
「いや、天使は言い過ぎ」
思わず笑ってそう突っ込んでから、私は外見を偽るに至った理由をぽつぽつとライシーに話した。
ライシーは真剣な顔で私の話を最後まで聞いてくれた。
「そっかー。そういうことがあったんなら、マフルの気持ちもわからないこともないかな。
……それにしても、なんかマフルと話してる気がしなくて緊張する」
「それはごめん」
謝った私をじっと見てから、ライシーはふと首をかしげて尋ねた。
「セフィード様はこのこと知ってるの?というか、恋人ができたならもう隠さなくていいよね?どうするの」
「セフィードにはまだ言ってないけど、近いうちに話すつもり。みんなを混乱させても申し訳ないし、卒業までは地味な姿で通すかな……」
私の言葉にライシーはうんうん、と頷いた。
「マフルはマフルだしね。マフルのしたいようにしたらいいよ。誰より最初に話してくれてありがとね」
そう言ってくれる友人がいて私は本当に幸せ者だと思う。私が微笑んでみせると、ライシーは両手で目を覆った。
「いや、やめて!美少女のほほえみとか目が焼けちゃう!」
「それは言い過ぎ」
その後、セフィードとの出会いからのあれこれを洗いざらい吐かされてから、カツラとめがねを付け直した私とライシーは連れ立ってローシャくんの待つ講堂へと戻った。




