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先輩の本音



「――ごめん、ありがとう」


 しばらく泣いて、だんだん恥ずかしくなってきた私はセフィードの体を押すようにして離れる。

 セフィードのそばで泣けたことで、暗かった気持ちが何故かだいぶすっきりしていた。


「もう昼休み終わったから、このままさぼるか」


 私が泣いた理由は明白だったのだろう、そこには触れないままセフィードが言う。

 私はポケットから出したハンカチでぬれた頬をふきながら笑った。


「セフィードは、よくさぼるの?」

「たまに」


 あっけらかんと言う彼は、本当にさぼることをなんとも思ってなさそうだ。

 ふふ、と声に出して笑ったあと、彼の制服を見て唐突に焦る。


「ご、ごめん!制服びしょびしょにしちゃった」

「いいよ、これくらい」

「いや、これは駄目でしょ……!どうしよう」


 慌ててハンカチで拭いてみるが、濡れている場所が目立つのは変わらない。

 というか、鼻水もついていそうで申し訳ない。

 意を決して私は言う。


「脱いで」

「は?変態じゃん」

「そういうのいいから!セーター持ってるよね?そっち着て。これは、脱いで。私家で洗ってくる」


 なかなか動かないセフィードに、私は無理やりボタンに手をかける。

 するとさすがのセフィードも焦った声をあげた。


「わかった、わかったから!とりあえず教室戻らないとセーターないって」

「じゃあ早く戻ろ」


 私はセフィードの手を引くようにして歩き出す。


 しかし、しばらく歩いたところで私は思わず足を止めた。


 進む先に、なんという偶然か、マルディー先輩の姿があったのだ。


 先輩はどうやら運動の授業の待ち時間のようで、友達と談笑している。

 気付かれないように通り抜けようとしたが、先輩たちの次の会話に再び立ち止まった。


「そういや、昨日はどうだったよ」

「いやー、やっぱり告白されたわ」


 よりによって私の話題のようだ。

 聞きたくない、と思い、先に進もうとしたがそんな私をセフィードが引っ張って止める。


 会話はさらに続けられた。


「まじかよ!で、どうしたん?」

「悩んだけど、付き合わないことにした」

「えー、そっか、やっぱそうだよな。さすがに、あれはナイよなぁ」

「いや、彼女、悪い子じゃないよ?悪い子じゃないんだけど……やっぱり恋愛対象には見れなかったんだよな……。俺が言うのもおこがましいけどさ」

「わかるって。俺だって自分の外見わかってるけど、付き合う子はそれなりにかわいい子がいいもんなー。そこは譲れないわ」

「うん。まあ、ぶっちゃけ最初から恋愛対象にみれないのはわかってたんだけど、一度降光祭で居残り組じゃない方にまわる優越感味わいたくて仲良くしてたとこもあったのかも」

「別にいいだろ、それくらい」

「……ほんと、俺なんか好きになってくれるようないい子、なかなかいないのはわかってんだけどね。まあ卒業まであがいてみるわ。それでだめなら諦める。研究も楽しいしな」

「くぅぅ、マルディー、俺も付き合うぜー」


 セフィードはここまで聞いて、今度は逆に私の手を引き、先輩のいない方へと歩き出した。


 しばらく歩いて先輩が見えなくなったところで、こちらを振り返る。


「ごめん、いやな話聞かせた」

「ううん、いいよ。逆にすっきりした。聞けてよかった」


 そう、マルディー先輩とその友人のあけすけな会話は、私の残っていた失恋の悲しみを吹き飛ばした。

 だって、彼はつまり、こう言ったのだ。

 私の外見“だけ”が受け入れられなかった、と。

 私が唯一自分で偽っている、この外見が。


 マルディー先輩の言った言葉を、私は悪いとは思わない。

 私が自分の外見を気にしない人に私を好きになってもらいたいように、相手の外見にどうしてもこだわる人がいたって良いと思う。

 結局それは価値観の違い、というだけ。

 つまり、先輩と私は価値観が合わなかったのだ。


 そう考えると先輩が無理にOKをくれなくてよかったな、とまで思えるようになった。


 無理をしてではなく、本当に大丈夫そうに振舞う私を見て、セフィードが眉をひそめる。


 私はそんな彼を引っ張った。


「それより、はやく行こ。セフィードが風邪ひいちゃうよ」


 ときおり吹いてくる風は、身を切るように冷たい。

 秋も終わり、冬の訪れを感じる。


 うん、まだがんばれる。また次がんばろう。


 今日の空は曇っていたが、私の心は朝よりだいぶ晴れやかになっていた。


これにて初恋の先輩編終了です。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

次話からやっとタイトル回収に向けて動けそうなので、よろしければ引き続きお付き合いください。

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