衣装係
「ごめん、遅れました」
私がそう声をかけながら衣装係の輪に入ると、そこにいた女子たちは全員笑顔をみせてくれた。
「あっ!マフルさん!よかった、来てくれた~!」
必要以上に歓迎される雰囲気に私は思わず戸惑う。
困惑する私に、女子のうちの一人が説明した。
「ほら、マフルさんってセフィード様と仲いいでしょ?だから、私たち衣装係とセフィード様の連絡係になってもらいたいの!」
「え?」
話がよく見えなくて聞き返すと、別の方向からさらなる説明が入る。
「私たちじゃ恐れ多くてセフィード様とお話できないの。サイズ測ったりなんてもっての外だし。だからそれを全部マフルさんにやってもらいたくて」
「来てくれてよかった~。初日から休まれちゃったらどうしようかと思った」
要は、ここに集まった女の子たちはわりと奥手な子しかいなくて、セフィードと話すなんて絶対無理だし、話をして怖い女子に目をつけられるのも嫌だから、セフィードとのやりとりを私に全部引き受けてもらいたいらしい。
どうやら裁縫に特に適性のない私が衣装係に推薦されたのも、この辺が理由のようだ。
「マフルさんはセフィード様とお友達って噂だし、それにマフルちゃんならなんとなく安心……」
それはセフィードとどうこうなる心配がなくて安心、という意味なのか。
自分から話しかけることもできないくせに、セフィードと誰かが付き合うのは不安だなんて馬鹿馬鹿しいと思いながらも、波風を立てたくない私は笑顔を張り付けてうなずいた。
「わかった、いいよ」
「きゃー、ありがとう!作るのは私たちががんばるからね!」
「いや、作るのもちゃんとやるよ」
「マフルちゃんて見た目通り真面目なんだね!一緒にがんばろうね!」
よくわからないけれど、私はこのチームにかなり好意的に受け入れられているらしい。
初回に遅刻してしまったけれど衣装係としての私の滑り出しはまずまずのようで、私はこっそりと安堵の息をついた。
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「セフィード、ちょっと来てくれる?」
キャストたちの練習の合間を縫って、私は計測のためにセフィードを呼び出す。
セフィードは片眉をひょいと上げて、私の元へ来てくれた。
「忙しいところごめんね。サイズ測らせてね」
私は服を作ったことがないから、人の幅を計測するのも初めてだ。
手足の長さに肩幅、バスト、ウエスト、ヒップ、背丈、手首周り等、私が思っていたより測るところがたくさんあって、私はちょこまかとセフィードの周りを動き回る。
セフィードも、淡々とそれに協力してくれた。
しかし、手、足、肩幅、と測ってウエストの番になり、私はやらかした。
測るのに夢中になって、気づいたらセフィードに抱き着くような形になってしまっていたのだ。
「ご、ごめん!」
慌てて離れた私だったが、セフィードの顔を見て少し驚く。
セフィードも、ほんのりと顔が赤くなっていたからだ。
てっきり彼は私に抱き着かれたくらいでは動じないと思っていた。
「次はチェストだろ。貸せ、自分でやる」
セフィードは赤くなった顔を隠すように片手で口元を覆うと、私からメジャーを奪いとる。
私はそんなセフィードがなんだかかわいく見えて、こっそり笑いながら自分の胸周りにメジャーをまわして計測するセフィードを見守った。




