寄り道
私の家の近くの揚げ菓子屋は、私たちが普段主食で食べているものを小さく切って揚げたものに、色々な味をつけて販売している。シンプルな味もあれば、辛い味や甘い味もあったりして、食べ比べてみるのも楽しい。
この近辺では割と人気のお店なので、私たちが着いたときには少し列ができていた。
私たちは並びながら、話をする。
「俺こういう店来るの久しぶりかも」
「普段はもっと高級店ばっかり?」
「そうだな、取り寄せとか。でも小さい頃はこういうとこの方が好きでよく行ってた気がする」
いつになく饒舌なセフィードになんだか嬉しくなりながら、私はうなずいた。
「わかるよ。私も普段買い物は人任せだけど、ここは私が小さい頃からあるからずっと自分で通ってる」
「……へえ。どの味がおすすめ?」
セフィードの質問に、私は顎に手をあて考えた。
「うーん。どれもおいしいんだよね。その日の気分によって変えたいというか。あ、でもなんとなくセフィードには辛いやつが好みにあいそう」
話している間に列はさくさく進み、すぐに私たちの番になった。
「いらっしゃい。どの味にする?」
ひょろりと背の高い店長のおじさんが、愛想よく声をかけてくる。
「私はこの新作で!セフィードはどうする?」
セフィードはずらりといろんな味の揚げ菓子が並んだショーケースを一通り眺め、言った。
「お前のおすすめの辛いやつ」
「わかった!おじさん、あと、辛いやつお願いします」
「はいよー」
手際よくお菓子を袋に詰めて渡してくれたおじさんにお金を渡し、私たちは店を出る。
私はそのままセフィードを引っ張って、近くのベンチへ連れて行った。
「ちょっと食べてみようよ!私もこの新作は食べるの初めて」
はい、とセフィードに辛い味の揚げ菓子が入った袋を手渡し、自分も袋を開く。
新作は酸味が弱めな酢と胡椒で味付けしたもののようで、開いた瞬間酢の独特な香りが広がった。
「わー、おいしそう!いただきます」
口に入れた瞬間、酸味と胡椒の刺激が伝わってくる。どちらも主張しすぎず、とてもおいしい。
私が味わっていると、同じように食べたセフィードが言った。
「あ、ほんとにうまいな」
「でしょ!好きだと思った」
セフィードは、もうひとつ手に取って口に入れると、袋を閉じた。
「ありがと。残りは後で食べるわ」
「ううん、こちらこそ、先輩とのこと本当にありがとう」
私の言葉にセフィードはうっすらと微笑む。
その表情は、言葉にされなくても「がんばったな」と言われているようで、なんだか胸がいっぱいになって私は彼から顔をそむけた。
「そ、そういえば、セフィードは結局シャーリーさんと付き合ってるの?」
「はい?付き合ってないけど」
気持ちをごまかすようにそう尋ねた私に、セフィードは答えを返す。
私はびっくりして言った。
「えっ?だって、降光祭誘われたんだよね?」
「それと付き合うのとは関係ないだろ」
そういうものなのだろうか?私は首をひねった。
セフィードがシャーリーさんと付き合っていないということは、シャーリーさんの“次”は全く違う人物ということなのだろうか。
ぼんやり考え事をする私の様子を見て、セフィードは不機嫌な顔でお菓子の袋を手に取り立ち上がる。
「この話終わり。そろそろ帰る」
「あ、うん。じゃあ、また明日」
唐突に話を終わらせたセフィードに手を振ると、彼もひらひらと手を振って自分の家の方向へ去って行った。
彼の背中を見送ってから私も立ちあがる。
セフィードがシャーリーさんと付き合っていないと聞いて心が軽くなったことには、気づかないふりをした。




