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演劇祭当日(1)


 演劇祭当日は、雲一つない青空が天いっぱいに広がるとても良い天気となった。

 朝もいつもより少し暖かくて、もう少しで春になる気配がする。

 私は衣装係としての最後の仕事をするために少し早い時間から学園へと急いでいた。


 あれから数週間が過ぎたが、セフィードとは一度も話せていない。

 もしセフィードと話していても、途中でシャーリーが来たらまた譲らなくてはいけないかと思うと気が重くなってなかなか私からは話しかけられなかった。

 セフィードもセフィードで、主役ということもあってかなり忙しいようで向こうから私にわざわざ話しかけてくることもない。

 先日の一件で衣装係の女の子たちもセフィードに慣れたのか、今では用があるときにセフィードに話しかけに行く係の奪い合いだ。

 結局彼が毎日朝早くから帰る時間ぎりぎりまで練習に励んでいる様子を、ばれないようにこっそり見つめることくらいしかできなかった。



 本番の会場となる講堂では、すでにたくさんの生徒が今日の公演の準備に勤しんでいた。

 ちなみに一応本番の出来には得点が付けられ、一番得点が高かった学年には一人一人にデートで一日授業を休む権利が与えられることになっている。だから、恋人のいる生徒、もしくは良い雰囲気の相手がいる生徒は特に張り切って準備していた。


「マフルちゃん、おはよう!」

「おはよう」


 先に来ていたアーリちゃんに挨拶を返す。

 アーリちゃんはシャーリーの衣装にきらきら輝く石の装飾を縫い付けていた。


「何か手伝う?」

「ううん、平気!もう終わるよ」


 アーリちゃんはそう言いながら、いつもの手際の良さで最後の装飾を付け終わる。

 糸を切って一通り点検したあと、私にその衣装を渡してきた。


「私もうひとつ仕上げちゃうから、マフルちゃんはこれをシャーリーさんに届けてもらってもいい?」

「うん、わかった」


 キャストは今日も全員早い時間から集合してリハーサルをしているはずだ。

 私はキャストが集まる控室へと足を向けた。


 控室にはおそらくセフィードもいるだろう。

 もし目が合ったら、久しぶりに話ができるかな……なんて考えながら廊下の角を曲がる。

 しかし残念なことに、シャーリーは控室の外にいた。


 シャーリーは私を見つけて、にこやかに手を振る。


「おはようマフル」

「おはよう。こんなところで何してるの?」


 私が尋ねると、シャーリーは控室を指さしながら言った。


「今中で私に関係ない場面の打ち合わせをしてて暇だから出てきたのよ。マフルはどうしたの?」


 シャーリーに問われ、私は手に持っていた衣装を差し出す。


「私はこれをシャーリーに届けに来たの。はい、これ」


 シャーリーは私が渡した衣装を広げると、目を輝かせた。


「うわあ、きれいな衣装!随分細かな装飾がついているのね?」

「あ、うん、スポットライトが当たるといろんな色にきらきら光ると思う」

「素敵だわ」


 どうやらシャーリーは衣装の仕上がりがお気に召したようだ。

 嬉しそうに衣装を見つめるシャーリーに私は言う。


「今日、がんばってね。たくさん練習してたから大丈夫だと思うけど」


 そうして踵を返しかけた私の手を、シャーリーが掴んだ。

 私が驚いて振り返ると、シャーリーは少し迷ったように瞳を揺らしたあと私をじっと見つめ、言った。


「マフル、あなたには言っておくわ。私今日舞台が終わったら、セフィードに告白する。協力してくれてありがとね」

「あ、そうなの、うん、がんばって」


 私はなんでもないようにシャーリーに返事をしながら、心の中は動揺しきっていた。

 まだ二人が付き合っていなかったことにほっとしつつ、でも今日シャーリーが告白してしまったら確実に二人は付き合うことになるだろう。


 今までは、自分が距離を取っているうちにそうなってくれていたらいいと思っていた。そしたら、自分は二人にとって部外者であることが実感できて、はやくセフィードを諦められるだろうと思っていたから。

 だけどこうして宣言されると、どうしても止めたくなってしまう。


 シャーリーを掴んで、揺さぶって、セフィードを私からとらないでと懇願したくなってしまう。


 私は自分の中のそんな衝動を必死に押さえつけながら、シャーリーに背を向けた。


「じゃあ、私はまだ他の仕事あるから。またね」

「ええ。ありがとう、がんばるわ」


 嬉しそうにそう言ってくれるシャーリーだったが、私はどうしてもシャーリーの顔を見ることはできなくて、後ろ手に手を振りながらその場をあとにした。

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