降光祭当日(2)
屋上はライシーが言っていたとおり、いくつかのテントが並んでいた。
真っ白なテントで、天井部分の一部が透明になっていてテントの中からでも空が見える。
テントの中には座り心地のよさそうなかわいらしい椅子やほのかに灯る照明もあり、とても雰囲気が良い。
これならたしかに、他の人が屋上にいても気にならないなと思った。
まだマルディー先輩は来ていなかったので、私はひとり椅子に座って先輩を待った。
待つ間も心臓がバクバクして止まらない。
こんなロマンチックな空間に二人きりなんて、恋愛初心者な私に耐えられるだろうか?
私が心臓に手をあてて自分を落ち着けていると、やがてマルディー先輩が両手に飲み物を持って現れた。
「お待たせ、ごめんね。飲み物買ってきた。マフルちゃん甘いのと苦いのどっちがいい?」
わざわざ飲み物を買ってきてくれた先輩に感激する。
先輩の優しい声を聴いたことで、心臓は少し落ち着いた。
「わー、なんかすみません、ありがとうございます!甘いのをもらってもいいですか?」
「もちろん。どうぞ」
マルディー先輩は私に飲み物を渡すと、自分も私の横に腰かけた。
先輩の体重で椅子がさっきより沈み込む。マルディー先輩は体が大きいため、少し肩が触れてしまったことで、さっき少し落ち着いた私の心臓が再びばくばくと鳴り始めた。
マルディー先輩は緊張している風もなく、上を見上げて言う。
「うわあ、すごいね。俺降光祭にこうやって参加するの初めてなんだ。楽しみ」
「私もずっと楽しみでした」
「じゃあ、今日はめいっぱい楽しもう」
にこにこ笑いながら言ってくれる先輩に、私は胸が苦しくなる。
もらった飲み物を飲んだり談笑したりしながら過ごしていると、ほのかに空が暗くなり始めた。
「あ、もうすぐみたいだね」
空はどんどん色を変え、明るい水色から深い藍色になっていく。やがて周りが見えづらくなるくらい暗くなった頃、ぽつりぽつりと光の粒が空から降り始めた。
「わあ……」
光の粒は、テントの透明な部分にあたると、じゅわっと淡い光を散らして消える。
なんだかテントの一部分からしか見えないのがもったいなく思えて、私は先輩を誘い、テントから外に出た。
降り注ぐ光はどんどん数を多くして、降っては消えていく。
手をのばしてつかんでみても冷たくもなければ熱くもない、不思議な光だ。
降る光が増えれば増えるほど、あたりは明るく電飾を灯したように見えた。
「なんだか今回はいつもより光が多いね」
「ほんとですね。明るくてとてもきれいです」
先輩の言葉に私はうなずく。
周りでは、同じようにテントから出てきた生徒たちもちらほら見えた。
私は光の降り注ぐ空を再びあおぐ。真上の空は藍色なのに、はるか遠くに見える地平線のあたりは日の出のような赤色だ。そのコントラストがとても幻想的で美しかった。
私たちはしばらくそのまま空を眺め、やがて降ってくる光が少なくなったころ再びテントの中へと戻った。




