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くすぶる気持ち


「これで全部測れたと思う!セフィード、ありがとう」

「どういたしまして」


 なんとか計測を終えた私は、ほっとしつつセフィードにお礼を言った。

 セフィードはメジャーを巻き取りながら、目だけこちらへ向けて返事をしてくれる。


 そこへ、片手に台本を持ったシャーリーが小走りでやってきた。


「セフィード、こんなところにいたのね」


 シャーリーは言いながら、自然にセフィードの腕に触れる。

 セフィードがシャーリーの方を振り向くと彼女は無邪気な笑顔を浮かべた。


「もうすぐまたセフィードの出番よ。監督役の子が捜してたわ」

「……わかった」


 セフィードは素直にうなずくと、私に向き直った。


「あとは?」

「あ、あとは、しばらく大丈夫だと思う」

「わかった。お疲れ」


 セフィードは私の頭をぐしゃっと撫でて、口端で笑ってみせた。

 そんな私たちの会話を傍らで聞いていたシャーリーが、焦れたようにセフィードの腕を引く。


「早く早く!みんな待ってるから!ごめんね、マフル」

「いえいえ」


 シャーリーに腕を引かれるままにセフィードは去って行った。


 私はそれを見て、なんだかもやもやした気持ちになる。

 でも、よく考えたらセフィードはシャーリーが好きなのだ。

 たとえシャーリーに彼氏がいるにしても、二人が仲良くしていることは喜ぶことではあっても嫌な気持ちになることではない……はず。


 私は自分の中にくすぶる負の感情を断ち切るために、二人に背を向けた。



******


「はい、測ってきたよ」


 私がセフィードのサイズを書いた紙を衣装係の子たちに渡すと、皆その紙にわらわらと集まってきた。


「わー、やっぱりスタイルいいー!足ながっ」

「腕も長いねー。見た目より肩幅もある」


 紙をのぞきこんで楽しそうに話す女の子たち。

 そのうちの一人がこちらを振り向いて言った。


「マフルちゃん、よくセフィード様と普通に話せるよね」

「え?だって友達だよ?」

「むりー!まず同じ人類に見えない!」


 人間扱いされないなんて、セフィードも大変だな、なんて思いながら私は苦笑いを浮かべた。



 衣装を作るには、まず型紙を作ってそれに合わせて布を裁断しなければならないらしい。

 それができたら仮縫いして、キャストの体に合わせて調節をしていくとのことだ。


 私は裁縫初心者なので、型紙づくりは慣れている子に任せて布の裁断をさせてもらうことにした。


「型紙づくりは少し時間がかかるから、マフルちゃんはゆっくりしてていいよー!」

「わかった」


 事実上の戦力外通告である。

 急に暇になってしまった私は、なんとなくキャストが練習している風景に目を向けた。

 今はちょうど勇者がドラゴンと戦うシーンを練習しているようで、舞台上にはセフィードしか立っていない。

 ドラゴンの張りぼてはまだできていないので、セフィードは振付担当の指示を受けながら何もないところに向かって剣を振るっている。

 しかしその動きもなかなか様になっていてかっこいい。


 しばらく舞台を眺めていた私は、私を呼ぶ声に我に返った。


「おーい、マフルちゃーん!」

「あ、ごめん!なに?」

「ごめんね、ちょっとここ抑えててくれる?」

「わかった」


 私ってば、何をぼーっとしてたんだろう。

 どうして気付くとセフィードを目で追ってしまっているんだろう。

 本当はわかっているはずなのに、気付きたくない。


 その後、私は意識して舞台の方を見ないようにしながら作業を進めていった。



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